コラム

フリーランスも労災保護対象に~労働安全衛生法の改正へ向けて~

厚生労働省は、労働政策審議会の分科会において、労災防止の最低基準を定めた労働安全衛生法の改正案について、フリーランス(個人事業主)も保護対象とすることとして国会に提出することとなりました。現行法では、「一人親方」などの雇用された労働者と同じ現場で働いているものの、保護対象となっていませんでした。今回のコラムでは、フリーランスと契約を結ぶ企業において現状どのような労災防止義務が課されており、今後の労働安全衛生法改正に向けて、企業はフリーランスの労災防止に向けて、どのような取り組みをしていく必要があるのか解説していきます。

フリーランスと企業の労働災害防止義務

内閣府の2020年の調査によると、企業と雇用契約を結ばず個人で事業を行う「フリーランス」は約462万人といわれており、多様な働き方のひとつとして、「フリーランス」という働き方を選択する人が増えています。その一方で、「フリーランス」は「労働者」ではないため、現行制度では労災保険への加入は任意(特別加入)かつ、労働安全衛生法上での保護もされておりません。そのため、「一人親方」などのフリーランスが労災事故にあった時、過重労働で脳・心臓疾患や精神障害になった時、補償が受けられず生活が困窮してしまうおそれがあります。また、現行の労働安全衛生法では、フリーランスは「労働災害防止義務」の規定の対象外となっています。そうしたことから、フリーランスとして働く方々への労働安全衛生管理体制が必ずしも十分に整備されているとは限りません。

労災保険の特別加入とは

2024年11月、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、通称、フリーランス新法の施行にあわせて、すべてのフリーランスが労災保険に特別加入することができるようになりました。

なお、フリーランスのうち、建設現場で働く一人親方などについては事故のリスクが高いことから、以前から特別加入制度は設けられていました。労災保険は、原則として企業に雇用される労働者の業務上の災害や通勤中の災害に対して、その補償をするものだったため、企業に雇用されていないフリーランスは、労災保険に加入できず、建設現場で働く一人親方など例外的に限られた業種の者のみが特別に加入できる状況でした。しかし、働き方の多様化や社会経済情勢の変化を踏まえ、現代にあった制度とするためにフリーランスの全業種について労災保険の特別加入の対象としました。なお、この特別加入制度は、フリーランス本人が加入を希望した時の「任意加入」であり、保険料もフリーランス各自が負担する必要があります。

フリーランスと契約を締結している企業に求められる対応

では、今後安全衛生法におけるフリーランスの保護対象が明文化されることを踏まえ、フリーランスと委託契約・請負契約を交わしている企業はどのようなことに気を付けていけばよいでしょうか。

法改正に伴い、労災が発生した場合に、事業者から労働基準監督署への報告や安全衛生教育の実施が義務化されたため、従業員と同様に、フリーランスが業務中に事故や病気にならないための安全対策を実施することや労災発生時のサポート体制の整備、安全衛生教育の実施が求められます。

1)職場環境の確認、環境整備

フリーランスが快適に業務を行える環境の整備ができているか、作業環境の確認を行い、労働災害が発生しうる危険要素が確認された場合、危険防止のため措置を講じる必要があります。

2)フリーランス向けの安全衛生教育の実施

フリーランスとの契約では業務の進め方や安全対策が自己判断となることが多いため、事前の安全教育ができるように業務内容や場所などの特性に応じて定期的に安全教育を実施しましょう。それにより、フリーランス自身の業務に際しての安全意識を高めることにもつなげることができます。

3)事故発生時のサポート体制づくり、定期的な安全確認とフィードバック

フリーランスが業務中に事故を起こした際にも迅速かつ適切に対応できるように、事故発生時のサポート体制を構築し、フリーランスに周知しましょう。また、業務中その前後にフリーランスの安全対策の確認などをチェックすることで労働環境のリスクや問題点を早期に発生し、事故発生を未然に防ぐ対応につないでいきましょう。

4)契約を締結する際に安全対策や健康面へ配慮した項目を記載する 

労働安全衛生法での保護対象となった場合、企業はフリーランスの安全と健康を確保する責任があります。フリーランスとの契約の際は、契約書にフリーランスへの安全対策や健康面について配慮した項目を記載し、企業だけでなく、フリーランス本人が日頃より安全衛生への意識をもって業務にあたることができます。

このように、フルタイムの労働者に限らず、アルバイト・パート、フリーランス等の様々な働き方をする人が増えてきており、彼らの実情に即した働きやすい職場環境づくりを早くから対処していくことは重要です。人手不足が深刻となっている現代では、このような多様な働き方を希望するすべての働く人が働きやすいと思えるような魅力的な職場をつくっていくことが事業主には求められています。

弊法人では、職場における従業員の安全と健康を確保するために、各事業主の状況をヒアリングした上で「フリーランスのいる職場の安全衛生管理体制の構築支援」も行っておりますので、ぜひご活用ください。

健康管理 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。職場における従業員にとって、相談することで心の負担を軽くするプラットフォームとして活用いただくことができます。

Plattalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

前へ
コラム一覧へ戻る
次へ