【令和7年4月から】手取りアップでパパママ応援!~出生後休業支援給付金・育児時短就業給付金のポイント~

令和7年4月から雇用保険に「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」の2つの新制度が追加されます。これらの給付金は、子育て世代の経済的負担軽減と仕事・育児の両立支援を目的とするものとなります。複雑化する育児関連制度をさらに複雑にするものではありますが、制度不知により従業員に誤った案内をしてしまうといったことがないよう、企業側は十分に制度を理解し、適切な案内を従業員に行わなければなりません。本コラムでは、新制度のポイントについて解説します。

育児休業等給付の全体像

従来の育児休業給付(育児休業給付金・出生時育児休業給付金)に、出生後休業支援給付(出生後休業支援給付金)と育児時短就業給付(育児時短就業給付金)が追加されます。

(出典:厚生労働省「第197回労働政策審議会職業安定雇用保険部会資料」一部変更)

1.出生後休業支援給付金とは

出生後休業支援給付金とは、子の出生直後の一定期間に、両親がともに育児休業を取得することを促進するためのもので、育児休業給付(育児休業給付金・出生時育児休業給付金)に上乗せして支給されます。
具体的には、子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生日か出産予定日のいずれか早い日8週間以内女性産後休業後8週間以内に、申請者とその配偶者の両方通算で14日以上(分割も可)の育児休業を取得する場合に、最大28日間休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%の給付を受けることができます。
育児休業中は社会保険料が免除されることや、育児休業給付(育児休業給付金・出生時育児休業給付金)が非課税であること等から、出生後休業支援給付金を受給することで、実質上手取り10割相当が補填されます。給付イメージは、下図のとおりです。

(出典:厚生労働省「2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します」一部変更)

 

制度概要は、下表のとおりです。

<出生後休業支援給付金>

対象者 雇用保険の一般被保険者・高年齢被保険者
支給要件

・出生後休業の開始した日前2年間にみなし被保険者期間が12ヶ月以上あること
・申請者が、対象期間内に通算14日以上の出生後休業を取得したこと
・被保険者の配偶者も、出生後8週間以内に通算14日以上の出生後休業を取得したこと
 ※配偶者の育児休業を要件としない例外要件あり

給付額 休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×13%
提出書類

・育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
<添付書類>

・賃金台帳、労働者名簿、出勤簿(タイムカード)、育児休業申出書、育児休業取扱通知書等
・母子手帳、住民票、医師の診断書等
・出生後休業支援給付金の支給要件を満たしていることが確認できる書類

提出方法 事業主経由、育児休業給付金・出生時育児休業給付金と併せて申請(原則)

 

なお、配偶者が専業主婦(主夫)である場合やひとり親家庭の場合等、両親ともに育児休業をとれない場合であっても、出生後休業支援給付金が支給される仕組み(例外要件)が設けられています。
原則の要件に当てはまらなくても、給付対象となる場合がありますので、従業員に誤った案内をしてしまわないよう注意しましょう。
また、例外要件の内容によって、添付書類が異なります。この点、厚生労働省パンフレット「育児休業等給付の内容と支給申請手続」で詳しく案内されていますので、よく確認の上、手続きを行いましょう。

▸参考リンク:厚生労働省HP 育児休業給付の内容と支給申請手続(令和7年1月1日改訂版)

2.育児時短就業給付金とは

育児時短就業給付金とは、育児のための時短勤務を行う場合に、時短勤務によって減額された賃金の一部補助として支給されます。
具体的には、2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10が支給されます(本来の所定労働時間の賃金額は超えないように調整あり)。
多くの企業において、育児時短勤務中は、短くなった時間に対する給与は支給しない取扱いとされていますが、育児時短就業給付金を受給することで、育児時短勤務による収入減少が補填されます。
なお、給付率10は、「休業よりも時短勤務」を、「時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務すること」を推進する観点から設定された率となります。給付イメージは、下図のとおりです。

(出典:厚生労働省「2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します」)

 

制度概要は、下表のとおりです。

<育児時短就業給付金>

対象者 雇用保険の一般被保険者・高年齢被保険者
支給要件

・申請者が、2歳未満の子を養育するために時短勤務を行ったこと
・以下のいずれかに該当すること
 ①育児時短勤務を開始日前2年間に、みなし被保険者期間が12か月以上あること
 ②育児休業給付金を受けていた場合、育児休業終了後に引き続き育児時短勤務をしたこと
 ③出生時育児休業給付金を受けていた場合、出生時育児休業終了後に引き続き育児時短勤務をしたこと

給付額 時短勤務中に支払われた賃金額×10%
提出書類

【初回申請】
・育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金申請書
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書・所定労働時間短縮開始時賃金証明書
<添付書類>
・賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働条件通知書等
・母子手帳
【2回目以降】
・育児時短就業給付金支給申請書
<添付書類>
・賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働条件通知書等

提出時期

【初回申請】
支給対象月の初日から起算して4ヶ月以内
【2回目以降】
ハローワークから定められた期間内に2ヶ月に1回

 

なお、出生後休業支援給付金と異なり、育児時短就業給付金については、従業員への個別の周知・意向確認の対象となっていませんが、「制度不知により受給できなかった」といった事態にならないよう、併せて周知・意向確認を行っておく方がよいでしょう。
申請書の記載方法やイレギュラーケース等について、厚生労働省パンフレット「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」で詳しく案内されています。

▸参考リンク:厚生労働省HP 育児時短就業給付の内容と支給申請手続(令和7年2月1日時点版)

企業に求められる積極的な制度活用と従業員支援

今回の育児関連給付金の拡充は、子育て世代の経済的負担を軽減し、仕事と育児の両立を支援するためのものです。企業としては、これらの支援制度を活用して従業員が安心して働き続けられるよう十分な制度周知・理解を促進していくことも重要となります。

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