人材開発支援助成金とは?~コースの概要・導入メリットについて解説~

前回のコラムでは、日本の教育訓練の歴史と、教育訓練休暇を取得する労働者に支給される教育訓練休暇給付金について解説していきました。従業員の能力開発支援を行う事業主に支給される助成金として、「人材開発支援助成金」があげられます。今回のコラムでは、人材開発支援助成金の概要とその導入のメリットや申請手続きにあたっての注意点について解説していきます。

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して、その職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。この助成金を活用することで、企業が教育訓練に伴うコストを助成金でカバーすることができます。また、助成金を活用しスキルアップした人材の育成がされることで、生産性が向上し、人材確保だけでなく企業全体の成長にもつなげることができます。

※参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

人材開発支援助成金のコース

人材開発支援助成金は企業のニーズや対象者によって以下のコースが設けられています。企業規模(大企業・中小企業)や賃金要件(訓練修了後に行う訓練受講者に係る賃金・資格等手当の支払い額が改定前後の賃金を比較して3~5%以上上昇している)により支給額が異なるので、詳細は厚生労働省の案内を確認しましょう。
なお、「訓練等に要した経費を支給申請までに申請事業主が全て負担」となっていることが支給要件となっている点に注意が必要です。例えば、申請事業主の教育訓練機関に対する訓練経費の支払が完了しているか否かにかかわらず、事業主が教育訓練機関等から実施済みの訓練経費について事業主の負担額の実質的減額となる金銭の支払いを受けた場合や受ける予定がある場合には、本助成金の支給対象に該当しません。

 

1人材育成支援コース

職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成します。以下の3メニューが対象となります。対象の従業員が非正社員の場合、またその従業員が正社員化した場合助成率が上昇します。

①人材育成訓練10時間以上のOFF-JT

②認定実習併用職業訓練:新卒者等のために実施するOJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

③有期実習型訓練:非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指すOJTOFF-JTを組み合わせた訓練

※参考:厚生労働省 人材育成支援コースのご案内

2)教育訓練休暇等付与コース

有給教育訓練等制度(3年で5日以上)を導入し、労働者がその休暇を取得し、訓練を受けた場合に導入経費と教育訓練休暇中の賃金の一部が事業主に助成されます。
教育訓練休暇等付与コースは企業が対象となり、前回のコラムで解説した教育訓練休暇給付金は労働者が支給対象となります。

※参考:厚生労働省 教育訓練休暇等付与コースのご案内

3)人への投資促進コース

人への投資を促進するために、民間からの声をもとに令和4年に新設されたコースです。デジタル人材・高度人材の育成や労働者が自発的に行う訓練等を対象に実施した場合に助成されます。なお、高度デジタル人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」は、資格取得経費(受験料)も助成対象になります。以下5メニューが対象です。

①高度デジタル人材訓練
高度デジタル人材育成のための訓練や、海外を含む大学院での訓練を行う事業主に対する助成

②情報技術分野認定実習併用職業訓練
IT分野未経験者の即戦力化のための訓練を実施する事業主に対する助成

③定額制訓練
サブスクリプション型の研修サービスを利用する事業主に対する助成

④自発的職業能力開発訓練
労働者が自発的に受講した職業訓練費用を負担する事業主に対する助成

⑤長期教育訓練休暇等制度
働きながら訓練を受講するための長期休暇制度(30日以上の長期教育訓練休暇の取得が可能な制度を導入し、実際に適用)、短時間勤務等制度(30回以上の所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除が可能な制度を導入し、実際に1回以上適用)を導入した事業主に対する助成

※参考:厚生労働省 人への投資促進コースのご案内

4)事業展開等リスキリング支援コース

DX推進や新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、従業員にデジタル・グリーンなど新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に助成されます。

※参考:厚生労働省 事業展開等リスキリング支援コースのご案内

 

 

人材育成支援コース

教育訓練休暇等付与コース

人への投資促進コース

事業展開等リスキリングコース

対象者

正規雇用労働者
非正規雇用労働者
有期契約労働者など

正規雇用の労働者

正規雇用労働者
非正規雇用労働者

正規雇用労働者
非正規雇用労働者

助成対象

事業主、事業団体等

事業主

事業主

事業主

賃金助成額

助成額最大960/時間

-


助成額最大960/時間

助成額最大960/時間

経費助成率

助成率最大100%

(メニューにより異なる)

助成額最大36万円

 

助成率最大75%、
長期教育訓練休暇等制度の場合最大24万円

助成率最大75%

 

OJT実施助成額

助成額最大25万円

-

助成額最大25万円
(情報技術分野認定実習併用職業訓練)

-

 

助成金活用のメリット

人材開発支援助成金を活用することで、以下のようなメリットが得られます。

・費用負担の軽減
従業員に研修や訓練を実施する際のコストを抑えることができ、条件によっては最大100%助成されるコースもあり、少ない経済的負担で人材育成が可能となります。

・生産性の向上

助成金の活用に伴い、従業員の知識・スキルが向上すれば業務が効率化し、生産性が向上します。生産性が向上することで従業員一人ひとりの負荷が軽減されるため、優秀な人材の獲得や定着にもつなげることができます。

 

助成金申請時の注意点

申請手続きにあたって注意する点としては、以下が挙げられます。

・申請から受給まで時間がかかる
申請手続き開始から助成金受給までには時間がかかることや、経費の支払いにあたっては事業主側で立替をし、後日決定した支給額を受給することになるので注意しましょう。申請にあたって訓練開始前に計画を作成するなど書類の準備等で多くの時間と労力を要するため、外部の専門機関を活用するとよいでしょう。

・コースによって要件が異なる
人材開発支援助成金のコースによって要件が異なり、年度によって要件が変更されたり、制度の見直しでコースの新設や廃止が行われたりすることもあります。申請前に実施予定の訓練、研修、講座が助成対象であるか確認するようにしましょう。また、外部の専門機関に相談し、最適なコース選択のアドバイスをうけるのもよいでしょう。

 

今回のコラムでは、人材開発支援助成金の概要と利用における注意点について解説しました。少子高齢化に伴い人材不足が深刻化し、社会のデジタル化が進んでいる現代において、従業員のスキルアップや生産性を高めていくことは大切です。今後は労働者・企業ともに主体的な能力開発の機会を確保するよう、給付金制度の活用や、社内の体制整備をしていくことが重要となっていきます。助成金制度は随時新設・廃止、改正がされうるため、こういった制度活用や整備において、最新情報に精通している専門家のサポートを受けるとよいでしょう。

弊法人では、人材開発支援助成金をはじめとした助成金申請の代行業務を行っております。各企業に合った制度設計を提案したうえで、雇用関係の助成金の申請支援を行うことが可能です。詳細はサービス一覧をご覧ください。
制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所

助成金・補助金・給付金申請支援 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所

また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。Plattalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

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