オワハラとは~オワハラが増加している背景と企業ができること~

2025年321日、政府は2027年に卒業、入社する学生の就職活動について、採用面接後に内定を出した企業が学生に就職活動を追えることを強要する「オワハラ」の防止を徹底することなどを全国の経済団体などに要請する文書を出しました。
「オワハラ」とは「就活終われハラスメント」の略で、企業などが新規学校卒業者等の採用において、内定や内々定を行うことと引き換えに、学生の意思に反して他の企業などへの就職活動の終了を強要するハラスメント行為です。
オワハラは、憲法で保障された「職業選択の自由」を侵害する行為であり、場合によって、刑法上の脅迫罪・強要罪や民法上の不法行為にも当たる可能性があります。

※参考:厚生労働省「事業主・職業紹介事業者の皆さまへ」

オワハラと学生の就活状況

厚生労働省と文部科学省による令和7年3月大学等卒業予定者の就職内定状況の共同調査によると、令和7年2月1日時点で、大学生の就職内定率は92.6%となり、過去最高の数値となりました。少子高齢化に伴い、人手不足・採用難である現代において若い人材は特に必要とされており、今後も若い人材を確保するために「オワハラ」が起こりやすい環境に置かれることが伺えます。

なぜオワハラは起きるのか

「オワハラ」が問題視されるようになったのは、2015年に厚生労働大臣が企業に「オワハラ」を行わないように注意喚起を行ったのがきっかけとなります。また、「オワハラ」は当初新卒の学生に対して行われていたものでありましたが、人材不足が深刻化している現代においては中途採用者でも行われています。

なおオワハラは法律上の規制としては以下の「青少年の雇用の促進等に関する法律」(若者雇用促進法)があげられます。当該法は令和3年の「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」の改正に伴い、就活生等に対するハラスメント対応、内定辞退等勧奨の防止などが記載されました。


青少年の雇用の促進等に関する法律(昭和45年法律第98号)第7条の規定に基づく
「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」

第二 事業主等が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置
一労働関係法令等の遵守 (二)採用内定・労働契約締結に当たって遵守すべき事項等

採用内定又は採用内々定を行うことと引き換えに、ほかの事業主に対する就職活動を取りやめるよう強要すること等青少年の職業選択の自由を妨げる行為又は青少年の意思に反して就職活動の終了を強要する行為については、青少年に対する公平かつ公正な就職機会の提供の観点から行わないこと


また、近年オワハラが増えてきた背景としては以下があげられます。

①選考時期の後ろ倒し
従来は大学3年の12月に解禁されていた広報活動が大学4年の3月に後ろ倒しとなったことが原因の一つです。選考期間が短くなることで優秀な人材に早期に内定を出して他社の選考を受けさせたくないためです。

②人材不足
少子高齢化に伴い労働人口が減少しているため、優秀な人材の競争率があがり、他社に流出しないよう早期内定を出して囲い込みたいため、オワハラをしてしまうと考えられます。

③コスト削減のため
内定辞退者が多く、採用活動期間・人数が増えるほど、採用活動へのコストがかかります。内定辞退者を減らすことでコストをおさえたいためです。

④採用計画目標達成のため
企業の採用計画目標があるため、その採用予定人数達成のため早期に内定者を出したいという意向により、オワハラが行われてしまうことがあります。

オワハラの具体例

ではオワハラは具体的にどういった行為となるのでしょうか。具体的には以下が挙げられます。

①他社の選考参加や内定辞退を強要する
例)他の企業の選考や内々定を辞退するように言う、採用担当者の前で辞退の連絡をするように言う等

②自社への内定受諾や入社を強要する
例)内定承諾書の提出を強要する、自社でのアルバイト・インターンシップの強要、学校の推薦状を提出させる等

採用時に企業が気を付けるポイント

では、企業としては採用時にどのような点で気を付けるとよいでしょうか。以下の3点を意識するとよいでしょう。

①学生、候補者の意思を尊重したコミュニケーション
学生も安心して自分のペースで就職活動を進められるように、内定後も「選ぶ自由が」あることを伝え、学生側に選択の自由があるようにコミュニケーションをとりましょう。

②内定承諾期限、選考条件の明確化、内定承諾書についての詳細説明
内定承諾までの期限や選考に必要な書類を明確に説明することや、複数社の選考がある学生に対してはスケジュール調整ができるよう配慮するとよいでしょう。
また内定承諾書は法的拘束力がないことを説明し、学生へ過度に不安を与えない配慮を行うとよいでしょう

採用担当への研修実施などによるオワハラへの認識を深める
オワハラの多くは、採用担当者の焦りにより無意識に行ってしまうことがありがちです。採用担当者自身がオワハラへの理解を深め、採用活動時の言動が学生にどのような影響を与えるのか、研修や事例共有を通して学んでいく機会をつくるとよいでしょう。

今回のコラムでは、近年増加し、問題視されている「オワハラ」について解説しました。オワハラは就活生の職業選択の自由を妨げるだけでなく、精神的ストレスによるメンタルヘルスの問題につながる可能性があります。また、オワハラの手法によっては脅迫罪や強要罪により刑事罰が下ることもあります。さらにSNSや就活情報サイトによりオワハラの情報が拡散されることで企業イメージが低下し、本来求めていた優秀な人材確保自体ができなくなるおそれがあります。上記のような問題を早期に防ぐためにも、人事労務分野に精通した専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。

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