「振替休日」と「代休」の違いを正しく説明できますか?
「労働日と休日を入れ替える」という点では同じです。しかし、「休みを決定するタイミング」や「割増賃金の求め方」では大きな違いがあります。それぞれを区別して適切に運用しないと、労働基準法違反や賃金未払いとなるリスクがあるため注意が必要です。
今回は、振替休日と代休の相違点のほか、月をまたいで振替休日や代休を取得した場合の割増賃金の求め方について分かりやすく解説します。
振替休日とは?
振替休日(=「休日の振替」とも言います)とは、「あらかじめ定められた休日に出勤した場合、その休日を別の労働日に振り替える」仕組みです。労働日と休日を「事前に」入れ替えているに過ぎないため、振替前の休日は労働日に、振替前の労働日が休日となります。
例えば、休日と定められていた日曜日をあらかじめ「労働日」として、もともと労働日であった翌日の月曜日を「休み」にするというのが振替休日の考え方です。このように、振替休日は同じ週内、もしくは月内で運用することが多いです。
振替休日を行うには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
① 就業規則等に休日に振り替えることができる旨の規定を設けておくこと。
② 休日を振り替える前に、あらかじめ振り替えるべき日を特定すること。
③ 4週間を通じ4日以上の休日が確保できるよう振り替えること。
代休とは?
代休とは、休日労働をさせた後に、その代償として、休日労働後の特定の労働日を「事後的に」休みとする仕組みです。代休も同じ週内、もしくは月内で運用することが多いです。労働基準法37条3項に定める代替休暇とは全く異なる制度のため、注意が必要です。
なお、労働基準法には代休の定めがありません。そのため、就業規則等に記載がなくとも代休を取得させることは可能です。しかし、代休の制度を設けるのであれば、労使間トラブルを防ぐためにも、取得条件や賃金支払いといったルールを明記しておくことが望ましいです。
割増賃金の求め方(同一週内で代休を取得した場合)
時間外労働や深夜労働を行った場合には通常の賃金の2割5分以上を、休日労働をさせた場合には3割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。しかし、代休を取得した時の割増賃金算出について見落としている会社が多いです。そのため、割増賃金の未払いがあるとして労基署から指摘されてしまう事例が発生しています。
≪例≫日給10,000円の労働者が日曜に休日労働をして、同じ週の水曜に代休を取得した場合
(日曜日を法定休日、所定労働時間が8時間、所定外労働時間は無いと仮定)
この場合、時間外労働は発生しませんが、日曜の休日割増賃金が発生し、通常の賃金の3割5分以上の支払義務が生じます。休日労働と引き換えに代休を取得したとしても、休日に労働した事実は変わらないからです。
具体的には、日曜日の休日労働分として1万3,500円を支払うことになります。しかし、通常の賃金(=10割の部分)については代休を取得した日に相殺されるため、マイナス10,000円となり、休日割増部分の3,500円を支払えば良いことになります。
代休や振替休日は、同じ週内もしくは月内(=給与計算期間)の中で清算するのが一般的です。では、代休や振替休日を取得する時期が、賃金の締日またぐことになったら、どのように対応すればよいのでしょうか。
割増賃金の求め方(月をまたいで振替休日や代休を取得した場合)
【例】
◆6月の法定労働時間が168時間。これに加え8時間の時間外労働を行った。
◆7月の法定労働時間が176時間。実労働時間が168時間、これに加え6月労働分の振替休日(8時間分)を取得した。
例えば、6月に8時間の時間外労働を行い、その分の振替休日を7月に取得したとします。
実労働時間は6月が176時間となり、法定労働時間を8時間超えています。この部分は時間外労働となりますので、【時間外労働分の通常の賃金(=10割)に加えて、通常の賃金の2割5分以上(休日労働の場合は3割5分以上)の割増賃金】を支払わなければなりません。
そして、この割増賃金は、振替休日を取得する7月の給与で清算するのではなく、実際に時間外労働が発生した6月に支払わなければならないのです。しかし、この割増賃金を支払っていない会社が多く見受けられます。勤怠システム上でも、振替休日や代休の時間計算については対応しているものの、割増賃金の計算までは対応していないというケースもあるからです。
このように、月をまたいだ振替休日や代休の割増賃金計算方法は複雑なので、できるだけ同月内で取得するような規定を作成することが望ましいです。誤った運用を続けてしまうと、長期にわたって給与未払いが発生するなどのリスクも生じます。こうしたリスクを避けるため、専門家に意見を聞くことが大切です。弊法人では人事労務アドバイザリー業務をおこなっております。判断に迷った時はぜひ弊法人にご相談ください。
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