内閣府の規制改革推進会議において、近年の賃金向上・人手不足対応の一案として「時間単位年休の見直し」が挙げられています。この見直しは、より柔軟な休暇取得を求める労働者のニーズに応えるものであり、今後の動向が注目されています。今回のコラムでは、今後の動向を見据え、現行の時間単位年休制度について解説します。
▸参考リンク:内閣府HP 規制改革推進会議 中間答申(概要)
時間単位年休とは
時間単位年休とは、年次有給休暇を時間単位で取得できる制度です。
年次有給休暇は、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現にも資するという目的から、1日あるいはまとまった休暇取得が本来の趣旨でした。しかし、取得率の低さや使い勝手を考慮して、平成22年4月の法改正により、時間単位での取得についても認められることとなりました(労働基準法第39条第4項)。
現行の時間単位の年次有給休暇制度
時間単位年休を導入するには、労使協定を締結し、就業規則を作成している事業場においては就業規則へ規定することが必要です。
労使協定に規定する内容は、以下の①~④です。
■労使協定に規定する内容
①時間単位年休の対象労働者の範囲
対象となる労働者の範囲を定めます。
一部を対象外とする場合は、事業の正常な運営との調整を図る観点から労使協定でその範囲を定めることとされており、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
(例) |
②時間単位年休の日数
時間単位で与えることができる年次有給休暇の日数を5日以内の範囲で定めます。
前年度からの繰越しがある場合であっても、繰越分も含めて5日分以内となります。
③時間単位年休1日の時間数
1日分の年次有給休暇に対応する時間数を所定労働時間数から定めます。
時間に満たない端数がある場合は、時間単位に切り上げてから計算します。
(例)1日の所定労働時間が7時間30分で5日分の時間単位年休 |
④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
1時間以外の時間を単位とする場合は、1日の所定労働時間を上回らない時間単位を定めます(例:2時間単位)。
■管理方法(具体例)
所定労働時間8時間で年次有給休暇が20日あり、時間単位で5日まで年休取得できるとしている場合の残日数・残時間数の管理は、下表のようになります。
年次有給休暇残日数 |
残時間数 | ||
最初 | 20日 | (5日) | |
3時間の年休取得 | 19日 | (4日) | 5時間 |
1日の年休取得 | 18日 | (4日) | 5時間 |
6時間の年休取得 | 17日 | (3日) | 7時間 |
5時間の年休を5回取得 | 14日 | (0日) | 6時間 |
14日の年休を取得 | 0日 | (0日) | 6時間 |
6時間の年休取得 | 0日 | (0日) | 0時間 |
■半日単位の年次有給休暇との関係
半日単位年休は、時間単位年休とは異なる制度です。そのため、半日単位年休は時間単位年休の年間上限5日には含まれず、別枠での運用となります。
■年5日の年休取得義務との関係
平成 31 年4月より、法定の年休付与日数 10 日以上の労働者に対し、年5日以上の年次有給休暇を取得させることが義務化されていますが、現行制度では、時間単位年休は「年5日の年休取得義務」の対象外とされており、時間単位年休の取得分は、この5日から差し引くことはできません。
■時季変更権の取扱い
時間単位年休も時季変更権の対象となります。ただし、日単位での請求を時間単位に変えることや、時間単位での請求を日単位に変えることはできません。
▸参考リンク:厚生労働省HP
・時間単位の年次有給休暇制度を導入しましょう!
・モデル就業規則
適切な管理と制度設計で、より良い職場環境実現へ
時間単位年休制度は、労働者のワーク・ライフ・バランス向上につながり得る一方、年休取得日数の管理は複雑になる側面もあります。そのため、企業側には適切な制度設計と運用が求められます。
時間単位年休制度の見直しについては、規制改革推進会議の中間答申では「令和7年度中に結論を得る」とされている一方、厚生労働省の労働基準法制研究会の報告書では「直ちに変更すべき必要性があるとは思われない」とされるなど、今後の制度改正の動向については引き続き注視が求められるところですが、制度導入や変更に際しては、勤怠管理システムなどを活用して、適切かつ円滑な制度運用を進めていきましょう。
弊法人の開発・提供する勤怠管理システムでも、時間単位年休の適切な集計管理が可能です。
勤怠管理システム開発・提供 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所
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