介護職員等処遇改善加算のための認定要件~①キャリアパス要件~

前回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算について制度が生まれた背景と概要の解説を行いました。介護処遇改善加算のための新認定要件としては①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件、③職場環境等要件が挙げられますが、具体的にはどのような要件となるのでしょうか。今回のコラムでは、①キャリアパス要件について解説していきます。

キャリアパス要件

処遇改善加算の加算区分はⅠ~Ⅳの4段階(移行措置でⅤも存在)に整理されました。
上記の要件はこの新加算の区分にかかる3要件です。これらの要件をどの程度満たすかによって、加算率の高い順から、加算Ⅰ~Ⅳに分類されますが、そのうちキャリアパス要件は全加算区分の認定において必要となる要件です。
以下の通り、具体例を挙げながら全5つのキャリアパス要件について解説していきます。

    ※参考:介護職員の処遇改善:TOP・制度概要 | 厚生労働省 介護サービス事業者の皆さまへ


1)キャリアパス要件Ⅰ:任用要件・賃金体系(区分Ⅰ~Ⅴ)
介護職員の職位や職責、職務内容などの任用要件を定め、それらに応じた賃金体系の整備などを定め、この内容について就業規則や内規などの書面で明確にし、全ての介護職員に周知している必要があります。
なお、常時10名以上の職員を雇用する事業所は就業規則の作成・届出義務があるため注意しましょう。
また、キャリアパス要件Ⅰを満たすためには、介護職員に対し、上位職位への任用の道筋(キャリアパス)を示すため、2段階以上の職位を定めることが必要となります。
また、任用要件とは職員がその職位に任用されるために必要な要件をさします。賃金体系は、職位に応じた基本給や役職ごとの職責により決まる役職手当などの組み合わせで決まります。

<任用要件・賃金体系の記載例>

職位

職責・職務内容

任用要件

賃金体系

所長(マネージャー)

・管理職として担当組織を運営し、組織目標を達成させる。
・部下の指導、育成ができる。

・経験年数15年以上

・介護福祉士の資格を有する

・基本給30万以上

主任(リーダー)

・介護部門のリーダーとして所長を補佐し、専門的かつ高度な知識、技能を身につけており、対応困難な高度な業務を処理する。

・経験年数10年以上

・介護福祉士の資格を有する

・基本給27万以上

副主任

・介護業務に関して幅広い知識と経験を有し、何度が高い業務に対応できる。

・経験年数3年以上

・介護福祉士の資格を有する

・基本給22万以上


2)キャリアパス要件Ⅱ:研修の実施等(区分Ⅰ~Ⅴ)
介護職員の研修に関わる要件です。実施する研修内容や頻度、対象者、目的や成果などを明示した具体的な研修計画を策定し、計画に係る研修の実施または機会の確保をする必要があります。また、その研修の実施等に際して、職員が参加を希望する場合は休暇の取得や勤務シフトの調整、費用の援助等を行う必要があります。また、上記についてすべての職員に周知している必要があります。

3)キャリアパス要件Ⅲ:昇給制度の整備(区分Ⅰ~Ⅲ)
「経験年数」や「勤続年数」に応じた昇給の仕組み「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの資格取得や保有に応じた昇給の仕組み「人事評価」や「試験結果」などの一定の基準に基づいた昇給の定期判定の仕組みのいずれかを整備する必要があります。また、上記についてすべての職員に対して周知していることも必要です。要件Ⅰが職位ごとのキャリアパス要件を明文化する仕組みづくりであるのに対し、要件Ⅲは経験や評価に応じたキャリアアップの運用体制が整備されていることが要件となります。

※平成29年1月30日 厚生労働省老健局振興課・老人保健課「介護保険最新情報vol.580『平成29年度介護報酬改定による介護職員 処遇改善加算の拡充について』」より

4)キャリアパス要件Ⅳ:改善後の賃金額(区分Ⅰ・Ⅱ)
経験や技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の年間賃金額が440万円以上の見込みであることとされています。なお、経験や技能のある職員とは、一般的には介護福祉士有資格者で勤続10年程度の職員を想定しています。また、小規模事業所などで加算額全体が少額である場合には、年額440万円以上の条件が免除されます。

5)キャリアパス要件Ⅴ:介護福祉士等の設置(区分Ⅰ)
介護福祉士のような福祉専門職員を、サービス類型ごとに一定割合以上配置することを求める要件です。具体的には訪問介護の場合は介護福祉士を30%以上となります。

今回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算の要件のひとつである、キャリアパス要件について詳しく解説していきました。次回のコラムでは、月額賃金改善要件について解説していきます。制度の内容や活用に際して必要となる要件は非常に細かく複雑であるため、制度の理解や活用にあたっては人事労務分野に精通した専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。

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