前々回、前回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算の要件のである①キャリアパス要件、②月額賃金改善要件について解説しました。事業所においてキャリアパスの制度が整い、月額賃金の改善がされたとしても、職場環境が劣悪であれば、職員が入職したとしても安心して長く働くことは難しいでしょう。そのため、三つ目の要件として「職場環境等要件」が挙げられます。今回のコラムでは③職場環境等要件について具体例をあげながら詳細について解説していきます。
職場環境等改善要件
職場環境等要件は、介護職員の離職防止と定着促進を目的として、研修の実施や生産性向上のためのICTの活用など働きやすい職場環境づくりについて定められた要件です。全部で6つの区分が存在し、Ⅰ~Ⅳすべての加算要件で各区分を1つ以上満たす必要があります。なお加算額の大きい加算Ⅰ・Ⅱについては最低2つ以上満たすことが求められます。
※参考:介護職員の処遇改善:TOP・制度概要 | 厚生労働省 介護サービス事業者の皆さまへ
職場環境等要件の6区分
以下の表のとおり、職場環境等要件には6つの区分があり、具体的内容として28項目があります。処遇改善加算を取得するためには全区分について1つ以上の要件を満たす必要があります。
①入職促進に向けた取り組み
例)法人の理念や人材育成方針を全体集会や研修時において伝える取り組みをする。
他事業所と共同で研修を実施したり、事業所間の人材交流をしたりする機会を整備する。
②資質の向上やキャリアアップに向けた支援
例)資格取得の受講費用補助、シフト調整などを行う。
③両立支援・多様な働き方の推進
例)事業所内に保育スぺースを設置する。時短勤務制度を導入する。夏季や冬季に連続5日以上の連続休暇を推奨し、身近な上司等から積極的な声掛けを行う。業務の見える化を行い、業務分担の分散やマニュアル作成などを行い、業務分担の偏りを防ぐ。
④腰痛を含む心身の健康管理
例)社会保険労務士などの外部の専門家による相談窓口を設置し、周知する。外部講師を招いて腰痛予防・軽減のための研修を実施する。
⑤生産性向上(業務改善及び働く環境改善のための取り組み)
例)介護ロボットやタブレット端末等のテクノロジーを活用して業務改善や効率化を進め、職員の業務負担を軽減する。職場環境の整備(5S活動)や業務の明確化と役割分担を行う。手順書を作成しインカムやビジネスチャットなどICTの活用により、効率的に記録・報告や情報共有ができる仕組みをつくる。
⑥やりがい・働きがいの醸成
例)ミーティング等によって職場内のコミュニケーション円滑化を図り、介護職員の気づきの共有を踏まえ職場環境やケア内容を改善する。ケアの好事例や利用者・家族からの謝意等共有機会の提供を行う。
加算区分の算定方法
職場環境等要件による加算区分の算定は各区分を1以上、もしくは2以上満たすかにより、ほかの2要件の認定数に応じて以下の通り振り分けられます。
1)加算区分Ⅲ・Ⅳ
加算区分Ⅲ、Ⅳを満たすためには、各区分についてそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)の取組数が必要となります。キャリアパス要件の認定によって、Ⅲ・Ⅳのどちらかとなります。
2)加算区分Ⅰ・Ⅱ
加算区分Ⅰ・Ⅱを満たすためには、各区分についてそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上で⑰:「業務改善活動の体制整備」か⑱:「現場の課題の見える化」は必須)の取組数を満たす必要があります。さらにキャリアパス要件の認定数により、Ⅰ・Ⅱのどちらかに位置付けられます。また、情報公表システム等で職場環境等要件の各項目の具体的な取り組み内容について公表を求められます。
職場環境等要件 |
|
必要な取り組み数 |
|
区分 |
番号(取組数) |
加算区分Ⅰ・Ⅱ |
加算区分Ⅲ・Ⅳ |
入職に向けた取り組み |
① ~④(4) |
2以上 |
1以上 |
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 |
⑤~⑧(4) |
2以上 |
1以上 |
両立支援・多様な働き方の推進 |
⑨~⑫(4) |
2以上 |
1以上 |
腰痛を含む心身の健康管理 |
⑬~⑯(4) |
2以上 |
1以上 |
生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組 |
⑰~㉔(8) |
3以上 |
2以上 |
やりがい・働きがいの醸成 |
㉕~㉘(4) |
2以上 |
1以上 |
今回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算の三つ目の要件である、職場環境等要件について詳しく解説しました。制度の内容や活用に際して必要となる要件は非常に細かく複雑であるため、制度の理解や活用にあたっては人事労務分野に精通した専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。
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