前回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算の要件の一つである、①キャリアパス要件について、Ⅰ~Ⅴの5種類の要件別に解説しました。今回のコラムでは②月額賃金改善要件について実際の算定例を挙げながら、解説していきます。
月額賃金改善要件
月額賃金改善要件は、介護職員の生活の安定のために賃金をベースアップすることを目的として設置された算定要件です。
要件はⅠとⅡに分かれ、それぞれ要件の内容が異なります。
※参考:介護職員の処遇改善:TOP・制度概要 | 厚生労働省 介護サービス事業者の皆さまへ
1)月額賃金改善要件Ⅰ:月給による賃金改善(2025年度~適用)
月額賃金改善要件Ⅰにおいては、新加算区分Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てることとされています。なお「決まって毎月支払われる手当」は労働と直接的関係が認められ、労働者の個人的事情と関係なく支給される手当を指します。名称は「処遇改善手当」に限らず、職能手当、資格手当、役職手当、地域手当等の名称でも問題ありません。決まって毎月支払われる手当は月ごとに変動して構いませんが、以下の諸手当は決まって毎月支払われる手当に該当しないので、注意が必要です。
・月ごとに支払われるか否かが変動する手当(特別手当、夏季賞与、冬季賞与、夜勤手当等)
・労働と直接的関係が薄く、労働者の個人的事情に左右される手当(通勤手当、扶養手当、住宅手当等)
また、現在加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給や決まって毎月支払われる手当に付け替える対応が必要になることがあります。(賃金総額は一定のまま)
<「新加算Ⅳの加算額1/2以上の月額賃金改善」算出例>
★新加算Ⅰを取得している事業所で、一人あたり平均3.8万の加算額が入る事業所のケース
(※新加算Ⅳ相当分は2.2万円、新加算Ⅰによる月額賃金による配分が0.5万円、一時金による配分が3.3万円)
⇒新加算Ⅳの1/2は1.1万円なので、1.1万円以上の額を月額賃金において改善することが必要となる。
⇒一時金を一か月あたり0.6万円引き下げ、月額賃金を0.6万円以上引き上げる必要がある。
※厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会(第233回)資料1より
2)月額賃金改善要件Ⅱ:旧ベースアップ等支援加算相当賃金(旧ベースアップ加算未算定の場合)
月額賃金改善要件Ⅱは、2024年6月からの新加算を算定した事業所のうち、既に旧ベースアップ加算を算定し、基本給等を3分の2以上改善していた事業所と旧ベースアップ加算を算定せずに一時金のみで改善していた事業所との間で公平性を設けるために設けられたものです。
月額賃金改善要件Ⅱにおいては、新加算区分Ⅰ~Ⅳへの移行に伴い、前年度と比較し旧ベースアップ等加算相当が新たに増える場合、その加算額の3分の2以上の新たな基本給などの月給の引上げを行います。2024年5月までに適用されていたベースアップ等支援加算を取得済の事業所はこの要件を考慮する必要はありません。
今回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算の要件のひとつである、月額賃金改善要件について算定例をあげながら解説していきました。次回のコラムでは、介護職員等処遇改善加算の三つ目の要件である、職場環境等要件について解説していきます。
制度の内容や活用に際して必要となる要件は非常に細かく複雑であるため、制度の理解や活用にあたっては人事労務分野に精通した専門家にアドバイスを求めるとよいでしょう。
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