厚生労働省より令和6年版「厚生労働白書」が公表されました。テーマは「こころの健康」。現代人における「こころの問題」が顕著となる結果となり、現代社会の変化に伴う多様化したストレスに対処する支援構築が必要であると指摘をしています。
WHO(世界保健機関)によると、「こころの健康」は、「人生のストレスに対処しながら、自らの能力を発揮し、よく学び、よく働き、コミュニティにも貢献できるような、精神的に満たされた状態」とされており、すべての人の健康とウェルビーイングに不可欠な要素であり、精神障害の有無にかかわりないものであるとされています。
厚生労働白書の調査によると、2020年精神疾患を有する外来患者数は約586万人と過去最多となっており、特にうつ病などの「気分障害」(169.3万人:28.9%)、適応障害などの「神経症性障害等」(123.7万人:21.1%)が多くを占めている状況です。
さらに精神障害の労災認定件数についても2022年度で710件と過去最多となりました。このように日本で増加の一途をたどる「こころの問題」への対策は急務となっていることがうかがえます。
※令和6年 厚生労働白書より「精神疾患を有する外来患者数」
こころの健康状態への人々の意識
また、「こころの健康」に対するリスクについても、現代人の意識に変化が表れています。
厚生労働白書が2004年、2014年、2024年に実施した総合的な健康状態にとって最もリスクとなる要因についてヒアリングした調査によると、2024年調査では精神病を引き起こすようなストレスが生活習慣に次ぐ二番目に多い15.6%となりました。この数値は20年間で3倍の数値となります。
よって、現代はより多くの人が精神的ストレスは健康に大きな悪影響を及ぼすことを認識しているといえます。
※令和6年厚生労働白書より「こころの問題に対する人々の意識の変化」
それでは、人々は自分自身の健康状態に対して、どのような認識でいるのでしょうか。
厚生労働省の2023年実施の20-89歳を対象とした調査によると、自身のこころの健康状態について、30-40歳代は「よくない」・「あまりよくない」と答えている人が27%にものぼり、他の世代と比べて特に割合が多いことが判明しました。
※令和6年厚生労働白書より「心の健康の現状に対する回答割合」
30-40歳代は社会的には仕事や子育てなどに活動的となる時期ですが、その一方で転職、結婚、妊娠・出産といったライフイベントの他、仕事や家庭での責任・負担が増え、長時間労働やハラスメント、仕事と子育ての両立の問題などが増え、こころの不調につながりやすくなります。
さらに、現代は核家族化やデジタル化の進展、コロナ禍での行動制限の増加等に伴い、仕事や家庭について悩みがあっても周囲のサポートが得にくく、悩みを抱え込みやすい環境におかれがちです。
その一方で、厚生労働省の調査によると「こころの不調」は「身体の不調」と比べて家族や学校、職場などへ相談する割合が低く、相談をためらう傾向にあると判明しました。
※令和6年厚生労働白書より「こころの不調・身体の病気に関する回答別割合」
このような点から、現代において人々の「こころの不調」を改善していくためには早期から職場・自治体等でのメンタルヘルスに関する相談窓口を設置するなど気軽に相談できる支援体制を構築していくことが重要となります。
次のコラムではその中でも職場において気軽に相談できる支援体制を形作る要素のひとつである「心理的安全性」について詳しく見ていきましょう。
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