コラム

心理的安全性を高めるために~みんなが活躍できる職場づくり~

前回のコラムでは「厚生労働白書」を用いて現代の「こころの問題」の傾向について学んできました。次に現代の職場における労働者を取り巻く「こころの問題」と、近年重要視されている職場における「心理的安全性」の重要性について考えてみましょう。

「こころの健康」は「人生のストレスに対処しながら、自らの能力を発揮し、よく学び、よく働き、コミュニティにも貢献できるような、精神的に満たされた状態」(WHO(世界保健機関))といわれるように「働きがい」があり「働きやすい」職場環境は労働者のこころの健康を高め、人生をより豊かにします。

厚生労働省の2022年の調査によると仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者は全体で82.2%にのぼり、内容では「仕事の失敗、責任の発生等」「仕事の量」が特に多い結果となりました。また、就業形態別では、正社員は「仕事の失敗、責任の発生」「仕事の量」の割合が、契約社員や派遣労働者は「雇用の安定性」の割合が高い傾向にありました。よって労働者のストレスの要因や背景は就業形態によっても多様であることがうかがえます。 

 

        ※令和6年版厚生労働白書より「年齢階級別にみた仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの内容別労働者の割合」

 

よって、労働者が個人の特性や希望に応じ雇用を選択できる「働きがいのある」雇用管理や、働き方を自由に選択できる「働きやすい」環境の整備をしていくことが企業に求められています。

そして、働きやすく、働きがいのある職場環境づくりに寄与する要素の一つとして「心理的安全性」が挙げられます。リモートワークが増え、気軽な従業員同士のコミュニケーションが難しくなっている現代では、より「心理的安全性」の高い職場づくりが求められています。

 

心理的安全性とは?

心理的安全性(Psychological Safety)1999年アメリカの学者エイミー・C・エドモンドソン氏が提唱した考え方です。「組織にいるだれもがその場所に安心感をもち、だれに対しても伝えたいことを発言でき、それによって拒絶される、罰せられる心配のない状態」をさします。また、2012年にアメリカGoogle社が行った生産性の高いチームを分析した研究でも、メンバーの能力や働き方ではなく、「他者への心遣い」や「安心して発言できる心理的要素」が生産性にポジティブに影響していると判明しています。よって、少子高齢化で労働力が減少し、効率的で生産性の高い働き方が求められている現代において、メンバーの一人ひとりのエンゲージメントを高め、組織としてのパフォーマンスを高めるために「心理的安全性の高い組織づくり」が必要となっていきます。

では心理的安全性の高い職場にはどのような特徴がみられるのでしょうか。そして、心理的安全性が高いことで組織や従業員にはどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

 

心理的安全性の4因子

心理的安全性の高い組織は次の4つの因子から成り立っています。

話しやすさ:チーム内で誰もが自由に意見をのべ質問できる。ポジティブなこともネガティブなことも自由に受け入れる風土がある。

助け合い:メンバー同士協力し合いサポートしあう。「他人事」でなく「自分事」としてとらえている。

挑戦:失敗を恐れず新しいことに挑戦する意欲がある。失敗した時も各自が「自分事」としてどうすればよかったかを振り返り、議論できる。

新奇歓迎:新しいアイディアや異なる視点を受け入れる態度があるため、新しいビジネスのスタートやイノベーションが期待できる。

 

ぬるま湯組織との違い

「心理的安全性の高い組織」はよく「ぬるま湯組織」と混同されがちですが、組織の特徴において違いが見られます。ぬるま湯組織とは、表面的な人間関係は良好であるものの、相手との衝突を避けるために異なる意見であっても簡単に同調している状態(目標達成へのモチベーションが低い状態)が常態化しています。対して、心理的安全性の高い組織は、目標達成へのモチベーションが高く、異なる意見であっても恐れず発言ができ、活発なコミュニケーションが行われている組織です。そして、このようにメンバーの一人ひとりが目標達成への責任感やモチベーションを向上させるには、組織内でのビジョンや目標の共有がされていることが大切となります。

 

 

心理的安全性を高めることによるメリット

組織の心理的安全性を高めることにより、以下のようなメリットがあるといわれています。

個人のパフォーマンスの向上

メンバーが仕事や組織に安心感を持って働くことができるので、ストレスが軽減される。

仕事にやりがいを感じ集中し取り組めるようになり、仕事の生産性も高くなる

コミュニケーションの活性化と情報共有

メンバー間で話す機会が増え、必要な情報が漏れなく共有できるようになる。

モチベーションアップと従業員の定着率の上昇

高い信頼感の中で仕事をするので、組織への満足度があがり、やりがい満足感が得られる。

組織への安心感もあるので、職場の上司や同僚に悩みを相談しやすくなるので、離職率の低下につながる。

アイディアが生まれやすい

遠慮せず自分の意見が言えるため、新しいアイディアが生まれやすく、新規ビジネスのスタートやイノベーションにつながる。

 

心理的安全性を高めるには?

心理的安全性を高めていくためには、メンバーが対人関係のリスクへの不安を解消し、安心してリスクをとれる状態にしていくことが大切になります。具体的には以下の方法が挙げられます。

 

①メンバー全員に意見を求め、「人」として承認する

メンバーの仕事の成果ではなく、「存在」に対して承認する。会議前に議題を共有する、発言が苦手なメンバーにはその人の得意分野について意見を求めるなど、リラックスして発言できる雰囲気づくりをする。

②業務外の雑談の機会をつくる

仕事以外の話を気楽にできる環境を作る。

例)会議前に雑談の機会を設ける、フリーアドレス制、リフレッシュスペース、社内SNSの活用

③課題解決は起きた「こと」に注目し、「人」を否定しない

仕事上の問題が起きた時は特定のメンバーのスキル、ミスのせいにするのではなく、組織のミッションや目的、問題が発生した環境に着目して、どんな対策が必要か考える。

④若手が話しやすい環境(1 on 1)の整備

定期的な1 on 1やメンター制度を活用して、若手社員も自分の考えが話しやすい機会を作る。

⑤人事評価制度の改善

個人の成果に基づきランクする方法ではなく、リアルタイムで目標を設定してフィードバックをもらう方法、チーム・プロジェクトごとの成果に基づく評価に代えるなど、人事評価制度を改善する。

 

弊法人では、企業のビジョン構築支援、人事評価制度の構築・改定支援を行っており、従業員のモチベーションアップ・離職率の低下につながる、心理的安全性の高い職場づくりに活用することができます。

ビジョン構築 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

制度構築 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

 

また、弊法人は企業における働き方の仕組みづくりを行う「社会保険労務士」とメンタルヘルス面の支援にかかわる「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。

Plattalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、職場環境に問題がある場合は相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

前へ
コラム一覧へ戻る
次へ