前回のコラムでは、現代の日本における長時間労働が引き起こす問題と長時間労働の定義について解説しました。今回のコラムでは過重労働の定義の他、長時間の労働によるリスクや対策について学んでいきましょう。
過重労働とは?
過重労働は長時間におよぶ時間外労働や休日出勤のほか、不規則な勤務・作業環境の悪い勤務、出張の多い勤務など労働者の身体・精神に大きな負荷がある働き方のことを指します。(一方、長時間労働は身体的・精神的に負荷を受けないケースも含まれます。)厚生労働省「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」に記載があるように、長時間にわたる過重な労働は、疲労の蓄積をもたらす大きな要因であり、脳・心臓疾患の発症との関連性が強いといわれています。働くことにより労働者が健康を損なうようなことはあってはならないものであり、労働者が疲労を回復することができないような長時間にわたる過重労働を排除していくとともに、労働者に疲労の蓄積を生じさせないようにするため、労働者の健康管理に対する措置を適切に実施することが重要です。
36協定について
36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させる場合や休日労働をさせる場合に労働者と結ぶ取り決めのことです。労働基準法第36条に基づくことから、36協定と呼ばれています。これまでは罰則による強制力がなく、特別条項を設けることで、上限なく時間外労働を行うことが可能となっていましたが、2019年(中小企業は2020年)に労働基準法の法改正が行われたことで、時間外労働の上限規制が罰則付きで法律上に規定されました。また、臨時的な特別な事情がある場合でも上回ることのできない上限が設けられています。時間外労働時間の上限は、原則は月45時間・年360時間としており、臨時的特別な事情で労使が合意する場合(36協定の特別条項)は以下のように定められています。
①時間外労働は年720時間以内とする
②時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2~6か月平均80時間以内とする
長時間労働のリスク
長時間労働は労働者個人にとっては心身の疾患につながり、以下のような健康障害をひきおこすだけでなく、企業側においても生産性の低下や労働災害発生等により信用の失墜に伴うイメージダウンにつながるなど、大きなリスクをはらんでいます。
・脳・心臓疾患の発症(過労死)
・精神疾患の発症、自殺
・そのほかの過労性健康障害(過敏性大腸炎、腰痛、月経障害など)
・事故やケガ
※労働安全衛生総合研究所「長時間労働者の健康ガイド」より
長時間の労働を防ぐ対策
このように、働き方改革などにより働き方の多様化が進む一方で、長時間にわたる過重な労働がもたらす労働者への健康障害については依然として問題が深刻化しています。これからの対処のため、国は様々な対応を進めています。法律上では労働安全衛生法第66条に「長時間労働者に対する面接指導等の措置」を義務付けているほか、厚生労働省の「過重労働による健康障害防止のための対策の手引き」ではその対策の実施方法が下記の通りまとめられています。これらを参考に、活用していきましょう。
①時間外・休日労働時間等の削減
労基法第36条に基づき、1か月あたり45時間を超えて時間外・休日労働をさせることができる場合を具体的に定めて労使協定を行う。また、そのような時間外労働を行うことができる場合も、恒常的な長時間労働をさせることを防ぐために、事業者は実際の時間外労働を1か月あたり45時間以下となるように努める。「ノー残業デー」「ノー残業ウィーク」などの導入を検討する。
②年次有給休暇の取得促進
労基法第39条第7項に基づき、年5日間の年次有給休暇について、時季を指定して確実に取得させるほか、年次有給休暇を取得しやすい職場環境づくり、年次有給休暇の計画的付与の活用等により年次有給休暇の取得促進をはかる。
③労働時間等の設定の改善
労働時間等設定改善法に基づき、勤務時間インターバル制度(終業と始業の間に一定のインターバル時間を確保し、十分な生活時間や睡眠時間を確保できるよう労働時間の設定を行う)の導入や深夜業の回数制限などを行う。
④労働者の健康管理にかかる措置の徹底
健康管理体制の整備と健康診断の実施、長時間の時間外・休日労働を行った労働者に対する面接指導等、事業場内外資源を活用したメンタルヘルス対策の実施(ストレスチェックの実施活用や教育研修の実施など)を行う。
弊法人では、職場における従業員の安全と健康を確保するために、従業員の長時間労働による健康障害防止に向けた「安全衛生管理体制の構築支援」の支援も行っておりますので、ぜひご活用ください。
健康管理 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)
また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。職場における心身の健康に不安を感じている従業員にとって、相談することで心の負担を軽くするプラットフォームとして活用いただくことができます。
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Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)