近年、法改正により労働者からの「相談窓口設置」義務化の傾向が顕著にみられています。
現在以下に記載されている相談類型については、法律のもとで設置が義務化されています。
相談類型 |
法令名 |
条文 |
窓口設置 |
法令施行日 |
健康相談 |
労働安全衛生法 |
第69条第1項 |
努力義務 |
昭和63年10月1日 |
セクハラ |
男女雇用機会均等法 |
第11条第1項 |
義務 |
平成19年4月1日 |
パートタイム |
パートタイム・有期雇用労働法 |
第16条 |
義務 |
平成27年4月1日 |
マタハラ |
男女雇用機会均等法 |
第11条の31項 |
義務 |
平成29年1月1日 |
育児・介護 |
育児介護休業法 |
第25条第1項 |
義務 |
平成29年1月1日 |
障害者雇用 |
障害者雇用促進法 |
第36条の4の2項 |
義務 |
平成30年4月1日 |
有期雇用 |
パートタイム・有期雇用労働法 |
第16条 |
義務 |
令和2年4月1日 |
パワハラ |
労働施策総合推進法 |
第30条の21項 |
義務 |
令和2年6月1日 |
育児休業 |
育児介護休業法 |
第22第2項 |
義務 |
令和4年4月1日 |
公益通報 |
公益通報者保護法 |
第11条第2項 |
義務(従業員300人以下は努力義務) |
令和4年6月1日 |
では、なぜ近年は相談窓口設置の義務化が増えてきているのでしょうか。そして、なぜ企業に対してこのような窓口設置の対応が求められるようになってきたのでしょうか。
企業に相談窓口設置が求められる理由
企業に対して相談窓口設置の義務化となってきているのは以下のような理由があります。
1.メンタルヘルスへの関心の高まり
近年、職場でのストレスやメンタルヘルスの問題が増加しています。それに伴い、厚生労働省の指針より、労働者の心身の健康を守るために「心とからだの健康に関する相談窓口」の設置が推奨されました。
特に2015年の「ストレスチェック制度」の導入後は、労働者が気軽に相談できる環境を整え、労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐことが企業の義務として認識されています。
2.ハラスメント対策強化
近年はセクハラやパワハラといったハラスメントが社会問題化しています。2020年に改正された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の施行により、企業には相談窓口の設置や被害者保護の対応が義務付けられるようになりました。また、近年はカスハラも問題視されるなど、職場内にとどまらず、労働者が安心して相談できる仕組みを提供することが、企業の責任とされています。
3.労働者の権利意識の向上
労働者が労働に関する情報を自ら得る機会が増え、自分の権利や待遇に関する知識を持つようになったことで、不当な扱いや労働条件に関する問題について声を上げるケースが増えています。企業はこれに応え、相談窓口を設けることでトラブルの早期発見と解決を図ることにつなげることができます。
4.企業リスク管理の一環
近年はSNSなどを用いて瞬時に企業内の問題を世間に拡散されてしまいます。そのため、企業内の問題を放置すると、訴訟や企業イメージの悪化につながるリスクが高まります。相談窓口を通じて社員からの声を早期に拾い上げることで、こういったリスクを回避しやすくなります。
5.多様化する職場環境への対応
グローバル化やリモートワーク、副業等の普及により、従業員の価値観や働き方が多様化しています。これに伴い、企業は多様な従業員のニーズや悩みに応えるための相談窓口を整備する必要が増しています。
6.法的義務とガイドラインの整備
先述した通り、厚生労働省や労働基準監督署が推奨する相談窓口の設置は、企業の法令遵守の一環として位置付けられています。特に中小企業にも相談窓口設置が求められるようになり、企業規模に関わらず対応が進められています。
7.SDGsやESG投資の観点
現代は社会的責任を果たす企業が投資家や社会から評価される時代です。相談窓口の設置は、「従業員を大切にする姿勢」の表れとして、企業価値を高める取り組みとされています。
今回のコラムでは、企業に労働者からの相談窓口設置の義務化となっている理由について解説しました。
次のコラムでは企業において設置が求められている窓口についての概要と、窓口設置にあたり気を付けるべきポイントについて学んでいきます。
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Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)