コラム

相談窓口の設置義務化について学ぶ②~企業における相談窓口設置の法的根拠と設置のポイント~

前回のコラムでは、企業に労働者からの相談窓口設置の義務化となっている理由について解説しました。
今回のコラムでは企業において設置が求められている窓口(下記表参照)についての概要と法的根拠、窓口設置にあたり気を付けるべきポイントについて学んでいきましょう。

相談類型

法令名

条文

窓口設置

法令施行日

健康相談

労働安全衛生法

69条第1

努力義務

昭和63101

セクハラ

男女雇用機会均等法

11条第1

義務

平成1941

パートタイム

パートタイム・有期雇用労働法

16

義務

平成2741

マタハラ

男女雇用機会均等法

11条の31

義務

平成2911

育児・介護

育児介護休業法

25条第1

義務

平成2911

障害者雇用

障害者雇用促進法

36条の42

義務

平成3041

有期雇用

パートタイム・有期雇用労働法

16

義務

令和241

パワハラ

労働施策総合推進法

30条の21

義務

令和261

育児休業

育児介護休業法

222

義務

令和441

公益通報

公益通報者保護法

11条第2

義務(従業員300人以下は努力義務)

令和461

 

企業における相談窓口設置の法的根拠

①心とからだの健康相談に関して:「労働安全衛生法」より

「労働安全衛生法」第69条第1項に基づき、「事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。」としており、その措置として、相談窓口の設置が挙げられています。
この窓口設置については、努力義務であり、必ずしも設置が義務付けられているわけではありません。

②セクシャルハラスメントに関して:「男女雇用機会均等法」より

「男女雇用機会均等法」第112項に基づく指針により、「事業主は職場で行われる性的な言動に対する問題について、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」としており、その措置として相談窓口の設置が挙げられます。

③マタニティハラスメントに関して:「男女雇用機会均等法」より

「男女雇用機会均等法」第1131項に基づき、「事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」としており、厚生労働省「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき処置についての指針」によると、その措置の一つとして、相談窓口の設定を定めています。

④パワーハラスメントに関して:「労働施策総合推進法」より

「労働施策総合推進法」の法改正に伴い、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」としており、厚生労働省「パワーハラスメント防止のための指針」によると、その措置のひとつとして相談窓口の設置を挙げています。また、その他のハラスメントと複合的に生じることも想定されるため、セクシュアルハラスメント等の相談窓口と一体的にパワーハラスメントの相談窓口を設置し、一元的に相談できる体制を整備することが望ましいとしています。

⑤雇用管理の改善に関して:「パートタイム・有期雇用労働法」より

「パートタイム・有期雇用労働法」の法改正に伴い、「事業主は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない。」としており、パートタイム・有期雇用労働者からの相談に対応するための窓口の設置を義務としています。

⑥障害者の雇用促進に関して:「障害者雇用促進法」より

「障害者の雇用の促進等に関する法律」第36条の42項によると「事業主は、前条に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」としており、障害者の相談体制の整備を義務として求められています。

⑦育児休業に関して:「育児介護休業法」より

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第22条の第2項によると「事業主は、育児休業申出等が円滑に行われるようにするための措置のひとつとして、事業主は、育児休業に関する相談体制を講じなければならない」としています。

⑧公益通報に関して:「公益通報者保護法」より

2022年に施行された改正「公益通報者保護法」の第11条の第2項に「事業者は、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、別途定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。」としており、そのひとつとして内部公益通報受付窓口の設置を義務(従業員300人超)としています。
※公益通報とは、事業者による法律違反行為が起きた時に、労働者が組織内の通報窓口や行政機関・報道機関に通報することを指します。 

相談窓口設置におけるポイント

・相談窓口体制の整備

事業場内の課題やニーズに応じて社内スタッフ、必要に応じて産業医や精神科医などの専門家との連携体制を整えましょう。事業内部の者が担当となることにより、労働者が報告・相談しづらくならないように、対応担当者は複数名・男女1名ずつ以上とすることの他に、場合に応じて外部の専門家など事業者外部に設置することもよいでしょう。

・従業員への周知方法

自分の会社に相談窓口があることを知らない、誰に相談してよいのかわからない従業員も少なくありません。社内報やチャットツール、掲示板などを利用し、担当者やその連絡先を全従業員に対して公開し、継続して周知していく必要があります。

・社内相談窓口と社外相談窓口について

社内の相談窓口のほか、社外に相談窓口設置することも有効です。社内の人には言いづらい相談も、社外の相談窓口なら、会社に知られることなく匿名で、中立・公正な第三者に相談できるというメリットがあり、相談のしやすさにつながります。さらに、弁護士、社労士、産業医、公認心理師などの専門家の意見やアドバイスを聞くことができます。社内に適切な担当者がいない時は、このような外部委託がおすすめです。

前回および今回のコラムでは、企業において労働者からの相談窓口設置が義務化となっている理由、そして企業において設置が求められている窓口についての法的な根拠と、窓口設置にあたり気を付けるべきポイントについて解説しました。
相談窓口の設置は複数の法律で定められているので、対応の漏れがないように気を付けていきましょう。
また、相談窓口は設置するだけでは不十分で、周知した上で、適切に対応できる体制を整えることまでが求められている点にも気を付けていきましょう。

弊法人では、各種ハラスメントや公益通報等の外部の相談窓口として支援業務を行っております。弊法人の社会保険労務士が外部の通報・相談窓口となることで、人事労務領域から内部通報にいたるまでの人事労務領域の幅広い相談に専門的かつ包括的に対応することが可能です。

人事労務アドバイザリー - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人

また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。職場における心身の健康に不安を感じている従業員にとって、相談することで心の負担を軽くするプラットフォームとして活用いただくことができます。

Plattalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

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