コラム

女性管理職比率の公表義務化へ~101人以上の企業が対象に~

11月26日、厚生労働省は労働政策審議会の分科会において、従業員101人以上の企業に対し、管理職に占める女性比率の公表を義務付ける方針を示しました。対象の企業は5700社にのぼり、男女それぞれの従業員に占める管理職比率も公表するのが望ましいとする方針です。

女性活躍においては20227月より、男女の賃金格差の公表を301人以上の企業に義務付け、女性の管理職比率や採用比率などより2項目以上を公表するよう求められていたものも管理職比率においては義務となりました。また、「女性版骨太の方針2023」では、上場企業の役員について 2025年をめどに女性を1人以上選ぶよう努め、 2030年までに女性の割合を30%以上にすることを目指すとしています。

データでみる女性管理職比率の現状

令和6年実施の厚生労働省「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」での報告によると、以下の表に示されている通り管理職(課長級以上)に占める女性の割合は13.9%と長期的にみれば上昇傾向にあるものの、国際的にみると依然としてその水準が低いことが分かります。

 

女性管理職比率

※厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」より   

 

女性管理職比率の国際比較

※(独)労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2022」より

 

では、女性管理職が必要とされるのはどういった理由によるのでしょうか。そして依然として女性管理職の割合が少ないのはどういった理由なのでしょうか。女性従業員の管理職登用への意識についても学びながら、女性管理職比率をあげていくためにできる対応策についても考えていきましょう。

なぜ女性管理職が必要なのか~女性管理職が求められる背景~

女性管理職が必要とされている理由について、以下のような事が挙げられます。

多様性の確保

女性管理職が増えることで、意思決定プロセスに多様な視点が加わります。これにより、バランスの取れた判断が可能となり、組織の成長と発展につながります。また、多様な考え方が組織内で交流されることで、新しいアイディアや解決策が生まれやすくなります。

②女性従業員のロールモデルの提供 

結婚、出産、育児、介護などで仕事を続けるか迷う女性従業員は少なくありません。女性管理職が増えることで、若い世代の女性にとってのロールモデルとなり、将来のキャリアプランがたてやすくなったり、成長速度が速まったりするメリットがあります。

③企業イメージの向上

女性管理職を積極的に登用する企業は社会的責任を果たす企業として評価され、またESG投資の観点でも女性活躍の状況は投資家からの判断材料の一つとされています。内閣府の「ジェンダー投資に関する調査研究」(2021年)によると、約7割の機関投資家が投資判断において女性活躍情報を活用しています。

④労働力不足の解消

また、女性が活躍できる環境を整えている企業とアピールすることで、より優秀な女性の人材を確保することができます。また、女性がキャリアをあきらめることなく活躍できる環境を整えることで、労働力不足を補うことができます。

女性管理職比率が少ない理由

ではなぜ女性管理職が増えないのでしょうか、考えられる理由としては以下が挙げられます。

①女性管理職の前例が少ない

既存の女性管理職の前例が少ない「ロールモデルの欠如」によることで、女性自身のキャリアパスが不明瞭になりがちで、昇進意欲の低下や能力開発の機会を失うことにつながる可能性があります。

②仕事と家庭の両立が困難である(男女の役割意識)

依然として、日本においては社会的な男女の役割意識が影響しています。伝統的に男性が仕事を、女性が家庭を担う考え方が根強く、女性のキャリアアップの障壁となっています。

③日本企業の制度が女性活躍促進を阻害している

多くの企業では管理職への登用には長時間労働や頻繁な出張などを求めることが多く、女性の家庭生活との両立を困難にしています。特に、育児休暇取得後の復職において、女性のキャリアが停滞することがあり、このような企業の制度により女性が管理職として活躍する機会を減らしてしまっています。

④経営層が女性管理職登用に消極的である

経営層の女性管理職登用への意識欠如も要因となります。経営層の中には「産休復帰後の女性は補助的な業務を望んでいる」などと考える人もおり、従来のキャリアコースから外されてしまう女性従業員もいます。男女で育成方針をわけるのではなく、本人の希望に沿って仕事内容や目標、キャリアパスを決めることが大切です。

 

さらに、制度・社会上の理由に限らず、多くの女性労働者が管理職登用を希望していないという現状もあります。日経ウーマノミクス・プロジェクトが202278月に実施した女性へのアンケートでは、「女性管理職」を希望する女性は41.7%である一方、58.3%と半数以上が管理職を希望していない状況です。希望しない理由としては「育児、家事や介護などとの両立が難しい」、「残業時間が増える」、「成長機会を提供されなかった」、「男性中心の世界に抵抗がある」、「昇進後の上司や部下への対応が不安」などが挙げられました。また、このような管理職を希望しない女性の中には、積極的に管理職を希望していない女性も存在しますが、「長時間労働」や「育児・介護との両立が難しい」など、障壁があるからこそ希望していない女性にとっては職場環境や各種制度の整備等を行っていくことが求められます。

女性管理職を増やすために

そのため、単なる「数値目標」を達成するだけでなく、「家庭と仕事の両立がしやすい」「残業が少なく調整しやすい」などと女性が自ら管理職になりたいと思える職場環境づくりをしていくことが企業には求められています。具体的な施策としては以下が挙げられます。

①ワークライフバランスの整った環境づくり

女性管理職を増やすためには、ワークライフバランスの整った職場環境づくりが重要です。

結婚や出産、介護に伴いキャリアが途絶えることが働く女性において大きな課題となっています。産休制度や育休制度の他にも、時間単位の有給休暇の取得制度や短時間勤務制度、フレックスタイム制度やテレワーク制度の導入など、育休復帰後の社員が相談できる相談窓口の設置など、出産・育児、介護との両立ができるよう環境づくりを進めていく必要があります。また、女性が働きやすいだけでなく、男性社員も含めた社員全員が働きやすい環境を作ることを意識していくことも重要です。(行動計画)

②人事評価制度の評価基準の明確化

産休で休職するとキャリアアップしにくい、時短勤務では対応できない評価項目があっては女性従業員が管理職につくのは難しくなってしまいます。管理職に登用する基準や求められるスキルを明確にし、女性であっても管理職の登用が可能となる公平な人事評価制度にしていくことが求められます。

③経営層の意識改革

女性管理職の登用を推進するためには、組織のトップが明確な移行を示すことが大切です。ホームページなどで組織が女性活躍推進に取り組むというメッセージを発信することで、社内の意識改革にもつながります。

④研修実施によるキャリア開発

昇進・昇格を打診されても管理職になることへの不安を抱えている従業員も少なくありません。研修などによるキャリア開発も女性管理職を増やす施策として重要です。階層・職種別研修、リーダーシップ研修などを実施したり、出産・育児等でキャリアを中断した女性社員をサポートするキャリアパス構築の支援をしたりと研修やサポート体制を充実させることで、管理職につくことでの不安を抱く従業員も安心して管理職を目指すことができます。

 

しかし、一方で積極的な理由で自ら管理職を希望しない女性もいることも事実です。また、女性に限らず男性においても管理職を希望しない従業員が増えているといわれています。つまり、働く人々にとって、管理職という仕事自体に魅力的に感じられていないということも管理職比率の少なさの要因としてあげられるのではないでしょうか。そのため、管理職になってからも働きやすい環境の整備だけでなく、働く人々が管理職という仕事に魅力を感じ、管理職の責務をポジティブにとらえることのできる人を増やしていくことも重要な課題だとプラットワークスは考えています。

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Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

 

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