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【最新動向】勤務間インターバル制度の義務化に向けた議論が加速
厚生労働省は12月10日、労働基準関係法制研究会において、就業から次の始業まで一定時間を確保する「勤務間インターバル制度」について、義務化を視野に入れつつ、法規制の強化を検討し、労働時間法制などの見直しに関する報告書案を提示しました。
では、そもそも勤務間インターバル制度とはどのような制度なのでしょう。
また、なぜこのような制度は必要となったのでしょうか。
その目的やメリット、デメリットについても詳しく見ていきながら、なぜ法規制の強化に向けて検討されているのか、考えていきましょう。
勤務間インターバル制度とは?
制度の定義と現行の努力義務
「勤務間インターバル制度」とは、1日の勤務終了後、翌日の始業までの間に一定時間以上の休息時間(=インターバル)を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。
「労働時間等設定改善法」が改正され、2019年4月より勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となりました。
残業などで遅くまで勤務し、翌日の始業時間が通常通りであると、労働者は十分な休息が取れず、心身の健康を損なう危険性があります。そのため、労働者の健康を守る目的として、翌日の始業開始時間を繰り下げることで生活時間や睡眠時間の確保を図るために、制度が解説されました。

※参考:働き方・休み方改善ポータルサイトより
「11時間」が基準に?報告書案に見るパターン
具体的な利用パターンとしては、インターバル時間が翌日の就業時間と重なった場合、その分だけ労働時間とみなすもの、インターバル時間を確保するために、翌日の始業時間を繰り下げるパターンがあります。

導入企業が直面するデメリットと、それを上回る「健康経営」のメリット
現在、政府は、「休息時間11時間以上の確保」を推奨し、企業の取り組みを「努力義務」からさらに進める方向性を検討しているようです。企業側が労働者の「健康確保」の責任をより明確に求められる動きと考えてよいでしょう。
では、勤務間インターバル制度の導入に当たって、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
主に以下が挙げられます。
①メリット「健康経営、人材確保、生産性向上」
・従業員の健康確保:制度を導入することで、休息時間を確保しやすくなるため、従業員の健康の維持や向上につなげられます。勤務終了から次の勤務開始までのインターバルを確保することで、従業員が心身の疲れの蓄積による体調不良に陥るリスクを軽減することができます。
・定着率向上、人材確保:十分な休息の確保がとれない状態が続くと、従業員の離職や休職リスクが高まります。従業員にとって働きやすい環境の整備は離職率の低減だけでなく、求職者にとって魅力のある職場につながります。
・生産性向上:従業員の健康維持、向上が実現されることで、従業員の仕事へのパフォーマンスも向上し、生産性を高めることができます。人材の定着や生産性の高い働き方をすることで、残業を減らし、より多くの利益を高め、企業業績にも良い効果を期待できます。
②デメリット「理解の共有、煩雑化」
・役員、従業員の理解:役員や現場の社員に対して理解を得ることが難しいため、導入までに時間がかかってしまうことが考えられます。
・時間管理の煩雑化:勤務間インターバル制度を守らない従業員への対処法や、ツールをどのように活用するかなど新たな手間が発生する可能性があります。
実務上の留意点:36協定や就業規則、代替措置をどう設計するか
では勤務間インターバル制度を導入する際はどのようなことに気をつけるとよいでしょうか。
主に以下のポイントについて気を付けるとよいでしょう。
就業規則、業務実態に合わせてインターバル時間を設定する
事業場の就業規則によって、また業務実態によって従業員に適したインターバル時間は様々となります。実態をよく把握した上で、インターバル時間の設定を行いましょう。
特別事情の場合の対応も想定する
インターバル時間を就業規則に設定している場合、一人でも違反になると就業規則違反になるため、繁忙期などの特別な事情でインターバル時間の確保が難しい従業員に対してどのような代替措置をとるか、対応方法を具体的に整備しておくとよいでしょう。
従業員への説明を十分に行う
勤務間インターバル制度の導入にあたって、従業員に十分な説明をおこなっていないと職場に混乱をもたらし、従業員の理解を得ることが難しくなります。
役員や現場の従業員に対しては導入目的だけでなく、導入に伴って生じる手間に対しての業務効率化の対策も合わせて説明するなど、納得性の高い説明をしていくとよいでしょう。
最大2025年度も継続:助成金を活用した先行導入のすすめ
働き方改革推進支援助成金について
なお、厚生労働省は勤務間インターバル制度の導入に取り組む中小事業主に対して、働き方改革推進支援助成金の支給を実施しております。
以下の五つの条件をすべて満たす事業主は、勤務間インターバルに関する成果目標を設定し達成状況に応じて設備導入や研修費用などの助成金の支給を受けることができます。
この助成金制度は2025年度も実施予定となりますので、詳細は厚生労働省:働き方改革推進助成金(勤務間インターバル導入コース)を参照ください。
(1)労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2)次のアからウのいずれかに該当する事業場を有する事業主であること
ア 勤務間インターバルを導入していない事業場
イ 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、
対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
ウ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場
(3)交付申請時点・支給申請時点で36協定が締結・届出されていること
(4)原則過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があること
(5)交付申請時点で年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること
これから検討されている法規制
勤務間インターバル制度は現在法規制されておらず、労働時間等設定改善法に基づき事業主の努力義務を定めていますが、具体的なインターバル時間数、対象者、導入に当たっての留意事項などは示していない状況です。
現時点での勤務間インターバル制度の導入率は令和5年1月時点で6.0%にとどまっており、抜本的な導入促進、義務化を視野に入れた法規制の強化について検討する必要があると先述の研究会においても指摘されています。
具体的な内容として、以下の考え方をもとにしたものが挙げられます。
・ 勤務間インターバル時間として 11 時間を確保することを原則としつつ、制度の適用除外とする職種等の設定、実際に11時間の勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置等について、多くの企業が導入できるよう、より柔軟な対応を法令や各企業の労使で合意して決めるという考え方
・ 勤務間インターバル時間は11時間より短い時間としつつ、柔軟な対応についてはより絞ったものとする考え方
・ 規制の適用に経過措置を設け、全面的な施行までに一定の期間を設ける考え方
いずれにしても、多くの企業が導入しやすい形で制度を開始するなど、段階的に実効性を高めていく形が望ましいと考えられております。
また、勤務間インターバル時間が確保できなかった場合の代替措置については、健康・福祉確保措置の一環として実施される健康観察や面接指導等といった事後措置を目的としたものでなく、代償休暇など労働からの解放を確保するものや、代替措置が可能な回数について各事業場の労使協議で上限を設定することが望ましいという考え方が示されています。
【2025年12月更新】最新調査に見る制度の効果と課題
2025年10月、労働政策研究・研修機構(JILPT)は、厚生労働省が実施した一般統計調査「勤務間インターバル制度に関する実態調査」(2024年11~12月)の分析結果を公表しました。
この調査では、制度を導入した企業において「労働者の睡眠確保に一定の効果があった」「ワークライフバランスが向上した」といったポジティブな数値が示されています。特筆すべきは、適正な運用の鍵として「直属の上司による終業時間の管理」が挙げられている点です。
分析では、従業員本人や上司へ直接働きかけることが制度の実効性を高める上で有効であることが指摘されています。
一方で、夜勤に従事する労働者はインターバル確保が困難な傾向にあるなど、職種による格差も浮き彫りになりました。
今回の分析結果は、今後の法改正論議(原則11時間の確保など)においても、実効性を担保するための重要な判断材料として活用されることが期待されています。
今回のコラムでは勤務間インターバル制度についての概要とそのメリットとデメリット、義務化に向けての今後の動向について解説しました。
現代の労働市場においては、従業員の健康を守る健康経営を推進する企業は従業員の安心感を高め職場環境の満足度を向上させるだけでなく、優秀な人材の確保や定着にも重要な要素となっています。
人材不足が労働市場において課題となっている現代では、勤務間インターバル制度の導入は今後ますます増えていくと考えられます。法律が義務化される前に、まずは働き方改革推進助成金の活用も考えつつ、ぜひ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)




