コラム

事業承継とM&Aの支援強化!2025年新設の事業承継・M&A補助金について中小企業診断士が分かりやすく解説

日本は想定より高齢化が進んでいると言われている昨今ですが、事業承継の観点から見て中小企業やその経営者の年齢についてはどのような状況なのでしょうか。
中小企業白書2024によると、日本の経営者の年齢分布は2015年頃に「65~69歳」がピークとなり、その後経営者年齢の分布は平準化する形で推移しています。
一方で経営者の年齢が70歳以上の企業割合は2000年以降最高となっていることから、事業承継が必要とされる企業は依然として多く存在する状況です。
まだまだ経営者の高齢化という課題が残る中で、後継者不足に悩む経営者の方も多く見られます。そのような企業や経営者向けに、事業承継やM&Aを支援する補助金制度が「事業承継・M&A補助金」です。
今回はこの事業承継・M&A補助金について解説します。
なお、2024年度は「事業承継・引継ぎ補助金」という名称で運営されており、基本的な点は踏襲されていますが、変更点もありますので注目していきましょう。

【中小企業の経営者年齢の分布(年代別)】

高齢化、事業承継、M&A、補助金、引継ぎ、後継者、PMI、廃業、事業再生、【引用:中小企業白書 2024年版】

4つの支援枠

事業承継・M&A補助金は4つの支援枠が設定され、事業者の状況に応じた支援ができるようになっています。
まずはどのような枠があるのか補助率・補助金の内容など全体像を把握して見ましょう。
内容を踏まえ、次の項目で特に注目のポイントを解説します。
高齢化、事業承継、M&A、補助金、引継ぎ、後継者、PMI、廃業、事業再生、

【引用:事業承継・M&A補助金 中小企業庁】

主な変更点とポイント

今回の注目すべき変更点とポイントとしては以下の2点です
この2点については、政府が生産性向上支援の拡充を目指し見直された点ですが、国がどのような意図や狙いをもって見直しをしたのかを解説します。

① PMI推進枠の新設
2025年度よりPMI推進枠が新設されました。
PMIとはPost Merger Integrationの略で、M&A(合併・買収)が成立した後に行われる統合プロセスを指します。2つの会社が一緒になった後、文化も歴史も違う2社が同じ会社の一員としてうまく仕事ができるよう、システムの導入や、既存設備の更新・改修、外部専門家への委託、トレーニングプログラムを導入等するような補助金の活用方法を想定していると考えられます。

② 補助上限の引き上げ
既存の事業承継促進枠(旧:経営革新枠)や専門家活用枠については補助上限の引き上げが行われました。この目的は、M&Aのトラブル防止に資するDD費用の支援拡充や100億企業創出加速化を図るためと発表がされています。
このことから、相手企業を十分に調査しM&Aの成功率を向上させることや、より多くの企業にM&Aを積極的に活用し、M&A市場の活性化を図りたい狙いがあると考えられます。

「事業承継・M&A補助金」と「事業承継・引継ぎ補助金」の違い

前項の内容を踏まえ、「事業承継・M&A補助金」と「事業承継・引継ぎ補助金」を比較してみましょう。
大きなポイント以外の細かい点では、「経営革新枠」が「事業承継促進枠」に変更されていたり、専門家活用枠の補助上限について柔軟な運用が可能になっていたり、補助率の条件変更等が確認できます。
これらのことから、国として事業承継やM&Aを推進していきたいということだけでなく、事業者側からも多様なニーズがあり、それに応えるため補助金制度を強化した側面があることが推測できます。

高齢化、事業承継、M&A、補助金、引継ぎ、後継者、PMI、廃業、事業再生、

【中小企業庁の資料を基に作成】

申請方法

現時点で詳細な申請方法は発表されていません。
ただ、基本的にはこれまでの内容を踏まえた電子申請となると思われますので、システムのアカウント取得や事前に必要になりそうな資料は準備しておきましょう。
参考までに2024年の申請方法を以下に記載します。

<参考:事業承継・引継ぎ補助金申請方法(2024年版)>
① 補助対象事業の確認
   申請を希望する事業が補助対象であるかを確認します。

② gBizIDプライムアカウントの取得
   申請にはgBizIDプライムが必要です。法人の場合、発行には1〜3週間かかることがあるため、早めに手続きを行うことが推奨されます

③ 必要書類の準備
   申請に必要な書類を準備します。法人の場合は履歴事項全部証明書や閉鎖事項全部証明書、個人の場合は住民票などが必要です。
   具体的な書類は「必要書類チェックリスト」で確認できます

④ 補助事業計画の立案
   実施する補助事業の内容や進行方法、予想される経費を詳細に記載した計画書を作成します。所定のテンプレートやjGrantsのフォームに記入する必要があります

⑤ オンライン申請
   jGrantsシステムを通じて、電子申請を行います。必要事項を記入し、準備した書類を添付して提出します

⑥ 審査と交付決定

   提出後、事務局による審査が行われ、交付決定通知が発行されます。通常、申請から約1ヶ月後に結果が通知されます

⑦ 事業実施と実績報告

   補助金交付決定後、実際に事業を実施し、その結果を報告します。実績報告は所定の期間内に行う必要があります

⑧ 補助金の請求と交付

   実績報告後、補助金の請求を行い、交付されます。これにより、事業化状況報告も求められる場合があります

補助金制度強化がもたらす企業統合の新たな可能性

M&A後の統合プロセス(PMI)の支援強化と補助金制度の拡充は、企業の成長を促進する重要な転機になります。特に多くの中小企業にとって、M&Aは事業拡大やイノベーションの大きなチャンスですが、統合過程には多くの課題が伴います。PMI支援の強化により、企業は統合リスクを最小限に抑え、シナジー効果を最大化することに繋げることが可能になります。補助金上限の引き上げは、これらの支援をより多くの企業に提供し、事業承継や成長戦略を加速させます。
「事業承継・引継ぎ補助金」から「事業承継・M&A補助金」への名称変更は、これまで以上にM&Aを活用した事業承継が現代の経営環境において重要な選択肢であるという国からのメッセージです。この補助金をうまく活用することで、企業はM&Aを通じて持続的な成長と競争力を強化し、経済全体の活性化にも繋がることが期待されます。スムーズに統合を進め、事業拡大や生産性向上を進めていきましょう。

社会保険労務士法人プラットワークスでは、多数の企業様に補助金や助成金の支援を行っていることや、自ら補助金や助成金の採択・通過した実績を踏まえ、皆さまの支援をいたします。
また、2025128日(火)に設備投資や事業拡大に向けた補助金を活用するための無料セミナーを実施しますので、ぜひご参加ください。
補助金の情報についても新しい内容が発表され次第、随時更新していきます。

 

 

<サービス:各種補助金>
助成金・補助金・給付金申請支援

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