なぜ今、経営力向上計画をつくるのか? ~優遇措置を受けるだけで終わらせず実行に移す~

以前のコラムで経営力革新計画について書きましたが、今回は経営力向上計画について説明します。似たような名前の計画策定制度があるのでややこしいですが、それぞれ目的や特徴に明確な違いがありますので、内容をしっかり理解し自社が置かれた環境や活用したいメリットに合わせた計画策定制度を活用していきましょう。

制度の目的と狙い

「経営力向上計画」とは、中小企業の経営者が自社の経営力を向上させるために策定する計画のことです。経営力を具体的に表すと、人材育成や業務改善、生産性の向上、それらを実現するための設備投資など、多岐にわたる取り組みの結果と考えられます。経営力向上計画を策定することで、自社の現状分析により課題を明確にし、具体的な取り組みを実行に移すことで、経営の安定を図ることを目指します。
一方、経営力革新計画は、もっと積極的に企業の革新を促進するための計画です。革新と言っても単に新しい技術の導入や新商品の開発をするだけではなく、新しい生産方法や販売方法の導入や新しいサービスの提供、他社と差別化するために新しい取り組みをするといった、より戦略的な計画が求められます。
整理すると経営力革新計画は「夢を描き続ける=未来志向」であるのに対して、経営力向上計画は「現状の改善と経営の安定」に対してより重きを置いているということが言えます。
どちらが優れているということではなく、自社または事業の現状や目指したい方向性を踏まえ、どちらの計画を作ることが合っているのか見極めることが大切です。

経営力向上計画と経営革新計画の比較

両計画とも、中小企業等経営強化法に基づいており、企業の経営力向上や経営強化を目指すという点では共通しています。ただ、異なる部分も多くあり、以下の表にまとめましたので見てみましょう。助成金、補助金、設備投資、生産性、人手不足、VUCA、、経営計画、リーマンショック、ビジョン、中期経営計画、中小企業、事業拡大、中小企業診断士、社会保険労務士、経営革新計画、補助事業計画資金繰り、経営力向上計画

どちらの計画も認定されれば税制や特例など様々な優遇措置を受けることができます。しかし、ここで重要なことは、計画策定をする目的は生産性の向上や業務効率の改善、組織活性化など経営の土台を改善または発展させることであり、優遇措置を受けるためだけの計画策定は避けるべきである、ということです。

計画策定の流れ

経営力向上計画は中小企業庁が標準的な策定までの流れを示しています。特に令和4年から「経営力向上計画申請プラットフォーム」による電子申請の移行が始まり、エラーチェックや指標の自動計算機能などサポート機能もついていて非常に便利ですので、積極的に活用していきましょう。

① 該当する事業分野を確認する
日本標準産業分類を用いて、自社の事業分野を確認します。
(日標準産業分類)
https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/

② 事業分野別指針を確認する
該当する事業分野の指針を確認します。事業分野別指針が策定されていない場合は基本方針を参照します。
(事業分野別指針及び基本方針)
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/kihonhoushin.html

③ 計画を策定する
確認した指針または基本方針に基づいて経営力向上計画を策定します。

④ 主務大臣への提出
策定した計画を事業分野に応じた主務大臣に提出します。各事業分野ごとに主務大臣が異なりますので注意が必要です。
※申請にはgBizIDプライムアカウントが必要になります。

⑤ 審査
提出された計画について認定審査が行われます。

⑥ 認定書の受領
認定された場合、認定計画書および計画申請書の写しが郵送またはダウンロードで交付されます。

⑦ 経営力向上計画の開始、取組の実行
認定された経営力向上計画に基づいて実際に計画を実行します。

計画申請から認定までの標準スケジュールは約30日ですが、事業が複数の省庁の管轄にまたがる場合は約45日とされています。ただ、電子申請をすると約2週間ほどに短縮されますので電子申請を積極的に活用することをおススメします。
不備がある場合や所管外の主務大臣に資料を提出すると差戻しされ、解消されるまで提出と差戻しを何度も行うことになるので、書類の見直しと余裕を持ったスケジュールで進めていきましょう。

その他細かい条件も確認が必要になりますので、中小企業庁が発行している手引きや資料を参照しながら作成してください。
<経営力向上支援 中小企業庁>
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kyoka/

経営の土台作りに向けた計画をつくる

経営力向上計画は、業務効率化やコスト削減のための設備投資、今いる人材の育成など、まずは土台をしっかり作り進んでいきたい企業が作成するのに向いています。これだけ環境の移り変わりが早いと新しいことにあれもこれも手を出したくなりますが、まずは自社の経営や限りあるリソースを見直してみると、まだまだでできることも多いと思います。
また、計画策定をすることで色々なメリットがあるのでそちらに目が行きがちになります。繰り返しになりますが、経営力向上計画を立てること自体が目的ではなく、計画を立てる前にまずは何を改善すべきか、どのような方向に進むべきかを強い想いを持って決めることが非常に重要です。そして、決めたことを計画に基づいて経営者と従業員が一体となり改善や生産性向上に向けた行動と実践を行うということを忘れずに取り組んでいきましょう。

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<サービス:各種補助金>
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<関連コラム>
経営革新計画を作り新たな挑戦を ~事業拡大への道すじを描く~
https://sr.platworks.jp/column/7201

計画はなぜ作る必要があるのか ~経営における重要性と作成ステップ~
https://sr.platworks.jp/column/7193

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