2024年、人手不足倒産が過去最多に~人手不足を解消するためにできることは?~

近年、人手不足により経営が困難となる企業が増加しています。帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査」によると2024年に従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする人手不足倒産(法的整理:負債1000万円以上となった企業のうち、人手不足を要因とする倒産)は、累計で342件となり、過去10年の調査の中で最多となりました。

 人手不足倒産    
 ※TDB Business View:人手不足倒産の動向調査(2024年)より

 

また、人手不足倒産が多い業界として、建設業物流業2業種が挙げられ、人手不足倒産の全体の45.4%を占めています。

少子高齢化に伴う人手不足は特に問題視されていますが、その一方で労働人口は過去最多(6,957万人)となっています。特に女性・高年齢者・外国人労働者は増加の一途をたどっています。
では、なぜ労働人口は増えているのに対して人手不足による倒産は後を絶たないのでしょうか。その原因についてあげながら、その対応策について解説していきます。

人手不足倒産とその原因

では、人手不足による倒産はなぜ起きてしまうのでしょうか。大きな原因としては以下が挙げられています。

①労働力人口の減少

現代は少子高齢化が進み、労働力となる1564歳までの生産年齢人口が減少している傾向にあります。それにより、就業者と完全失業者を含めた労働力人口自体の減少は避けられず、人手自体が不足していることが原因のひとつとなります。

②採用難

採用活動を行っても求めている人材を確保することができないことが原因として挙げられます。有効求人倍率は20248月時点で1.23倍となり、求職者数より求人の数が上回っている状況のため、求めている人材を採用する難易度が高くなっています。

③離職率の高さ

人材の流動化が激しくなっている現代では、離職率が増加していることも人手不足に大きく影響を与えています。
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、2022年の離職者数は7,656.7千人で、離職率は15%にのぼり、前年より1.1%の上昇となりました。また、人手不足倒産の企業のうち、8割が従業員10人未満、資本金1,000万円未満の中小規模の企業であることから、従業員数の少ない小規模の企業の場合、人材一人ひとりの離職の影響度が大きく、大きな痛手となっていることが伺えます。

④人件費の高騰

人件費の高騰も人手不足倒産を招く大きな原因となります。
2024
年の春闘による賃上げ率は前年比5.10%となり、33年ぶりの高い水準となりました。円安や物価高への対応、政府の賃上げ要請や最低賃金の引上げなどが人件費の高騰に影響する一方で、人件費の上昇分を価格転嫁できない中小規模の企業において、経営難につながります。

人手不足が顕著な2つの業界

特に人手不足が深刻となっている業界としては、建設業・物流業が挙げられます。
どちらの業種も以下の通り、労働者の高齢化が目立ち、長時間労働など労働環境が他業種と比べてあまりよくないことで、離職率が高く、若手人材が集まりにくい業界といわれています。

1)建設業界

建設業界の倒産の中でも「社員の転職や退職」に伴う人手不足による倒産が特に問題視されています。建設業界では資格や技術を持った技術者が足りないことや若い社員の入社が少なく、高年齢労働者が多いことで、深刻な人手不足が怒り、事業の存続が難しくなり倒産を選択せざるを得ない状況です。

2)物流業界

物流業界は、EC市場規模の拡大等で物流件数は増加し需要は拡大しているものの、長時間労働と低賃金のイメージから、働き手の確保が難しいといわれています。また、建設業界と同様にドライバーの高齢化と早期退職により、ドライバーの担い手不足が問題視されています。

また、2024年問題と呼ばれる、トラックドライバーに対して、時間外労働短縮の規制が始まったことで、より多くの人材確保が必要となりました。

人手不足の対応策としてできること

では、少子高齢化社会で労働人口が減りつつある社会的背景を踏まえて、人手不足倒産を避けるにはどのような対応策をとっていけばよいのでしょうか。

①採用力の強化

求人サイトだけでなく、リファラル採用やSNS採用など採用チャネルを多様化させる他、女性・高齢者・外国人など採用ターゲットを幅広く検討することも必要です。なお、女性の採用や継続就業、管理職登用などで女性活躍推進の取り組みを積極的に行う企業はえるぼし認定の取得をすることで企業イメージアップにつなげることができます。

②働きやすい職場環境づくりと柔軟な働き方の整備

ハラスメント対策や短時間正社員制度、長時間労働の、休暇を取りやすくする、リモートワークやフレックスタイム制など働きやすい職場環境と柔軟な働き方ができる制度作りをすることで、優秀な人材の獲得や労働者の離職防止につなげていきます。
また、1 on 1や外部の専門機関等への相談窓口の設置など労働者へのフォロー体制を整備し、労働者が入社後も働き続けやすい環境づくりをしていくとよいでしょう。

③生産性の向上

ITやデジタル活用を考慮しながら、不要な業務・非効率的なフローを排除し、業務効率化をはかり、少人数でも業務がまわるように生産性を向上させる仕組みづくりをしていくとよいでしょう。

④外部リソースの活用

経理、人事などの外部委託が可能な業務は外部リソースを活用する、短期的な業務についてはシルバー人材センターや派遣業務などを活用するなどを行うことで、コア業務に対し人材を集中させることも有効でしょう。

 

以上のことより、人手不足は多くの業界で深刻な問題となっており、今後もますます拍車がかかることが予想されます。従来の体制のままで継続していくと、人手不足による倒産は今後も増えていくでしょう。
しかし、上記に挙げたような働きやすい環境整備を行い、労働者の離職や定着率を向上させること、女性や高齢者、外国人労働者などの多様な人材を積極的に活用していくことなどを通じ、人手不足倒産を防ぐための対策が可能です。なお、このような働きやすい環境整備にあたっては、事業の実態を踏まえ、専門家に相談しながら進めていくことが重要です。

弊法人では、事業主の事業特性や組織風土に合った運用しやすい制度構築の支援を行っております。ぜひご活用ください。

制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所


また、「えるぼし認定」や「くるみん認定」などの女性活躍推進に関する認定の取得は、企業イメージの向上や公共調達における加点評価などの具体的なメリットをもたらします。プラットワークスでは「えるぼし認定」、「くるみん認定」取得申請のご支援を積極的に行っております。
詳細は弊法人のサービス一覧をご参照ください。
えるぼし認定 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)
くるみん認定 - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。従業員にとって、相談することで心の負担を軽くするプラットフォームとして活用いただくことができます。

Plattalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)

コラム一覧へ戻る
次へ

働く自由をすべての人に

子どもの頃、お手伝いをしながら、理由もなくワクワクしたあの気持ち。
そんな「働くことの楽しさ」を感じられる組織をつくるために私たちは常に問いかけます。
「本当に必要なルールとは何か?」
「心は自由で、のびのびと働けるだろうか?」
すべては、世界の可能性を広げるために。