前回のコラムで中小企業省力化投資補助金について解説しましたが、2月21日に様式の公開とともに、公募要領が一部改訂されましたので解説します。
中小企業省力化投資補助事業(一般型)は、『人手不足解消に 効果のあるロボットや IoTなどの 製品や設備・システムを導入するための経費を国が補助することにより、中小企業の省力化投資を促進し売上 拡大や生産・業務プロセスの効率化を図るとともに、賃上げにつなげることを目的とした補助金』(中小企業省力化投資補助金(一般型)ご案内チラシより引用)です。
今回の改訂により、表現の具体化や分かりやすさが向上したことに加え、より厳格な返還基準が設けられるなど、高付加価値な補助事業を高い実現性のもとで実行する事業計画が求められることが明確になりました。
概要とスケジュール
中小企業省力化投資補助金は今回新たに新設された「一般型」と従来の「カタログ型」の2種類で構成されています。
「一般型」はいわゆるものづくり補助金の「オーダーメイド枠」からの移行とされており、ほとんど内容は同じになります。汎用のシステムや機械装置ではなく自社に合った設備投資をしたい場合は一般型がおすすめです。※大幅賃上げ特例の適用要件:①給与支給総額の年平均成長率+6%以上増加 ②事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準
※最低賃金引上げ特例の適用要件:中小機構が指定する一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いること
基本要件は以下の通りです。要件が多く大変ですが、それぞれの要件をクリアすることで単に補助金を受け取るだけでなく、皆さまが取り組む事業の成功率を高めることに繫がりますので、内容をしっかり詰めることが大切です。
スケジュールは以下の日程で行うことが公開されています。
先月から準備を進めてきた事業者様も多いと思いますが、申請開始まで1カ月を切っていますので早め早めの準備を進めていきましょう。
公募開始 :2025年1月30日(木)
応募申請受付:2025年3月19日(水)10:00 ~ 2025年3月31日(月)17:00
採択発表日 :2025年6月中旬(予定)
なお、公募は年3~4回を予定していると発表されていますので、今回の申請に間に合わない場合は次回の公募を狙う戦略も良いと思います。
ただし、公募が発表された時点で準備を開始するとあわただしくなるので、今回の公募内容を基に今から準備を進めることをおススメします。
公募要領改訂の目的と注目ポイント
今回は多くの点について改訂が行われ新旧対照表も公開されましたが、主な目的としては抽象的な表現をより具体的にして事業者様の誤解を招かないようにすることや、色々な解釈の余地を残すこによるトラブルを防ぐといったことが考えられます。
ここでは特に注目したい改訂ポイントについて3つみていきましょう。
(1) 要件未達の場合の返還内容の透明化と新規定の追加
事業計画の目標が達成されない場合、補助金の返還を求められる可能性がありますが、その達成率の計算式が明確化されました。具体的には、事業計画終了時点での1人当たり給与支給総額の年平均成長率が、最低賃金の5年間の年平均成長率または給与支給総額の年平均成長率2.0%以上の目標に達していない場合、達成率に応じて返還額が算定されます。
達成率と返還金額の考え方は以下の計算式で明確化されましたので確認しましょう。
計算式を明確にすることで透明性を高めるという意味もありますが、全額返還の規定も追加されたことについては、目標を達成しない場合、規定を根拠に厳格に対処していくという意思の表れと考えられます。
<達成率の考え方>
① (1人当たり給与支給総額の場合の達成率)=(事業計画終了時点の1人当たり給与支給総額の年平均成長率(%)/(申請時に掲げた各都道府県別の基準率以上の目標値(%))
② (給与支給総額の場合の達成率)=(事業計画終了時点の給与支給総額の年平均成長率(%))/(申請時に掲げた2.0%以上の目標値(%))
<未達成時の返還金額の考え方>
達成率①と②を比較し、①が高い場合は③、②が高い場合は④で算定した額の返還を求めます。
③ (1人当たり給与支給総額の場合の返還金額)=(補助金交付額ー補助上限引き上げ額)×(1―1人当たり給与支給総額の場合の達成率)
④ (給与支給総額の場合の返還金額)=(補助金交付額ー補助上限引き上げ額)×(1ー給与支給総額の場合の達成率)
ただし、付加価値額が増加せず、営業利益が赤字の場合や天災などの不可抗力があった場合は、返還を求めません。
また、年平均成長率が0またはマイナスの場合は、全額返還となる規定が追加されました。
(2) 省力化指数の説明を具体化
省力化指数は分かりづらいので前回のコラムでも説明しましたが、今回の改訂でも言葉を補足するような形で修正が行われました。内容に大きな変更はないですが、抽象的だった言葉の意味をより分かりやすくした意図が見えます。
「削減時間」だと、悪く言えば業務以外の時間も含めて削減しましたよ、という可能性が出てきてしまうため、そこを業務上の時間に絞ることで誤解のないようにした、ということだと思われます。
(3) 審査項目における計画面の大幅な変更
審査項目には「適格性」「技術面」「計画面」「政策面」や賃上げ計画の妥当性などがありますが、今回は「計画面」について大幅な変更がありました。
まず1つ目は、収益性・生産性に加え、賃金の向上が評価項目に追加されたことです。改訂前は賃金の項目がありませんでしたが、「事業計画が高い賃上げ目標を設定し、その実現可能性が高いかどうか」が新たに評価基準に追加されました。
補助金を受ける企業が賃上げを具体的にどの程度達成しようとするか、またその目標が現実的かどうかが重視されると思われます。物価高に加え、いまだ賃上げが想定以上に進んでいない状況を踏まえ、政府としても強く推していきたい部分なのだと考えられます。
次に2つ目として、省力化による会社全体へのシナジーの重要性も追加されています。
改訂前は省力化の成果や事業自体の遂行方法の妥当性について記載はあるものの、会社全体の影響に対する記載はありませんでした。
改訂後は部分的な省力化だけでなく会社全体にシナジーや成果をもたらす取り組みとすることの記載が追加され、「労働生産性」「一人当たり給与支給総額」「給与支給総額」の算出根拠としての妥当性も盛り込むよう要求されていることから、補助事業が会社全体に好影響を与えることで、1つ目の内容と関連して賃上げに絡めてほしいという想いが伝わってきます。
目線を合わせることでスムーズな申請に繋げる
中小企業省力化投資補助事業(一般型)は喫緊の課題である人手不足や効率化の促進などに向け、より柔軟で幅広い支援を目的としているものですが、その使いやすさがあるためのトラブルも予想されます。「この経費が使えると思ったのに使えなかった」「目標達成したのに達成してないと判断された」といったことが起こると誰も幸せにならない結果になってしまうので、直前ではありますが事前にこのような改訂があることは良かったと思います。
当然、事業者様や支援する私たちも公募要領や最新情報をよく確認し、事務局側と同じ目線で内容に沿った申請をすることが大事ですので、準備を怠らず進めていきましょう。
社会保険労務士法人プラットワークスでは、多数の企業様に補助金や助成金の支援を行っていることや、自ら補助金や助成金の採択・通過した実績を踏まえ、皆さまの支援をいたします。
また、2025年2月26日(水)に設備投資や事業拡大に向けた補助金を活用するための無料ライブセミナーを実施しますので、ぜひご参加ください。
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