もくじ
仕事と私生活の調和を意味する言葉として「ワークライフバランス」が浸透していますが、近年はワークライフバランスから派生して「ワークライフインテグレーション」という言葉が注目され、この考え方が導入されつつあります。
今回のコラムでは、ワークライフインテグレーションについての概要と、ワークライフバランスとの違いや、注目を集めている背景、活用のメリット・デメリットなどについて解説していきます。
ワークライフインテグレーションとは
「ワークライフインテグレーション(Work & Life Integration)」とは、仕事と私生活を分けずに、人生の一部としてとらえ、双方を充実させて人生を豊かにしていく考え方です。
仕事と私生活を分けてバランスをとっていく「ワークライフバランス」から発展した考え方です。
ワークライフバランスとの違い
従来の「ワークライフバランス」は「仕事と私生活を切り分けて調整する」ことを基本的な考え方としているのに対し、「ワークライフインテグレーション」は「仕事と私生活を統合・調和させて柔軟に調整する」考え方となります。
なお、ワークライフバランスでも「調和」という言葉が用いられていますが、その意図としては仕事と私生活を分けて考え、双方を両立するために調整することを、仕事と私生活の調和として「ワークライフバランス」と定義しています。
ワークライフバランスで対象となる従業員は子どもがいる女性社員や、家族を養う男性社員、要介護者のいる社員など限定された労働者が対象として考えられてきました。一方で、ワークライフインテグレーションではすべての労働者が対象となり、性別や婚姻、年齢などで区別されることはありません。
観点 |
ワークライフバランス |
ワークライフインテグレーション |
基本姿勢 |
仕事と私生活を分けて考える |
仕事と私生活を統合・調和させる |
働き方の特徴 |
勤務時間と私生活の明確な区別 |
時間や場所にとらわれず、仕事と私生活を統合する |
対象労働者 |
育児中の労働者、要介護者、扶養者のいる労働者など特定の労働者 |
全労働者 |
ワークライフインテグレーションが生まれた背景
ワークライフインテグレーションという言葉は2008年に経済同友会が発表した提言書『21世紀の新しい働き方』の中で提唱されました。
ワークライフバランスからワークライフインテグレーションへと変化していった背景としては、コロナ禍をきっかけにテレワークやフレックスタイム制など仕事と生活の境界があいまいとなる働き方が増えてきたこと、女性(特に子育て世代)の労働参加率の上昇、共働き世帯の増加に伴い、仕事の他に家事・育児・介護などの複数の役割を担う労働者が増加していること、副業などで新たなスキルを獲得したい人の増加などが挙げられます。
また、少子高齢化に伴い労働力人口が減少したことや、働き方改革に伴い一人当たりの労働時間への大幅な規制がされたことで、従来は「仕事をする」役割を中心に担っていた労働者が多くの業務量を負担していたものの、現在は「仕事をする」・「家事・育児をする」「介護をする」等の複数の役割を担う労働者が増加したことで、多様な働き方を希望する労働者を雇用し、業務量を分散して担う必要性がでてきています。そのため、今後はますます「ワークライフインテグレーション」の考え方が重視されることが予想されるでしょう。
※2008経済同友会「21世紀の新しい働き方」より
ワークライフインテグレーションのメリット・デメリット
ワークライフインテグレーションの例としては時間や場所にとらわれない・私生活と調和した働き方を指すので、一日の中に仕事と私生活の時間を柔軟に取り入れます。
柔軟な働き方ができるため、ストレスの軽減や生産性向上の他、育児・介護などで柔軟な勤務体系を希望する人材が活躍することができます。
一方で仕事と私生活の境界があいまいになることで、仕事が終わらない感覚になる、オンオフの切り替えが難しいなどのデメリットもあります。ワークライフインテグレーションの導入例としては以下が挙げられます。
・在宅勤務中に家事や育児の時間を確保しつつ、業務を再開する ・平日の昼間に病院へ行ったり買い物を済ませたりし、夜に業務を行う ・家族行事に参加した後にオンラインミーティングに参加する |
ワークライフインテグレーションの導入例
・在宅勤務制度
・フレックスタイム制
・短時間勤務制度
・自己啓発、副業許可制
・フリーアドレス制
・社員食堂、社内ジムの導入
今回のコラムでは、「ワークライフインテグレーション」の概要と近年その概念が重要視されてきている経緯、その活用例について解説しました。このように現代における労働者の働き方は多種多様で、「仕事と私生活を分けて考える」視点ではなく「仕事と生活との調和・融合」を重視した考え方が増えつつあるため、より労働者にとって働きやすい職場環境づくりもより複雑化しています。事業主は制度構築を行うにあたり、専門家のアドバイスを求めていくとよいでしょう。
弊法人は、「働く自由をすべての人に」という企業理念のもと、仕事も生活も人生の豊かさに影響するものとし、働くことの楽しさを思い出す組織づくりを目指してサービスを提供しています。
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人事労務アドバイザリー - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所
制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所
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Plattalks - 社会保険労務士法人 プラットワークス - 東京都千代田区・大阪市北区の社労士法人 (platworks.jp)