コラム

自由な働き方を実現する「デジタルノマド」とは?

近年、世界各国で「デジタルノマド」という働き方が注目され始めています。従来のノマドワーカーは、会社など特定の場所に縛られず、カフェやコワーキングスペースなどで仕事を行う者のことを指していました。

しかし、近年注目されている「デジタルノマド」では、海外のIT人材が自国を離れ、他国の様々な場所で仕事を行います。また、コロナ禍でリモートワークが広まり、必ずしも出社の必要性がなくなった者がデジタルノマドを選択する例も増えてきています。

政府も高度外国人材の誘致を目的として、デジタルノマドを念頭に置いたビザ(デジタルノマドビザ)の発行や、現在の観光ビザの要件緩和などの検討を進めています。

こうしたデジタルノマドをはじめとする高度外国人材の流入に伴い、企業も様々な対応をとる必要があります。

今回はこうしたデジタルノマドの受け入れに関わる諸問題について検討していきます。

デジタルノマド受け入れのメリット

高度外国人材の流入

デジタルノマドの受け入れによる国のメリットは、高度な専門技術・知識を持った外国人がやってくることです。一時的な滞在をきっかけに自国に定着するようになることで、優秀な人材の確保につながります。

経済への貢献や税収が見込めること

デジタルノマドは、ビザ発行に当たり、最低収入の要件が定められている場合が多く高所得者であることが多いため、滞在中の消費が期待でき、日本経済への貢献や税収が見込めます。

 

主なデジタルノマド受け入れ国の状況

デジタルノマドを受け入れている国のうち、主なデジタルノマドビザ発行国を比較すると以下の通りです。※1

国名 滞在可能月数(月) 個人負担額(ドル) 所得税の納税義務 最低収入要件 医療保険の証明義務
オーストラリア 12 347
スリランカ 12 500
UAE 12 611
コスタリカ 24 550
メキシコ 12 45
アイスランド 6 60
エストニア 12 100
ギリシャ 12 88
クロアチア 12 155
チェコ 12 163
ドイツ 36 100
ノルウェー 48 630
ポルトガル 12 163
ルーマニア 12 126

 

 

デジタルノマドビザの期間

では、日本でデジタルノマドビザの発行が始まった場合、ビザの滞在可能期間はどれぐらいになると考えられるでしょうか。

現在の制度では、観光ビザの有効期間は3ヶ月とされています。一方で就労ビザは、携わる業務によって異なりますが、大体が5年・3年・1年・3ヶ月のうちから決まります。

デジタルノマドビザは、観光ビザと就労ビザの中間とも考えられるため、観光ビザより長く、就労ビザより短く設定されることが考えられます。

上記のデジタルノマド受け入れ国の比較表で示した通り、多くの国が1年間(12ヶ月)としていることを見ると、日本で本制度が開始した場合も1年となると予想されます。

 

デジタルノマド受け入れの課題

デジタルノマドの受け入れには多くのメリットがある一方で、課題が残されているのも事実です。ここでは、デジタルノマドの受け入れに関する課題を解説します。

デジタルノマドには労働基準法が適用されるか

デジタルノマドには様々なタイプが考えられます。そのため、労働基準法の適用に際してもデジタルノマドのタイプによって異なります。

  • フリーランスや個人事業主

 フリーランスや個人事業主のデジタルノマドの場合は、日本人のフリーランスや個人事業主に労働基準法が適用されないのと同じで、労働基準法は適用されないと考えられます。

  • 海外に本社がある企業に所属し、日本国内の支店や営業所に配属されている場合

海外に本社がある企業でも、事業所単位で見て、日本国内の支店や営業所に配属されている場合には、日本の労働基準法が適用されます。したがって、海外本社に所属しているものの、日本支店等に配属されデジタルノマドとして働いている場合、労働基準法が適用されると考えられるでしょう(ただし、テレワーカーなどと同じ扱いになると考えられます)。

  • 海外企業に所属し、デジタルノマドとして日本に来ている場合

 海外の企業に所属し、デジタルノマドとして日本に来ている場合、本国の企業の従業員とみなされるので、日本の労働基準法は適用されないでしょう。

 

デジタルノマドは、社会保険の徴収の対象となるか

前述の通り、ほとんどの国が受け入れ時に医療保険への加入を義務付けています。実際、日本滞在中に事故に合ったり、病気になる可能性は考えられます。そのため、健康保険等への加入は義務付けることが現実的であると考えられます。

ただし、現在の健康保険法や国民健康保険法では、こうしたデジタルノマドに直接的に適用できる規定が存在しないため、法改正などの対応が必要であると考えられます。

一方で、年金制度については、各国との社会保障協定によって処理されるか、対象にならないと考えられます。デジタルノマドは、それほど長期的に滞在するわけではないので、年金制度に加入する必要性は薄いと考えられるからです。

 

受け入れ体制

さらに、デジタルノマドの誘致に当たっては、その受け入れ体制を整えなければならないという問題があります。

デジタルノマドの滞在先として、ホテルや民泊などが考えられますが、こうした施設は数ヶ月に及ぶ滞在には向かないでしょう。

こうした問題に対して、ポルトガルのマデイラ諸島では、「デジタルノマド村」というコミュニティを作ることでデジタルノマドの誘致を進めています。デジタルノマド村では、滞在のための施設だけでなく、コワーキングスペースの設置やインターネットの高速通信環境の整備なども行っています。さらに、デジタルノマド同士のネットワークを形成できる環境や観光プランなども用意することでデジタルノマドにとって魅力的な環境を作っています。

日本でデジタルノマドを受け入れる場合、受け入れ体制の整備が必要となります。現状、滞在施設の問題だけでなく、治安の問題、文化や言語の違いなど、多くの課題が残されている状況にあります。

 

以上のようにデジタルノマドを受け入れるに当たっては、まだ多くの課題が残されています。しかし、デジタルノマドの受け入れは近いうちに実現すると考えられるので、企業は早い段階から外国人材の受け入れなど検討を始める必要があります。

プラットワークスでは、外国人材活用のコンサルティングをはじめ就労ビザ申請支援サービス、地方自治体と連携したサービス、地方創生事業のプランニングなど、幅広いサービスを提供しています。国際労務のご相談は、ぜひプラットワークスにお問合せください。

 

 

※1 プリトラージ・チョードゥリー「『デジタルノマド』のためのビザが地域経済を活性化させる」(HBR 2022.7.20, https://dhbr.diamond.jp/articles/-/8727)をもとに編集。

※2 本コラムに使用した写真は、visit madeira (https://visitmadeira.com/pt/)より引用。

 

                
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