コラム

2024年問題③_トラック運転者の「改善基準告示」改正 ~36協定上限規制の猶予期間終了まであと334日!~

シリーズ2024年問題_プラットワークスのコンサルタントと元労働基準監督官である社労士がわかりやすく解説していきます
2023年5月3日掲載

36協定上限規制の猶予期間終了まで1年を切りました。

自動車運転の業務に従事する方は、別途、運転時間や勤務時間インターバルについて定めた「改善基準告示」を
遵守する必要があります。

今回のコラムではトラック運転者の改善基準告示の見直しポイントについて簡単にまとめていきます。

ぜひ最後までご覧ください。

 

2024年4月以降の時間外労働の上限規制


○2024年4月以降、自動車運転者は、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。
○一般の労働者と異なり、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする規制及び、
 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする規制は適用されません。


※自動車運転の業務に従事する労働者は、別途、「改善基準告示」を遵守する必要があります。

 

改善基準告示とは

改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことを言い、
自動車運転者の長時間労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保のみならず、国民の安全確保の観点からも重要であることから、
トラック、バス、ハイヤー・タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、
休息期間について基準等が設けられています。

改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた平成9年以降、改正は行われていませんでしたが、
令和4年12月に自動車運転者の健康確保等の観点により見直しが行われ、拘束時間の上限や休息期間等が改正されました(令和6年4月1日施行)。

 

「改善基準告示」制定の経緯

                                             

2024年4月1日施行「改善基準告示」見直しのポイント

 

                                 図解の引用元:自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト

 

 

 【時間の考え方】
  ◆「1日」とは
    改善基準告示における運転者の「1 日」は「始業時刻から起算した 24 時間」です。
  
  ◆拘束時間のダブルカウント
   「1 日」は始業時刻からの 24 時間ですので、例えば月曜日の始業が 8 時で、
   翌火 曜日の始業が 6 時の場合は月曜日の「1 日」は月曜日 8 時~火曜日 8 時となり、火 曜日の「1 日」は火曜日 6 時~水曜日 6 時となります。 
   ここで火曜日 6 時~火曜日 8 時の 2 時間は月曜日と火曜日どちらにも拘束時間としてカウントされます。
   これ は 1 日の拘束時間を見るときに大事なポイントとなります。一方、1 か月の拘束時 間を合計する場合はダブルカウントされません。
  

   休息期間の概念は労働基準法にはありません。
   休息期間とは勤務と次の勤務との間にあって休息期間の直前の拘束時間における疲労の回復を図るとともに、
   睡眠時間を含む労働者の生活時間として、その処分は労働者の全く自由な判断にゆだねられる時間です。
  (自動車運転者の労務改善基準の解説労働調査会出版局編より)

 

トラック運転者に適用される改善基準告示の改正概要【連続運転時間等】

現行 改正後(2024年4月1日~)

運転時間

 2日平均1日当たり 9時間以内  
 2週平均1週当たり 44時間以内

 現行通り

 

連続運転時間等

 4時間以内  
 (運転の中断は、1回連続10分以内、合計30分以上)
 4時間以内  
 運転の中断時には、原則として休憩を与える
 (1回概ね連続10分以上、合計30分以上)
予期し得ない事象

 ―

 

 予期し得ない事象への対応時間を、1日の拘束時間 、運転時間(2日平均) 
 及び 連続運転時間
から除くことができる(※1,2)
 勤務終了後、通常通り休息期間(継続11時間以上を基本、9時間を下回らない)を与える

※1
 予期し得ない事象とは、次の事象をいう。
 ・運転中に乗務している車両が予期せず故障したこと 
 ・運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航したこと
 ・ 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたこと、又は道路が渋滞したこと
 ・異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となったこと

※2
 運転日報上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のHP情報等)が必要。

 

トラック運転者に適用される改善基準告示の改正概要【特例】

現行 改正後(2024年4月1日~)
分割休息特例

 継続8時間以上の休息期間を与えることが困難な場合
 ・分割休息は1回4時間以上
 ・休息期間の合計は、10時間以上
 ・一定期間(2か月程度)における勤務回数の2分の1が限度

 継続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合
 ・分割休息は1回時間以上
 ・休息期間の合計は、
   2分割:10時間以上 3分割:12時間時間以上
 ・3分割が連続しないよう努める
 ・一定期間(1か月程度)における勤務回数の2分の1が限度

2人乗務特例

 車両内に身体を伸ばして休息できる設備がある場合、
 拘束時間を20時間まで延長し、
 休息期間を4時間まで短縮可

 現行の内容に次の特例を追加
 【例外】設備(車両内ベッド)が※の要件を満たす場合、次のとおり、拘束時間を延長可
 ・拘束時間を24時間まで延長可
  (ただし、運行終了後、継続11時間以上の休息期間を与えることが必要)
 ・さらに、8時間以上の仮眠時間を与える場合、拘束時間を28時間まで延長可

 ※車両内ベッドが、長さ198㎝以上、かつ、幅80㎝以上の連続した平面であり、
  かつ、クッション材等により走行中の路面等からの衝撃が緩和されるものであること。

隔日勤務特例

 2暦日の拘束時間は21時間
 休息期間は 継続20時間以上
 【例外】仮眠施設で夜間4時間以上の仮眠を与える場合、
 拘束24時間まで延長可(2週間に3回まで)

 現行通り
フェリー特例

 ・フェリー乗船時間は、原則として休息期間
  (減算後の休息期間は、フェリー下船時刻から
  勤務終了時刻までの間の時間の2分の1を
  下回ってはならない。)
 ・フェリー乗船時間が8時間を超える場合、
  原則としてフェリー下船時刻から
  次の勤務が開始される。

 現行通り

 

今回のコラムではトラック運転者の改善基準告示の見直しポイントについて簡単にまとめてみましたが、
端的に表現すると今までのような働き方、残業ありきの働き方が出来なくなるということです。

労働者側の目線で考えた時には、どうでしょうか。
今までのような時間外労働ができなくなり、給与が減ることを不安視されている方は少なくないと思います。
当然、現状の生活水準維持のために転職などを視野に入れる方も増えてくるでしょう。

そこでプラットワークスでは企業の皆様へ、改善基準告示の遵守とともに、上記の課題に対応するための賃金制度の構築をご提案しています。

2024年4月1日以降の改善基準告示並びに36協定の上限規制の本格適用に向けて、従業員の方が安心して働き続けられるような賃金体系の見直しを行いませんか?

プラットワークスのコンサルティングでは、これまで運用されてきた現行制度をしっかりヒアリングし、貴社の理念や事業方針に限りなく沿う形で、綿密に制度設計を行います。

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