コラム

「年収の壁」の撤廃に向けて企業はどんな対応をすればいいの?-キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」が新設!

年収がある一定の金額を超えると税法上の優遇や社会保険法上の扶養のメリットが受けられなくなる、いわゆる「年収の壁」の問題があります。

パート・アルバイトとして働く方も103万円や130万円など年収の壁を意識して働くようになり、勤務時間を調整したり、時給を上げられると困ってしまうといった問題が生じています。一方で経営者にとってもパート・アルバイトが年末になると調整のためシフトに入らなくなる、など労使双方にとって悩みの種となっていました。

このたび、政府が社会保険法上の年収の壁(106万円・130万円)の実質的な撤廃に向けた施策を打ち出しました。

今回は、そうした「年収の壁」に関して、企業側の対応も含め解説していきます。

 

そもそも「年収の壁」とは

年収の壁とは、年収がある一定の金額を超えると、税法や社会保険法上の控除などが受けられなくなる境目を言います。この壁を超えると、結果として手取りが大きく減ってしまうために、その金額を超えないように働くことになります。

年収の壁には、以下の5種類があります。

①100万円の壁

 これを超えると住民税がかかるようになります。

②103万円の壁

 これを超えると所得税の配偶者控除が受けられなくなります。

③106万円の壁

 これを超えると比較的規模の大きい企業(従業員数101人以上)で、社会保険の扶養に入れなくなり、健康保険や厚生年金の納付義務が発生します。

④130万円の壁

 これを超えると中小企業含め社会保険の扶養に入れなくなり、健康保険や厚生年金の納付義務が発生します。

⑤150万円の壁

 これを超えると所得税の配偶者特別控除の控除額が段階的に減っていきます。

 

「年収の壁」の撤廃の内容は?

 今回、政府が打ち出した年収の壁の撤廃のための施策は、上記のうち、社会保険に関わる部分、すなわち106万円の壁及び130万円の壁を対象としています。

 では、その内容はどのようなものでしょうか。厚生労働省によると、以下のような施策を挙げています。

 

①キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設(106万円の壁への対応)

 壁を越えて働いたことにより社会保険の扶養から外れ手取りが減る場合、その手取りを減らさないようにする取組を実施した企業に対して助成金が支給されます。「手取りを減らさないようにする取組」には、手取りとして減った分の手当の支給、賃上げによる基本給の増額、週所定労働時間の延長、などが挙げられています。

※厚生労働省ホームページ「年収の壁・支援強化パッケージ」より

キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の金額

(1)手当等支給メニュー

要件 1人当たりの助成額
1年目 賃金の15%以上分を手当として追加で支給 10万円×26ヵ月ごと、1年で20万円)
2年目

賃金の15%以上分を手当として追加で支給、

かつ、3年目以降は③を実施する

10万円×26ヵ月ごと、1年で20万円)
3年目 賃金の18%以上を増額(労働時間の延長との組み合わせも可) 10万円(6ヵ月)

 

(2)労働時間延長メニュー

週所定労働時間の延長数 賃金の増額率 1人当たりの助成額
4時間以上 30万円(6ヵ月)
3時間以上 4時間未満 5%以上
2時間以上 3時間未満 10%以上
1時間以上 2時間未満 15%以上

※大企業の場合は、上記の助成額の3/4の額となります。

1年目は(1)、2年目は(2)で助成を受けることが可能です。

※申請は、各取組を6ヵ月間継続した後2ヵ月以内に行うこととされています。

 

②被扶養者認定の継続(130万円の壁への対応)

パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に残業が発生した等の事情により収入が一時的に上がった場合、事業主がその旨を証明すると、扶養から外れず、被扶養者認定が継続されます。

 

企業側の対応

「年収の壁」撤廃に向けて、企業側も対応が必要になってきます。

従業員数100人以下の企業では、130万円の壁への対処として、繁忙期における対象労働者の残業時間の計算や被扶養者認定の継続のための証明手続きなどの作業が発生します。

従業員数101人以上の規模の企業では、106万円の壁への対処に向けて、「手取りを減らさないようにする取組」を実施する必要があります。そのために、対象者の決定や、最適な取組の選択、助成金申請のための資料の整備など、様々な作業が発生します。

企業においても様々な対応が必要になるため、早い段階から準備を進めるのが好ましいでしょう。

なお、本コラムでご紹介したキャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」は、2023年10月20日から開始し、同年10月1日にさかのぼって適用が可能です。過去に解雇があった場合に助成金が受けられなくなるなどの制限(いわゆる「解雇要件」)はないので、多くの企業に活用していただく道が開かれています。

 

 

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年収の壁撤廃を見据えた取組について、ぜひ一度プラットワークスへご相談ください。

 

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