コラム

労災保険の対象者拡大について-フリーランスの全業種が対象に

厚生労働省が労災保険に加入できるフリーランスの対象業種を全業種に拡大する方針を示しました。

労災保険は、原則として企業に雇用される労働者の業務上の災害や通勤中の災害に対して、その補償をするものです。

そのため、企業に雇用されていないフリーランスは、労災保険に加入できず、例外的に限られた業種の者のみが特別に加入できる状況でした。

しかし、新たな仕事が増えてきていることや社会経済情勢が変化していることを踏まえて、現代に合った制度とするため、今回の改革でフリーランスの全業種を労災保険の対象とする見通しです。

 

労災保険対象者拡大に当たっての議論

この加入対象の拡大により、約270万人のフリーランスが加入対象となると推計されています。その一方で、この改革には議論すべき問題も残されています。

その一つが、保険料負担の問題です。

企業に雇用されている労働者の労災保険料は、企業が全額負担しています。

個人事業主であるフリーランスが労災保険に加入する場合、自身で保険料を全額負担することが考えられるでしょう。

しかしその一方で、全国の企業がフリーランス分の保険料も実質的に負担し、フリーランスからの保険料徴収をなくす(あるいは減額する)といった立て付けも考えられます。

 

例えば、ウーバーイーツの配達員やAmazonの配達員といった特定の企業から仕事を請け負って働くなど、その企業との実質的な使用従属関係が認められるフリーランスが存在します。

こうしたフリーランスは、フランスなどの諸外国のように企業が保険料を全額負担する場合や、企業とフリーランスとで一部ずつ負担する場合などが考えられます。一方、独立性の高いフリーランスは、現行の特別加入制度の対象者として扱うなどが考えられます。

 

多くの議論が残されてはいるものの、フリーランス・個人事業主がこれまで以上に労災保険に加入しやすくなることは確実です。

自身の収入の状況等も勘案して、労災保険への加入をするか否か、早い段階から検討しましょう。

 

                          
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