コラム

100人超企業の人事労務担当者必見!男性育休、取得目標の設定義務化

厚生労働省は、次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)の改正案において、従業員数100人超の企業に対し、行動計画策定の中で男性による育児休業の取得率について目標値を設定し、公表することを義務付ける方針を決めました。

この改正案は今の通常国会に提出され、成立した場合2025年4月から施行開始となり、約5万社の企業が義務の対象となります。

今回のコラムでは、この義務化の背景と、改正案が成立することで考えられる状況等について深掘りしながら、改めて育児と仕事の両立支援について考えていきたいと思います。

 

【はじめに ~「次世代育成支援対策推進法」(次世代法)について~】

次世代を担う子どもを養育する家庭を社会全体で支援すべく、計画的な取組の実施を地方自治体及び企業に促すことを目的として立法されたのが、次世代法です。

2003年に成立し、2005年に施行開始となりました。

この法律が案として審議され、そして立法された当時(2002年~2003年)の背景として、「少子化対策プラスワン」が政府より打ち出されたことが挙げられます。これによって日本の子育て支援は、保育関連の施策を中心にサポートする方針から、企業による育児と仕事の両立を目的とした柔軟な働き方の実現や地域社会での育児支援等、総合的な取組によって子育て支援を行う形へと移り変わっていきました。

この動きの中で、次世代法を立法したことによって企業及び地方自治体の育児環境整備に関して具体性をもたらし、次代を担う子どもたちが健やかに生まれ、育っていく社会の実現を目指したのです。

 

【現行の制度とその歴史】

一般事業主行動計画の策定義務〔次世代法第12条〕

常時雇用する労働者の数が100人を超える企業について、一般事業主行動計画の策定を義務付ける制度です。

一般事業主行動計画には、①計画期間、②目標、③実施する計画内容とその実施時期の3点を明示する必要があります。

元々次世代法が成立した当時は、行動計画策定における就業規則改定やその諸手続き等事業主の負担を鑑み、常時雇用する労働者が300人を超える企業に対して一般事業主行動計画の策定を義務付けていました。

しかし2009年、少子化問題深刻化に伴い法改正され、行動計画策定義務対象を常時雇用する労働者が100人を超える企業までに拡大。より多くの企業とその労働者を対象範囲に入れることで育児環境の整備を促し、くるみん認定の周知促進や男性育児休業取得率の向上等を目指しました。

 

【今回の改正とその背景】

常時雇用する労働者が100人を超える企業について、

一般事業主行動計画策定時に男性の育児休業取得率の目標値設定とその公表を新たに義務付けます。

この改正の理由としては、大きく3つあります。

まず1つは今後の次世代育成支援において、女性については育児をしながら就業を継続しキャリア形成する傾向が見受けられる中、育児負担が女性に偏っている現状を踏まえ、男女共に子育てと仕事を両立できる職場環境の形成が重要視されているからです。

2つめは、両立支援制度については法律で厳密に利用要件が定められたものもあれば事業主によって法律を上回る内容で社内制度を作ることが可能な部分もある中で、企業ごとで次世代育成環境の形成についての取り組みに濃淡があることが見受けられたからです。

3つ目は、一般事業主行動計画については行動計画指針上では数値目標の設定が望ましいとされていますが、指針ではなく法律上の仕組みの中で定量的目標を立てるよう規定することが必要とされたことです。

上記3つの理由に基づき、今回の改正案が生まれました。

 

【似ている制度とその改正案】

育児休業取得状況の公表〔育児・介護休業法第22条の2〕

20234月から施行開始したばかりの新しい制度で、常時雇用する労働者の数が1,000人を超える事業主に対し、男性の育児休業取得率について毎年少なくとも1回公表することを義務付けたものです。

20237月、厚生労働省はこの制度について、公表義務の対象となる企業の規模を1,000人超から300人超へと拡大する方針を明らかにしています。

なお、改正案は2024年の通常国会にて審議され、成立した場合、2025年4月より施行開始となる予定です。

今回の次世代法改正案と混同して認識しないよう、注意する必要があります。

 

図:男性育児休業取得率に関する義務規定についての比較表

 

【今後の展望】

今回の改正法案が成立することに伴い、男性の育児休業取得率目標設定とその公表が義務となる企業が大幅に増え、育児休業取得に対する関心度がより高まることが予想されます。育児休業取得状況の開示は、学生の就職活動や、転職者の転職活動における企業分析でも役立つでしょう。

しかしながら、男性正社員については、職場の雰囲気や上司等周囲からの評価を気にしてしまい、育児休業を取得しないことを選ぶ傾向があるのも事実です(株式会社日本能率協会総合研究所、「仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」(厚生労働省委託事業)、2022年度)。こうした状況から、企業内で育児休業によって欠けた人員分のフォローが難しく、育児休業取得促進の取り組みがかえって企業の大きな負担になっている状況も想定されます。結果的に、1日のみ育児休業を取得し、実態として男性が育児に携わりきれない、といったいわゆる「なんちゃって育休」が発生し、男性の育児休業取得率は向上するものの、女性に育児負担が偏る状況が改善されない場合も考えられます。

また、前述の調査における育児休業を利用しない理由として、「収入を減らしたくなかったから」と回答したケースが最多であったことを踏まえると、育児をする労働者の中で最も強いニーズは経済的援助である可能性もうかがえます。

東京都では「育業応援奨励金」と題し男性の育児休業や女性の就業継続を支援する都内企業に対して奨励金制度を設立しており、こうした自治体による育児休業を支援する企業あるいは育児に取り組む労働者に対する経済的援助の必要性が高まってくることも考えられます。

今後については、労働力や経済的な側面からのフォローを考慮しつつ、質を伴う育児休業取得の実現を目指す動きが求められるでしょう。

 

弊法人では、一般事業主行動計画策定のサポートや、それに関連するサービスとして、えるぼし・くるみん認定の支援を行っており、特に今回の改正案に該当する従業員数100300人規模の企業様への支援経験が豊富です。

一般事業主行動計画策定やえるぼし・くるみん認定に関してお悩み等ございましたら、是非一度弊法人へお問い合わせください。

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【関連コラム】

・男性育児休業取得率の公表義務化について → こちら からご覧ください。

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