育児・介護休業法の改正により、2023年4月から一定規模以上の企業に対し、男性の育児休業取得率等の公表が義務化されました。
今回は、公表義務化の対象、内容、詳細などについて、社会保険労務士が解説していきたいと思います。
そもそも男性も女性と同様に育児介護休業を取得することができるの?
育児休業は、性別に関係なく取得することができます。女性の場合、産後8週間の産前産後休業を取得した後に育児休業となりますが、男性の場合、子の出産予定日から育児休業を取得できます。
育児休業は、原則、子どもが1歳になるまでの間ですが、「パパ・ママ育休プラス」という制度により、両親がともに育児休業を取得することで、子どもが1歳2カ月に達するまで取得することができます。
また、男性の場合、育児休業とは別に「産後パパ育休(出生時育児休業)」の制度を活用することで、子どもが生まれた日から8週間以内に4週間の休業(出生時育児休業)を取得することができます。
公表義務化の対象
公表義務化の対象となるのは、常時雇用する労働者が1,000人を超える(1,001人以上)の企業です。
ここで言う「常時雇用する労働者」とは、期間の定めなく雇用されている者、過去1年以上引き続き雇用されている者、雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者を指します。
公表の内容
①育児休業等の取得割合
「育児休業等をした男性労働者数/配偶者が出産した男性労働者数」
②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
「(育児休業等をした男性労働者数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者数)/配偶者が出産した男性労働者数」
※ここで言う「育児休業等」には、育児・介護休業法に規定する「産後パパ育休(出生時育児休業)」も含まれます。
※「育児休業等を取得した男性労働者」と「小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者」が重複している場合、それが同一の子について取得した者である場合は、1人としてカウントします。
具体例
上の計算式をもとに、具体的に計算してみましょう。
事例
全従業員数1,500人のA社では、直近の事業年度で、配偶者が出産した男性労働者が50人、育児休業等をした男性労働者が5人、育児休業等はしていないが就業規則に規定がある小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者が3人いた。ただし、育児目的休暇を利用した男性労働者3人のうち1人は前述の「育児休業等をした男性労働者」の5人のうちの1人でもある。
①育児休業等の取得割合
育児休業等をした男性労働者数/配偶者が出産した男性労働者数
=5人/50人=0.1=10%
②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
(育児休業等をした男性労働者数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者数)/配偶者が出産した男性労働者数
=(5人+3人-1人)/50人=0.14=14%
注意すべきポイント
- 休業は1日でも取得したものとみなします。
- 分割して取得した場合、それが同一の子について取得した者は、1人としてカウントします。
-
事業年度をまたいで育児休業を取得した場合や、分割して取得した際に1回目と2回目が異なる事業年度に属する場合には、育児休業を開始した日が属する事業年度に取得したものとみなします。
-
配偶者が出産した日と育児休業を取得した日が異なる場合でも、育児休業を開始した日が属する事業年度に取得したものとみなします。
例1:決算期が3月の会社で育児休業を分割して取得し、2023年3月と2023年4月にそれぞれ取得した場合
→2022年4月~2023年3月の事業年度に取得したものとみなします。
例2:決算期が3月の会社で、2023年2月に配偶者が出産し、2023年4月に育児休業を取得した場合
→2023年4月~2024年3月の事業年度に取得したものとみなします。
公表期限
公表期限は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度の状況を、当該直前の事業年の終了後、おおむね3ヵ月以内とされています。
以下に、期限の目安を表にまとめたので参考にしてみてください。
決算期 | 初回公表期限 | 決算期 | 初回公表期限 |
3月 | 2023年6月末 | 9月 | 2023年12月末 |
4月 | 2023年7月末 | 10月 | 2024年1月末 |
5月 | 2023年8月末 | 11月 | 2024年2月末 |
6月 | 2023年9月末 | 12月 | 2024年3月末 |
7月 | 2023年10月末 | 1月 | 2024年4月末 |
8月 | 2023年11月末 | 2月 | 2024年5月末 |
**関連コラム**
100人超企業の人事労務担当者必見!男性育休、取得目標の設定義務化