コラム

2022年7月から始まった「男女の賃金の差異」の算出方法・情報公表について解説します

昨今の社会情勢において、重要視されている “女性活躍” 。
政府は企業に対し女性活躍に関する情報について公表するよう義務付ける法改正を行っています。
20227月には、 男女賃金差異の公表 が義務化されました。

 

しかし一方で、企業で人事労務を担当する方の中には、

「自分の会社が公表義務の対象となっているのか分からない」

「公表するための計算手順が分からない」

といった悩みを抱える場合もあるでしょう。

 

今回のコラムでは、改めて男女賃金差異の公表について確認し、女性活躍に関する情報公表についての理解を深めていきたいと思います。

 

(1)男女賃金差異の公表義務の内容

[ 義務となる対象 ]

常時雇用する労働者が301人以上の企業

[ 公表する内容 ]

 正規・非正規・全ての労働者の区分ごとに算出し、公表します。

A】 正規雇用  の男女賃金差異
B非正規雇用  の男女賃金差異
C全ての労働者 の男女賃金差異

[ 公表時期 ]

 各事業年度が終了し、新たな事業年度が開始した後おおむね3ヶ月以内に公表

 

(2)男女賃金差異の公表が義務付けられた経緯

男女賃金差異の公表が義務付けられた背景として、他の先進国と比較して日本の男女間における賃金格差が大きい状況であることが挙げられます。

日本の男女間における賃金格差は縮小傾向にありますが、他の先進国と比べると未だその差は開いており、
格差の要因については役職の違いや勤続年数の違いが大きな要因となっていました(厚生労働省、第11回「変化する賃金・雇用制度の下における男女間賃金格差に関する研究会」報告、2010年)。

上記に伴い、政府は女性活躍推進の取り組みを進め、20227月施行の法改正によって、男女賃金差異の公表については、公表義務の対象を常時雇用労働者301人以上の企業までに拡大しました。
これにより、企業の就労環境の改善及び賃金格差の改善を狙い、男女賃金格差の縮小を図ったのです。

 

(3)男女賃金差異の算出方法

算出方法については下表の通りです。

※厚生労働省「女性活躍推進法に基づく男女の賃金の差異の情報公表について」より作成

 

「総賃金」や「人員数」、雇用区分の定義については厚生労働省の資料で詳細な説明があります。

厚生労働省「男女の賃金の差異の算出及び公表の方法について」

 

(4)情報公表の義務について

今回取り上げた男女賃金差異の公表は、
女性活躍推進法により定められた 女性活躍に関する情報公表項目 の1つです。

男女賃金差異のほかにも、「労働者に占める女性労働者の割合」や「男女の平均勤続年数の差異」など、様々な公表項目があり、年に1回公表することが義務付けられています。

女性活躍に関する情報公表における公表内容については、企業規模に応じて以下の2通りで分かれています。

 

《 情報公表項目数について 》

1. 労働者が301人以上の企業様

[A]女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績 項目を1つ選択

男女の賃金の差異
(必須)
[B]職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績 項目を1つ選択

2. 労働者が101人以上300人未満の企業様

[A]女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績
または 項目を1つ選択
[B]職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

 

[A]
女性労働者に対する
職業生活に関する機会の提供に関する実績
[B]
職業生活と家庭生活との
両立に資する雇用環境の整備に関する実績
①採用した労働者に占める女性労働者の割合
②男女別の採用における競争倍率
③労働者に占める女性労働者の割合
④係⾧級にある者に占める女性労働者の割合
⑤管理職に占める女性労働者の割合
⑥役員に占める女性の割合
⑦男女別の職種または雇用形態の転換実績
⑧男女別の再雇用または中途採用の実績
⑨男女の賃金の差異

①男女の平均継続勤務年数の差異
②10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された
 労働者の男女別の継続雇用割合
③男女別の育児休業取得率
④労働者の一月当たりの平均残業時間
⑤雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
⑥有給休暇取得率
⑦雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

 

※厚生労働省「女性の活躍に関する『情報公表』が変わります(周知リーフレット)」より作成

 

また、女性活躍に関してえるぼし認定を取得されている企業はえるぼし認定評価項目の情報についても公表が義務付けられています。

 

(5)最後に

男女賃金差異の公表をはじめ、女性活躍に関する情報公表項目は計16項目あり、公表の義務対象となる場合、その中から項目を選択し公表します。
それに伴い、情報を公表するにあたっては、社内にて必要な情報を整理し、決められた計算方法に則って集計する等、多くの労力を要します。

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