コラム

脳・心臓疾患の労災認定基準①~脳心臓疾患の労災認定件数と認定までの流れ~

以前のコラムで精神障害の労災認定について解説しました。今回は精神障害のほか過労死等の原因となりうる脳・心臓疾患の労災認定についても学んでいきましょう。脳梗塞などの脳血管疾患、心筋梗塞などの心疾患は加齢・生活習慣・生活環境などの日常生活や遺伝等により発症する疾患ですが、仕事が主な原因で発症する場合があります。厚生労働省の調査によると、令和5年度に労災認定された脳・心臓疾患の支給決定件数は216にのぼり、依然として少なくない件数になります。

また、厚生労働省では、労働者に発病した脳・心臓疾患のうち、仕事が主な原因と認められる(労災認定)判断の基準として「脳・心臓疾患の認定基準」を定めています。この認定基準は20年ぶりに令和39月に改正されました。労災の認定基準について振り返りながら、脳・心臓疾患の労災認定はどのようにしてなされるのか詳しく見ていきましょう。

 

                 ※厚生労働省「脳・心臓疾患の請求、決定及び支給決定件数の推移」

労災(労働災害)とその認定基準

「労災(労働災害)」労働者が業務遂行中に業務に起因して受けた「業務上の災害」のことで、業務上の負傷、業務 上の疾病及び死亡をいい、今回は脳・心臓疾患の労災の認定について学んでいきます。

以前解説した通り、労災が認定されるには「業務遂行性」「業務起因性」という2つの認定基準を満たす必要があります。

業務遂行性:労働者が労働契約に基づき事業主の支配・管理下にあることをいいます。これは、事故や病気が「業務中に起こったかどうか」という観点のことで、労働者が事業主の指揮命令下で業務を遂行している最中に発生した事故や疾病であるかを判断します。具体的には、仕事の内容に直接関係する作業中や、通勤中・休憩中であっても、業務の一環として認められる場合もあります。

業務起因性:業務と傷病の間に一定の因果関係があることをいいます。これは、事故や病気が「業務そのものが原因で起こったかどうか」という観点のことで、業務の内容や環境が直接的な原因であるかどうかを判断します。たとえば、業務のストレスや過労が原因で心臓発作が起こった場合や、化学物質を扱う仕事で有害物質に長期間さらされた結果として疾病が発生した場合が該当します。

脳・心臓疾患の労災の認定要件

脳・心臓疾患の労災は以下の対象の疾病を発症していることが前提条件となります。

また、以下の3ついずれかの「業務による明らかな過重負荷」をうけたことが認められる場合に認定されます。

1)長期間の過重業務:発症前長期間にわたり、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労した

2)短期間の過重業務:発症に近接した時期において特に過重な業務に就労した

3)異常な出来事:発症直前から前日までにおいて、発生状態を時間的および場所的に的確にしうる異常な出来事に遭遇した

 

                   ※厚生労働省「精神障害の労災認定フローチャート」

 

今回は脳・心臓疾患の労災認定についての概要について解説しました。次回のコラムでは各認定要件について、詳しく見ていきましょう。

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