近年、企業の経営に対しては、働き方改革や賃上げ、さらなる生産性の向上が求められるなど激しい環境変化に対応しなければならない状況の中、資金調達の手段として補助金がありますが、今回は「ものづくり補助金」ついて中小企業診断士が解説いたします。
2024年分の申請は終了しましたが、今後公募が開始した場合に備え制度の内容を理解し適切に活用することで、持続的で健全な経営に繋げていきましょう。
ものづくり補助金事業の背景・目的
ものづくり補助金は、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資・システム構築を支援する目的として、経済産業省 中小企業庁が進める「生産性革命推進事業」の一環として提供されている補助金制度です。
※生産性革命推進事業とは、中小企業や小規模事業が冒頭の環境変化や成長のための設備投資などを加速するため、ものづくり補助金の他、IT補助金、持続化補助金とともに国として支援していく事業です。
申請枠と類型
ものづくり補助金には2013年から開始し、その時に応じた申請枠や類型が設定されており、直近の2024年では「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の3つが設けられています。また、「製品・サービス高付加価値化枠」は「通常型」と「成長分野進出類型」の2つの類型に別れ、それぞれ要件や上限金額、補助率が異なるので注意が必要です。
<ものづくり補助金 公募要領(18次締切分)概要より引用>
なお、公募回によっては特定の枠のみの募集になるケースや、上限引上げの特例、追加要件が出ることもあるので、内容を確認してスムーズな申請に繋げましょう。
<補助金活用イメージ>
以下は一例ですが、近年では先端設備やフルスクラッチ(既存のものを使わず、新たに製造や開発を新規に行うこと)およびパッケージシステム開発、AI機器の導入による採択事例が増えています。
・省力化(オーダーメイド)枠を活用し、3Dカメラ技術を導入しAIが自動で商品棚の在庫量を可視化することで店舗の人手不足を解消した。
・製品・サービス高付加価値化枠を活用し、マシニングセンタを導入、業務効率化と生産性向上に繋げた。
・グローバル枠を活用し、海外事業者向けに特注品を生産する高精度加工機を導入、高付加価値事業の推進を実施した。
☆採択=申請した補助金が満額もらえるわけではない!?☆
手続きを経て申請が通り、採択となった後も注意が必要です。
採択の後は実際に申請した事業計画に基づいて補助事業を実施する必要があります。その際、計画した内容と大幅に予算が異なる事業を行った場合や、計画にない事業を行った場合は、補助事業実施後の実績報告をした際に減額や対象外と判断されることがあります。
金額の大幅な修正や計画内容の変更がある場合は、補助金の事務局に一度相談することをお勧めします。
基本要件と審査項目
ものづくり補助金の申請を進める際には、以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を作成する必要があります。
(1)事業者全体の付加価値額を年平均成長率(CAGR) 3%以上増加
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
(2)給与支給総額を年平均成長率(CAGR) 1.5%以上増加
※給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等
(給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)を指します。
(3)事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金) を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
また、審査項目では主に以下の4つの点を見られますので、申請時には明確な数値目標や具体的な達成プロセスを示すことを意識して準備しましょう。
(1)技術面
革新性や補助事業を行うことで課題解決の方向性が明確か、新規製品・サービスの開発内容は妥当なものか等
(2)事業化面
補助事業をどのような組織・体制で実施しているのか、補助事業を進めるうえで市場ニーズは十分あるか、
実施スケジュールに問題はないか、費用対効果を見込めるか等
(3)政策面
環境変化への対応や革新性など、ものづくり補助金の目的に合った投資か、自社だけでなく地域経済への波及効果は
期待できるか等
(4)大幅賃上げ
従業員の賃上げについて、根拠に裏付けされた計画であるか、一時的な賃上げではなく企業の成長と合わせ継続的な
賃上げ計画であるか等
申請・採択プロセス
(1)事前準備
申請に入る前にGビズIDを取得します。
GビズIDとは、法人・個人事業主向け共通認証システムのことで、1つのGビズIDアカウントで、対象の各種補助金
申請や許認可申請など、複数の行政サービスを利用することができるシステムIDです。
(2)申請・審査
必要な書類を確認し、GビズIDを通じて電子ファイルとして提出します。申請は公募期間内に行います。
提出後の審査により採択可否が決まり、事業の革新性や実現可能性や効果などが評価され、採択可否が決まります。
(3)事業実施と実績報告
採択後、企業は事業を計画通りに実施し、進捗状況や費用の使用状況について報告します。
補助金は事後精算方式が一般的であり、実際の支出に応じた補助金が交付されます。
(4)補助事業実施後の状況報告
事業開始後、毎年4月時点で以下の内容を計6回報告する必要があります。給与支給総額の増加目標が未達の場合や、
事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合には一部または全額返還義務が発生しますので注意が必要です。
① 直近月(3月)の最低賃金
② 直近決算期の付加価値額・給与支給総額などの実績
③ 補助事業の収益化状況など
資金計画と補助金の活用効果
ものづくり補助金の導入によって設備投資や新技術開発に必要な資金が確保されると、企業の成長にとって大きな助けとなります。ただし、補助金は「後払い」の形式が多く、当初は企業側で費用を立て替える必要がある点に注意が必要です。そのため、補助金申請の際には、必要な資金の調達や運転資金の確保を含めた事前の資金計画を立てておくことが重要です。
また、補助金はあくまで「補助」であり、全額を賄うものではないため、自己資金や他の資金調達方法と合わせて効率よく活用し、事業の収益性やキャッシュフローを改善するための戦略的なファイナンス計画を練ることが求められます。
さいごに
ものづくり補助金は名称を変えながら年々進化し、多くの企業を支援してきた制度です。細かく手続きが分かれている点がありますが上手に活用することで企業の成長に繋げることができますので、計画書の作成や申請などご心配な点がありましたらご遠慮なく社会保険労務士法人プラットワークスにご相談ください。当法人ではものづくり補助金を始め、様々な補助金の採択を支援した実績がありますのでご安心してお任せください。
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