少子高齢化や労働力不足がニュースで話題となることも多いですが、労働環境の整備は多くの企業で取り組む必要がある課題の1つです。特に中小企業にとっては、従業員の定着・確保に向けた「働き方改革」を行うことは、他社との差別化にもつながる重要な取り組みになります。
その中で注目されているのが「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」です。本助成金は、時間外労働の削減や年次有給休暇の取得促進などに向け、設備投資や生産性向上を支援する助成金になります。
当法人でもモニターの導入を行う際に活用し、生産性の向上に繋げることができたオススメの助成金ですので、申請を検討してもらえればと思います。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)_ウェブサイト(厚生労働省)
制度概要
この助成金は、①~③のいずれかの成果目標を達成することを前提に、就業規則や36協定の整備、外部専門家の活用、労務管理機器の導入などにかかる費用を一部補助する制度です。助成率も高く幅広い経費に活用できるので、自社の取り組みに活用できるものはないか、ぜひ検討してみてください。
成果目標は以下の通りです。
全てを満たす必要はなく、どれか1つを選ぶことができます。ただし、選んだ目標に応じて助成上限が変わりますのでご注意ください。
助成上限についても合わせて記載しますのでご確認ください。
<成果目標>
① 月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数の縮減
② 年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入
③ 時間単位の年次有給休暇制度と、交付要綱で規定する特別休暇を1つ以上新規導入
※上記①から③の成果目標に加え、指定する労働者の時間当た りの賃金額を3%以上5%以上または7%以上引き上げることを成果目標に加えることができる。
成果目標①の上限額
成果目標②の上限額:25万円
成果目標③の上限額:25万円
成果目標「賃金の引上げ」の上限額の加算
常時使用する労働者数が30人を超える場合に、達成した成果目標の助成上限額に、下記の表の上限額が加算されます。また、常時使用する労働者数が30人以下の場合は、達成した成果目標の助成上限額に、上記の表の2倍の上限額が加算されます。
必要書類とスケジュール
労働時間や賃上げを目標とする助成金ということもあり、労働条件にかかわる必要書類が多くなっています。申請マニュアルを確認のうえ漏れなく準備し、作成するようにしましょう。
ウェブサイトの申請マニュアル内にチェックリストがありますので、そちらも活用することをオススメします。
また、スケジュールについては11月28日まで受け付けていますが、予算次第では早めに終了する可能性もありますので、申請を検討する場合は早めに動いていきましょう。
<必要書類>
① 交付申請書
② 事業実施計画
③ 36協定届(特別条項の締結条項含む)
④ 就業規則の写し(年次有給休暇管理簿)
⑤ 就業規則の写し(労働条件通知書の写し)
⑥ 労使協定の写し
⑦ 対象労働者の交付申請前1か月分の賃金台帳の写し、労働時間が分かる書類
⑧ 見積書(事業を実施するために必要な経費の算出根拠が分かる資料、必要に応じて導入する機器等の内容が分かる資料)
<スケジュール>
申請受付期間:2025年4月1日~2025年11月28日(※予算上限に達し次第、早期終了あり)
事業実施期間:交付決定日~2026年1月30日(年度内)
支給申請期限:事業実施終了日から30日以内、または2026年2月6日までのいずれか早い日
※注意点:交付決定前の発注・契約・実施は補助対象外。また、就業規則の変更や36協定の届出なども、実施期間内に適切に行う必要があります。
活用事例
働き方改革推進支援助成金は、具体的な取組を通じて成果目標を達成することが重要です。ここでは、実際に活用された想定事例を通じて、どのような支援が得られるのかをご紹介します。
(1)情報管理システムの導入で請求・日報業務を効率化
業種:障害者支援施設
導入設備:利用者情報管理システム
背景・課題:業務で使う独自Excelが複雑で、利用者ごとの入力作業に時間がかかり、非効率だった。
成果目標:時間外労働・休日労働の縮減
補助活用内容:
① クラウド型の情報管理システムを導入
② 日報・請求業務を自動化
効果:業務フローの簡素化により、労働時間を削減。システムの導入により、誰でも業務を行える体制が整った
(2)福祉車両の導入による業務効率化と特別休暇制度の導入
業種:介護事業
導入設備:スロープ付き福祉車両
背景・課題:従来は福祉車両が1台しかなく、車椅子利用者の送迎に人員が複数必要で、業務に多大な時間がかかっていた。
成果目標:年休の計画的付与、病気休暇(特別休暇)の新規導入
補助活用内容:
① スロープ付き福祉車両を追加導入
② 業務の負担軽減と生産性向上に向けた制度整備
効果:車椅子のまま乗降可能となり、作業人員を削減し、1件あたり10〜15分の時間短縮を実現
職場改善から事業拡大へ
働き方改革推進支援助成金は、ただ「働き方改革」を後押ししてくれるだけでなく、現場の業務改善や生産性向上につながる設備投資や専門家のアドバイスなど、幅広いニーズに応えてくれることが特徴です。
クラウド型情報管理システムや福祉車両など、現場で本当に必要とされる設備を導入して時間の余裕を作ることは、時間外労働を抑えることや有給の取得を推進することができるようになります。そうした職場環境の改善を行うことは、人材の定着や離職防止にも繫がり、事業拡大を加速させる可能性が高まります。
設備投資はコストなどの理由に先送りされがちですし、職場環境の改善は一朝一夕で成果が出るものではありませんが、助成金を活用すれば思いきった改善にも踏み出しやすくなりますので、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
社会保険労務士法人プラットワークスでは、多数の企業様に補助金や助成金の支援を行っていることや、自ら補助金や助成金の採択・通過した実績を踏まえ、皆さまの支援をいたします。まずはご相談からでもお気軽にお問合せください。
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