生成AIやRPAといったデジタルツールの普及が進む中、「業務効率化をしたい」や「紙の手続きを減らしたい」などの声を経営者の方々からよく聞きます。一方で、「設備投資には費用がかかるわりに効果が見えづらい」「デジタル人材がいないのでよくわからない」という不安もまだまだあり、IT関連の設備投資が進まないという状況もあります。
(出典:中小企業庁「中小企業白書2022」より一部加工して引用)
とはいえ、現場で働く方々からデジタル化を要望している声が多いのも事実です。こうした中、東京都では都内の中小企業等を対象に、デジタルツールの導入経費を最大100万円まで助成する「中小企業デジタルツール導入促進支援事業」がスタートしました。これはソフトウェアやクラウドサービスの購入・設定費用などに対して支援を行う制度となります。今回はこの制度の概要やポイントを見ていきたいと思います。
制度概要とスケジュール
助成金額は最大100万円。対象となる経費はツール本体費用に加えて、初期設定、カスタマイズ、保守費用等も含まれ幅広い活用方法が期待できます。また、ツールと連携する専用機器についても一定条件のもとで助成対象となる可能性がありますので、自社の課題と合うかぜひ検討してみてください。
スケジュールは以下の通りです。
6月募集分は締め切りが迫っていますので、申請を行う事業者様は期日をしっかり守り手続きを進めていきましょう。
10月募集を検討している事業者様は申請に向けて早めに準備を進めることをオススメします。
〇 6月募集
申請期間:2025年6月11日~7月4日
交付決定:①2025年7月下旬、2025年8月下旬
〇 10月募集
申請期間:2025年10月予定
交付決定:2025年12月下旬、2026年1月下旬
申請の流れ
申請にあたっては、導入予定のツールが制度の対象要件を満たしていることを確認した上で、gBizIDプライムの取得、jGrantsでの電子申請、交付決定後の契約・発注・支払い、導入後の実績報告といった一連のプロセスを正確に踏む必要があります。
なお、「交付決定前の契約や支払いはすべて助成対象外」となる点は注意が必要ですので、スケジュール管理はしっかり行っていきましょう。
課題から考えるモデルケース
本助成金は様々な業務効率化に活用できる制度になることが確認できたと思います。ここでは建設業やサービス業といった現場重視の業種における、具体的なモデルケースを通じて事業者の皆さまにイメージをもっていただければと思います。
ケース1:建設業
課題:複数の現場が同時進行し、工程・日報・安全管理が部門ごとに異なるフォーマットで管理されていた。進捗報告や是正対応に時間がかかり、品質・安全リスクの情報共有に課題あり。
導入ツール:統合型クラウド施工管理システム(工程管理・日報・写真・安全管理を一元化)
助成対象経費:
・ソフト利用料 :クラウド型施工管理プラットフォーム
・初期設定・設計費:各部門の業務プロセスに応じたテンプレート構築
・操作研修費 :拠点・現場責任者向けの操作研修、動画マニュアル作成費
効果:工程・日報・写真・是正情報が一元管理され、部門横断の情報連携がスムーズに。トラブル対応の迅速化により施工品質クレームの削減に成功。現場責任者の報告業務が大幅に省力化され社内標準化が進展できた。
ケース2:コールセンター業
課題:顧客対応履歴の管理がExcelや紙で分散しており、再対応や引き継ぎに時間がかかっていた。FAQは属人的に運用されており、新人オペレーターの習熟に時間を要していた。トラブル対応時に通話録音と記録が紐づかず、対応履歴の検索に時間がかかっていた。
導入ツール:クラウド型CRM+FAQナレッジシステム+通話録音連携
助成対象経費:
・ソフト利用料 :クラウド型CRM・FAQ・通話録音管理の年間利用料
・初期設定・設計費:顧客情報・対応履歴のデータ移行、FAQナレッジ構成の設計
・操作研修費 :オペレーター・SV向け研修実施、操作マニュアルおよび動画コンテンツ制作
効果:顧客対応履歴や通話記録が一元化され、引き継ぎ・クレーム対応の精度とスピードが大幅向上。FAQ活用により、オペレーターの対応品質が安定し、新人教育時間が短縮。顧客満足度の向上と離職率の改善、1件あたりの対応時間の削減につながった。
脱アナログから事業拡大へ
これからも、そして今後も続くであろう人手不足の問題や、毎年のように増える事務作業など、デジタル化は一部の大企業だけでなく、多くの中小企業にとっても避けて通れない課題になります。中小企業デジタルツール導入促進支援事業は、単なるツール導入を後押しして終わるものではなく、業務の見える化や標準化、属人化の解消などを後押ししてくれる制度になります。
申請には他の補助金や助成金と同様に準備資料や手続きが必要になりますが、自社の課題をしっかりと言語化し実行に向けた計画を作りこむことで、業務効率化から事業拡大の可能性はぐっと高まります。また、採択後は専門家のフォローアップ支援を受けることができ、安心して進めることができますので、「今のままでは限界を感じる」「社内でデジタル化が進まない」などの声がある事業者様は、ぜひこの機会に制度活用を通じて設備投資を検討してみてください。
社会保険労務士法人プラットワークスでは、多数の企業様に補助金や助成金の支援を行っていることや、自ら補助金や助成金の採択・通過した実績を踏まえ、皆さまの支援をいたします。まずはご相談からでもお気軽にお問合せください。
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