物価高が進む中、賃上げの話題はたびたびニュースやSNSでも取り上げられ、目にする機会も多いですね。事業者様からも「うちも賃上げしたいけど原資が心配・・・」といった声を聞くことがあります。そんな中、国の助成金制度をうまく使えば、賃上げとあわせて設備投資や人材育成にも取り組むことができるようになってきています。ただ、助成金は種類が多く、自社にはどの助成金があっているのか分からない事業者様もいると思います。
今回は賃上げを目的とした8つの助成金を整理した「賃上げ」支援助成金パッケージを取り上げ、特に予算枠の大きい「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」「人材開発支援助成金」にフォーカスして解説していきます。
制度概要
「賃上げ」支援助成金パッケージとは、
・「業務改善助成金」
・「キャリアアップ助成金(正社員化コース・賃金規定等改定コース)」
・「人材開発支援助成金」
・「働き方改革推進支援助成金」
・「人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)」
・「早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース、中途採用拡大コース)」
・「特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)」
・「産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)」
の8つの助成金を整理した制度です。
8つの助成金を整理しパッケージ化したと聞くと、一括で申請できて手続きが楽になるかも、というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、申請する際には1つ1つ手続きが必要になりますのでご注意ください。
とはいえ、バラバラの助成金制度を「賃上げ」という共通の目的によってまとめ、事業者の皆さまに分かりやすくしていることは大きなメリットになります。
また、使い方によっては「業務改善助成金」で設備導入し生産性向上、「キャリアアップ助成金」で正社員化を促進し処遇改善するといった、複数の助成金を併用することができるので活用できるものはどんどん活用していきましょう。
このように、賃上げが重要なテーマである中、パッケージ化することで複数の制度を「見える化」し、利用促進してほしいという国からのメッセージが伝わってきます。
業務改善助成金
業務改善助成金は、「設備投資まで手が回らない・・・」などの悩みに応える制度です。ポイントは、最低賃金の引き上げ+生産性向上のための設備投資等をセットで行うこと、賃金引上げの従業員数は1人からでも対象になることが特徴です。助成率も3/4~4/5と高く、賃上げ額に応じて最大600万円までの助成が受けられる可能性があります。「まず1人からでも賃上げを始めたい」という事業者様にも使いやすく、毎年多くの申請がされている人気助成金の1つです。
業務改善助成金の活用事例としては、小売業のPOSレジシステム導入や、理容業で顧客管理や在庫管理などの業務管理システム導入、飲食業での配膳ロボット導入など、幅広い業種で活用されており、生産性向上や人手不足の解消に大きく貢献しています。設備投資には多額の資金が必要になりますが、その負担を押さえつつ事業拡大を目指せるのが魅力です。令和5年度の実績では13,000件を超える交付決定件数であり、当事務所もテレワークブース導入の設備投資をした実績のある人気の助成金ですので、まだ活用したことのない事業者様はぜひ検討してみてください。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、パートさんや契約社員などの非正規雇用労働者の賃金アップや正社員化を応援してくれる制度です。最近は「がんばってくれてる人に少しでも還元したい」「待遇改善で人材の定着を図りたい」という事業者様の声もよく聞きます。賃上げ支援では正社員化コースと賃金規定等改定コースが対象となり、非正規雇用者を正社員化し賃金を3%増加させる、また非正規雇用者の基本給を3%増額する等が要件となり、「少しずつ働きやすい職場にしたいな」という会社にぴったりの制度です。
キャリアアップ助成金の活用事例では、小売業におけるパート社員の昇給および評価適正化を行ったことや、飲食業でアルバイト社員を正社員化に転換したケース等、こちらも様々な業種で活用されています。
また、今回の支援パッケージとは少し話が逸れますが、「年収130万円の壁」による働き控え解消を目的に、新たに「短時間労働者労働時間延長支援コース」が創設されるなど、キャリアアップ助成金は今後も盛り上がりが期待できる助成金と言えそうです。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は、「従業員に研修を受けてもらい人材育成を進めたいが予算的にも時間的にも後回しにしてしまう…」といった事業者様のお悩みに応える制度です。また、研修後にしっかり賃上げをすれば加算もついてくるので、スキルアップと処遇改善の両立にもオススメです。人が育ち長く勤務してくれると、現場のパフォーマンスも安定し離職防止にもつながりますので積極的に活用してほしい制度の1つです。
人材開発支援助成金の活用事例では、情報通信業で高度デジタル人材訓練のための資格取得支援、製造業で新入社員から管理職まで幅広い層に対応した営業力向上のためのe-ラーニング受講、運輸業でインバウンド対応のための英会話講座の受講といった、新たなスキルの習得による人材育成に取り組む企業が多いのが特徴です。当事務所でもデジタル人材育成のための講座受講に向けた交付決定を受けた実績があり、こちらも多くの事業者様にオススメできる助成金です。
助成金活用で人材不足に立ち向かう
助成金は補助金と異なり、要件を満たせばほぼ支給される活用しやすい制度ではあります。しかし、助成金も補助金も支給されて終わりではなく、それをどう事業拡大や人材育成、生産性向上などに持続的に繋げていくかが重要です。
特に最近は人材不足が課題と言われることが多いですが、今後はさらに人材不足が深刻となっていく予想されています。その中で、自社に愛着を持ち頑張って仕事をしてくれる従業員の賃金を上げ、適切な評価をし行い成長の機会を与えることが、他社と差別化し持続的な経営に繋がっていくと考えられます。
助成金の活用はそういったビジョンを実現する手段でもあり、その計画を作ることが新たな気づきに繫がることもありますので積極的に活用していきましょう。
社会保険労務士法人プラットワークスでは、多数の企業様に補助金や助成金の支援を行っていることや、自ら補助金や助成金の採択・通過した実績を踏まえ、皆さまの支援をいたします。まずはご相談からでもお気軽にお問合せください。
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