介護休業制度とは?――2025年法改正と制定経緯から考える、仕事と介護の両立支援の本質

厚生労働省によると、日本の人口は近年減少局面を迎えており、2070年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は39%の水準になるといわれています。このような少子高齢化社会による労働力不足の他にも、介護との両立に課題を抱える労働者も多く、介護を理由として離職をせざるをえない問題も発生しています。現在、介護をしながら働く人は365万人といわれておりますが、そのうち年間10万人が介護を理由として離職をしています。このことから、介護離職の労働市場への影響は非常に大きく労働者が介護をしながらも働きやすい職場環境を整備していくことが、事業主にとって急務となっています。
また、仕事と介護の両立支援制度として、介護休業制度が存在しますが、この制度の周知があまりされておらず、活用ができていないのが現状です。

                  ※厚生労働省「我が国の人口について」より抜粋

今回のコラムでは、介護両立支援のベースとなる考え方を規定している育児介護休業法での介護休業制度成立の歴史と、介護休業制度の概要、そして近年増加している在宅介護も踏まえた企業に求められる仕事と介護の両立支援対応について解説します。

介護休業制度の成立と関係法令

「介護休業制度」は、1991年に制定・1992年に施行された、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(旧「育児休業法」、現「育児・介護休業法」)に基づき1995年に制定されました。成立当初は育児休業法として、仕事と育児の両立を支援する法律として制定されていましたが、その後の急速な高齢化社会の進展により、家族の介護が必要となる労働者が増加したことが問題視され、その社会的要請に伴い「介護休業制度」が新たに加わりました。

なお、「育児・介護休業法」は過去のコラムで述べた通り、20254月に法改正が行われ、「対象労働者への介護両立支援制度の個別周知・意向確認」や「雇用環境整備等の措置」の義務化、「介護に直面する前の早い段階での情報提供」「介護のためのテレワーク導入」の努力義務化等、労働者がより柔軟に仕事と介護を両立するための支援を強化する内容が盛り込まれました。

介護休業制度の概要

「介護休業制度」とは、労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族を介護するための休業制度です。対象者1人につき3回まで取得可能となり、通算93日まで休業できます。分割での取得も可能です。

【取得例】

対象者と条件

対象者は日々雇用を除く、対象家族を介護する男女労働者となり、有期労働者は申し出時点で、取得予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないことが判明している労働者のみ、取得することができます。

ただし労使協定により以下の労働者は対象外とすることができます。

①継続雇用1年未満の労働者

②申出日から93日以内に雇用終了予定の労働者

③週所定労働日数が2日以下の労働者

また、対象家族の定義は、配偶者(事実婚含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母となり、対象家族が「要介護状態」の要件(2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)を満たしている必要があります。

【対象家族】
                  ※厚生労働省「介護休業について」より

休業中の賃金と介護休業給付制度

休業中は法令上賃金の支払いを事業主に義務付けておらず、各事業所の就業規則等によります。ただし、介護休業制度により賃金の支払いを受けられない者に対して、雇用保険法の規定により「介護休業給付金」の支給を受けることができます。
ただし、介護休業を開始した日以前2年間に被保険者期間が12か月以上必要(有期雇用労働者はさらに介護休業開始予定日起算で93日を経過する日から6か月を経過する日までに労働契約が満了することがあきらかでないこと)となるため、注意が必要です。(詳細は厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」参照)

在宅介護と介護両立支援の現状

厚生労働省の統計によると、2025年に在宅で介護を受ける人は約436万人(前年比3.2%増)にのぼり、そのうち約7割が家族による介護を受けています。労働参加率の上昇からも在宅で介護を行う労働者が増えていくことが想定され、よりいっそう仕事と介護の両立支援が求められていることがわかります。
在宅介護が増えている背景としては、急速な高齢化社会の進展により介護施設が不足していることや、介護保険料の自己負担量の増加、介護人材の不足や医療費の抑制のため等があげられます。一方で、在宅介護は介護者の身体精神的負担が特に大きく、労働者にとって仕事との両立が大きな壁となりえます。

このようなことから、仕事と介護の両立、特に在宅介護を継続できる環境を整える制度整備が今後よりいっそう事業主に求められるといえます。
『人は誰しもケアし、ケアされる存在である』というケアの倫理を取り入れる等、弱さを抱えながらも貢献できる組織文化を創ることは、これからの時代に選ばれる企業の条件といえるでしょう。
多様化する労働者のニーズに対応していくためには、介護休業制度等の活用だけでは不十分で、介護保険外サービスの活用促進や仕事と介護の両立のための労働環境整備が重要であるといえます。

また、経済産業省でも仕事と介護の両立困難による経済損失は甚大と認識しており、より幅広い企業が両立支援に取り組むことを促すため、企業経営における仕事と介護の両立支援が必要となる背景・意義や両立支援の進め方などをまとめた企業経営層向けのガイドラインを公表しました。
このガイドラインは経営層を対象に仕事と介護の両立支援において企業が取り組むべき事項をステップとして以下の通り具体的に示しています。

【仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン】

仕事と介護の両立支援のために企業に求められること

介護休業制度を運用する際は、2025年の法改正も踏まえた法的義務への対応やリスク管理の観点で以下の点を注意していくとよいでしょう。

①個別周知と意向確認
20254月の育児・介護休業法の改正に伴い、従業員から家族の介護が必要になった旨の申し出があった場合、企業は介護休業制度をはじめとした仕事と介護を両立するための各種制度の個別周知と制度利用の意向確認を行う義務があります。介護休業や短時間勤務制度等の社内制度の周知と説明、利用についての意向を確認することが大切です。ただし、繁忙期だから休まないでほしいなどの取得を控えさせるような働きかけは「介護休業取得に伴う不利益取り扱い」に該当するため、行ってはいけません。
また、個別周知と意向確認に際しては、会社から一方的に制度を説明するだけではなく、対話を通じて本人の『どう働きたいか』という自発的な意向を確認すること、このプロセスこそが介護離職を未然に防止する鍵となります。

②雇用継続のための制度設計と職場環境の整備
多様化したニーズをもつ介護を行う労働者が働き続けるためには、既存の介護休業制度だけでない柔軟な働き方の導入をしていくことが求められます。例えば介護のためのテレワーク導入は勤務を継続しながら、介護対象者の通院の付き添いや急な入退院の対応等ができるため、介護者の離職防止に効果的とされています。
さらに介護を理由とした従業員に対するハラスメント(ケアハラスメント)が起こらないよう、ハラスメントについての社内方針を全社に周知する、研修を実施するなどの環境整備を行うこと、そして、ハラスメントや仕事と介護の両立における悩みを気軽に相談できる相談体制づくりも重要です。

 

今回のコラムでは介護休業制度の概要と仕事と介護の両立支援において企業に求められる対応について解説しました。日本の介護休業制度をはじめとした仕事と介護の両立支援制度は依然として認知度が低く、活用されていないのが現状です。このような制度認知の促進をしていくことの他、介護に直面する労働者が希望するタイミングでの制度利用ができるよう、働きやすい職場環境整備も必要となります。このような時には企業の労務管理に精通し、企業の実態に応じたアドバイスのできる専門家のサポートが重要となります。

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