コラム

2024年問題②_自動車運転の業務って具体的に何? ~36協定上限規制の猶予期間終了まであと375日!~

シリーズ2024年問題_プラットワークスのコンサルタントと元労働基準監督官がわかりやすく解説していきます
2023年3月23日掲載

前回のコラムにて時間外労働の上限規制の適用が5年間猶予されてきた事業・業務について解説いたしました。
今回はその中のひとつ【自動車運転の業務】についてまとめていきます。

 

 

この記事を読むことで、自動車運転の業務をしている方が、
自身の業務が2024年4月1日(令和6年4月1日)より時間外労働の上限が設定されるようになるのかが判断できるようになります。

また管理する立場にある事業主の方、労務担当の方においては、どのような業務が対象となるのか、一定の基準がわかるようになります。

わかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

それでは早速ですが、【自動車運転の業務】と言われたら何を思い浮かべますか?

 

ありとあらゆる乗り物が出てくる方もいれば、普段利用している交通機関で働く人のこと、最近特にお世話になっている物流業界のことを思い出す方もいるでしょうか。

 

【自動者運転の業務】は思い返すとたくさんありますが、ここでは来る2024年4月1日より時間外労働の上限規制が適用される職種を紹介していきます

主な運転者の種別は以下の通りです。

♦タクシー・ハイヤー運転者
♦トラック運転者
♦バス運転者

 

もう少し詳しく見ていきましょう。

 

それでは次にもう少し詳細に対象運転者の定義をそれぞれ確認していきましょう。
以下は法律上の定義です。

                              参考:厚生労働省 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準    ※対象者概算は、国土交通省が公表している自動車関係統計データの車両数をもとに導き出したものです
          参考:国土交通省 自動車関係統計データ(参照日:2023年3月23日)                                   

 

う~ん。分かってきたような、複雑化してきたような感じでしょうか…。
法律上の定義は慣れ親しんでいないと想像しにくいですね。

 

それでは、もう少しリアルな感覚で考えていきましょう。
以下は仕事内容まとめです。

 

タクシー輸送の仕事とは?
◆重要度が高まるタクシー運転者という仕事
タクシーは、地域の公共交通機関として必要不可欠な輸送機関です。
また、鉄道やバスなど他の輸送機関とは、お客様にドア・ツー・ドアでの輸送サービスを提供する点で異なっています。また、駅やバス停などに左右されず、時刻表の制約もない自由度の高い輸送サービスであるタクシーは、多様化する利用者ニーズへの対応や高齢化が進むわが国における生活の足として、タクシー・サービスの重要度はますます高まっています。


ハイヤーとは?
◆ハイヤーとタクシーは何が違うの?
ハイヤーとは、一般乗用旅客自動車運送事業の用に供せられる自動車であって、当該自動車による運送の引受けが営業所のみにおいて行われるものをいいます。
ハイヤーは、地方運輸局長が指定する地域において、事業計画でタクシーと区分されています。
ハイヤーには、いわゆる「都市型ハイヤー」と「その他ハイヤー」があります。
ハイヤー事業においては、最近のアウトソーシングなどの影響で、会社の重役、団体の役員、市町村役場や議会の幹部などを顧客として一定期間契約運行することがあります。そのような場合、それぞれのお客様のご都合により1日や1か月の利用時間が長くなることがあります。
特に全国的な会議や学会、イベントなどが開催される時期や、突発的に社会的な関心事が発生した場合などは、事前に想定された以上の長時間の利用となることがあります。
また、お客様は秘密保持などの理由から、常に同じ運転者を希望されることも多くあります。



トラック輸送の仕事とは?

◆重要度が高まるトラック運転者という仕事
トラックはわたくしたちの生活に必要不可欠な輸送手段です。トラックは日本の貨物輸送量の約 9 割を担っており、トラック運転者は日本経済を陰で支える重要な役割を果たしています。また、近年ではインターネット通販の拡大に伴い宅配便などのトラック輸送が非常に注目を集めており、その重要度はますます高まっています。



バス運転者の仕事とは?
◆重要度が高まるバス運転者という仕事
バスは、わたくしたちの生活に必要不可欠な輸送機関です。
地域の公共交通機関として必要不可欠な路線バスや修学旅行や社員旅行などの旅行で利用する観光バスのほか、長距離移動に便利な高速バスや通学のためのスクールバスなど、バスは様々な場面で人々の生活を支えています。
さらに、最近では、高齢化社会の進展や外国人観光客の増加に伴い、それらの方たちの足としてのバスの重要度はますます高まっています。


出典元:自動車運転者に対する教育・研修用ツール及びツールを用いた改善基準告示等の周知・啓発(厚生労働省委託事業)

タクシー・ハイヤー、トラック、バス運転者の仕事は私たちの生活にとって必要不可欠であり、利用者・荷主のニーズも非常に高いことから、必然的に長時間労働が発生しやすい構造にあるということですね。

 

だいぶ対象者の像がはっきりしてきました…。

それでは、前提事項を改めて確認してみましょう。

【前提】
2024年4月1日(令和6年4月1日)より時間外労働の上限規制が適用となる運転者とは、
労働基準法9条の労働者であって、4輪以上の自動車運転の業務に主として従事する運転者です。

例えば「旅館の送迎バス」「販売業の自家用トラック運転」「生コン製造業者の自家用生コン自動車運転」のような運転に従事する者は対象となります。

一方、「個人タクシー」「バイク便」「作業現場での自動車運転」「クレーン等のオペレーターが移動するための道路走行」「緊急輸送及び一定の危険物の運送業務」のような運転に従事する者は対象外となります。

ん!?ちょっと待って!
「個人タクシー」「バイク便」は対象外になることは上述の説明で分かったけど、「作業現場での自動車運転」「クレーン等のオペレーターが移動するための道路走行」「緊急輸送及び一定の危険物の運送業務」のような運転に従事する者は対象外って、どういう理由でそうなるの?

はぁ(ため息)。

だれか分かりやすく教えて…。

ではここで、よくある質問例をQ&A形式で示していきます。
 

 Q.「①作業現場での自動車運転」「②クレーン等のオペレーターが移動するための道路走行」「③緊急輸送及び一定の危険物の運送業務」のような運転に従事する者は対象外とありますが、なぜですか?  

 A. 改善基準告示は、「自動車の運転の業務に主として従事する」者を対象としており、 その具体的な基準として、
・運転する時間が労働時間の半分を超え、かつ、
・運転する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれる
場合には、「自動車の運転の業務に主として従事する」に該当し、「改善基準告示」の対象となります。
そのため、①や②のように、自動車の運転が主たる業務でないケースにおいては、対象外となります。
また、③については、厚生労働省労働基準局長が定める緊急輸送等の業務に該当するため、適用除外とされています。

ふむふむ。
そういうことかぁ(理解)。

まとめ

【主な運転者種別】
♦タクシー・ハイヤー運転者
♦トラック運転者
♦バス運転者

【前提】
労働基準法9条の労働者であって、4輪以上の自動車運転の業務に主として従事する運転者

【業務の特徴】
♦交通インフラ、物流インフラを維持するうえで必要不可欠であり、利用者・荷主のニーズが高い
♦長時間労働が発生しやすい業界構造にあり、他の業種と同様に労働基準法による一般的な労働時間規制が難しい
♦過労死等のうち脳・心臓疾患の労災支給決定数が全業種で最も多い


時間外労働の上限規制への対応でご不安点がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
元労働基準監督官である社会保険労務士が貴社の現状を踏まえ、無理のない範囲で確実に親身に対応いたします。

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厚生労働省のページに各種リーフレット、改善基準告示(全文)、通達等
情報がまとまっています。あなたの日常生活に関わることです。
ぜひ目を通してみてください。

参考:厚生労働省 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)

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