「70歳就業時代」の労務戦略~改正高年齢者雇用安定法と「65歳超雇用推進助成金」のポイント~

【2026年2月24日追記】シニア層の労働は深刻な労働力不足を背景とした経営の必須課題へ

本記事の公開から約5年が経過しました。
施行当初は「努力義務」としてスタートした70歳までの就業確保措置ですが、生産年齢人口の減少が加速する現在、多くの企業にとって「高齢者の戦力化」は避けて通れない経営課題となっています。

現在では単に雇用を延長するだけでなく、シニア層のリスキリングや、同一労働同一賃金を意識した賃金設計など、高年齢者が意欲を持って成果を出せる「仕組み作り」が問われています。これに伴い、厚生労働省の助成金も、制度導入だけでなく「評価制度の構築」や「健康管理」といった、より実効性の高い施策を支援する内容へとアップデートされています。

本記事の後半では、最新の「65歳超雇用推進助成金」の情報を反映しました。ぜひ、社内の環境整備にお役立てください。

【2021年改正を振り返る】70歳までの就業確保措置(努力義務)とは


   ※以下は、2021年4月の法改正当時の解説記事です。

令和3年4月1日から「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の一部が改正され施行されます。
これは少子高齢化による人口減少の中でも経済を維持するために、働く意欲のある高年齢者が活躍できる環境の整備を目的としています。
おおまかには、現行の65歳までの雇用確保措置を70歳まで引き上げるといった内容です。
ただし、この改正は、定年の70歳への引き上げを義務付けるものではなく、努力義務です。

改正高年齢者雇用安定法が令和3年4月から施行されます。
参考リンク:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~(厚生労働省)

70歳までの就業確保措置を講じることが「努力義務」となりました。

対象となる事業主
・定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主
・65歳までの継続雇用制度を導入している事業主

措置
次の1~3のいずれかの措置を講じるよう努める必要があります(努力義務)

  1. 70歳までの定年引き上げ
  2. 定年制の廃止
  3. 70歳までの継続雇用制度の導入
    ※特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む

    または、実施計画を策定し、過半数労働組合(当該組合がない場合は過半数代表者)の同意を得た上であれば、下記④⑤の措置でもよいとされています。
  4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
    a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
    b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

前述の通り、この改正は努力義務です。
しかしながら、これを機に現行の65歳までの継続雇用者の対応も含め、業務内容や役割を改めて整理し、段階的に措置を講じてみてはいかがでしょうか。
厚生労働省から「65歳超雇用推進助成金」も用意されています。
うまく活用し、高年齢者が活躍できる環境の整備をすすめていきたいところです。

【2026年2月24日追記】活用したい「65歳超雇用推進助成金」の最新情報

65歳超雇用推進助成金は、深刻な労働力不足を背景とした「定年引上げ」や「雇用管理制度の整備」、有期契約労働者の「無期雇用転換」を行う事業主を支援するものです。
参考リンク:令和7年度「65歳超雇用推進助成金のご案内」(厚生労働省リーフレット)

本助成金はⅠ~Ⅲの3つのコースがあります。

Ⅰ .65歳超継続雇用促進コース

【制度の定着を支援:定年引上げ等の実施】
高年齢者の雇用の推進を図るため、まずは制度を作ることを支援するコースです。
2021年の法改正以降、最も活用されているスタンダードな内容です。

対象となる措置:
・65歳以上への定年引上げ
・定年の廃止
・希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入
・他社定年退職者の受け入れ制度の導入

ポイント: 「就業規則の改定」が必須となります。
引上げ後の定年年齢や措置の内容、対象者の人数に応じて支給額が決定されます。

主な受給条件、受給額、支給要領についての最新情報は厚生労働省の以下のページをご確認ください。
参考リンク:65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)(厚生労働省)


Ⅱ. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

【質の向上を支援:能力評価・賃金・健康管理の整備】
単に長く雇うだけでなく、高齢者が「意欲を持って働ける仕組み」を作るためのコースです。2026年現在、人的資本経営の観点から最も推奨される内容です。

対象となる措置:
1.評価・賃金体系の整備: 能力評価に基づいた処遇決定
2.労働時間制度: 短時間勤務隔日勤務の導入
3.在宅勤務: 負担軽減のためのテレワーク整備
4.研修制度: 役割に応じたリスキリング研修
5.専門職制度: ベテランの知見を活かす役割の付与
6.健康管理制度: 法定外の健康診断(人間ドック等)の導入

助成額:支給対象経費(コンサルタント料やシステム導入費等)のうち、中小企業は60%(初回一律30万円)、中小企業以外は45%(初回一律22.5万円)を助成。

主な受給条件、受給額、支給要領についての最新情報は厚生労働省の以下のページをご確認ください。参考リンク:65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)(厚生労働省)

 

Ⅲ .高年齢者無期雇用転換コース

【雇用の安定を支援:有期契約から無期への転換】
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を、無期雇用へ転換させることを支援します。

対象となる措置:
有期契約労働者を無期雇用(定年制がある場合は定年まで)へ転換

助成額: 対象労働者1人につき 30万円(中小企業以外は23万円)。

主な受給条件、受給額、支給要領についての最新情報は厚生労働省の以下のページをご確認ください。参考リンク:65歳超雇用推進助成金(高年齢者無期雇用転換コース)(厚生労働省)

 

単なる定年延長は、組織の硬直化や若手のモチベーション低下を招くリスクもあります。
今回の助成金の要件にも含まれている「評価制度の改善」や「専門職制度の導入」などを活用し、ベテランの経験を後進に伝える仕組みをデザインすることも必要になってくるでしょう。

 

なお、各助成金の支給額や要件は、年度ごとの予算状況により期中であっても変更されたり、受付が終了したりする場合があります。申請を検討される際は、必ず最新の公募要領を確認してください。

また、各コースには「事前に計画書を提出し認定を受ける」などの期限厳守のプロセスが必須です。特にⅡ. 高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは計画開始の数ヶ月前までの申請が必要となるため、次年度の経営計画に合わせて早めに動くことが肝要です。

 

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