2023年12月13日、厚生労働省 労働政策審議会 雇用保険部会が、雇用保険制度の見直しに向けた案をとりまとめました。
現在の雇用保険の加入要件の一つに、週の労働時間が20時間以上であることとするものがありますが、今回の見直しでは「10時間以上」に緩和することとしています。
2024年の通常国会に関連法案を提出し、2028年度中に改正する見通しです。
これにより、新たに約500万人が加入対象となります。
雇用保険部会報告(素案)では、今回の見直しの背景として、日本の女性や高齢者等の多様な人材の労働参加の進展や、働くことに対する価値観やライフスタイルも更に多様になっているが進む中で、以下の理由を挙げています。
・労働者がその希望と状況に応じて持てる能力を十分に発揮できるよう、多様な働き方を効果的に支えること。
・労働者の主体的なキャリア形成を支援することが求められていること。
・急速な少子化が進展する中で、男女ともに働きながら育児を担うことができる環境の整備に向けて柔軟な働き方の推進が求められていること。
特に、以下の二つ点が特筆すべき事項であると考えられます。
雇用保険財政の調整
雇用保険料は、コロナ禍で雇用調整助成金などに多く支出し、財源が減っている状況でした。
そうした中、徴収する雇用保険料を増やすことで対応し、代わりに雇用保険による給付の対象も拡充しました。
こうしたコロナ禍で不安定になった雇用保険財政を適正化させる狙いがあると考えられます。
これまで育休給付が受け取れなかった者への支援強化
これまで、週の労働時間が20時間以上の者のみしか雇用保険に加入できなかったため、パート・アルバイトなどの週20時間以下で働く者は、雇用保険の対象外でした。
そのため、週20時間以下で働く者は、育休を取得したとしても、育児休業給付金などの支援を受けられていませんでした。
こうした一部の者へ支援が行き届いていない状況を踏まえて、今回の見直しに至ったとみられています。
さらに、今回の見直しでは、育児休業給付金の支給を現行の手取りの8割から、両親で育休を取得した場合に、最大28日まで実質手取り10割に引き上げることも含まれています。
子育て世代への支援は、岸田政権も力を入れて取り組んでおり、今回の見直しもその一環であると考えられます。