カスタマーハラスメントは2010年代前半頃から悪質なクレーマーに対してその名称が用いられるようになり、日本では社会問題として多くのメディアで取り上げられるようになりました。そして、2020年代にSNSの普及とともにカスハラが社会に広く知られ、労働組合や政府も問題視するようになったのです。
2020年10月に厚生労働者が実施した職場のハラスメント実態調査によると、企業におけるカスタマーハラスメントの相談件数はパワハラ、セクハラに次いで多く、ハラスメントの中では近年増加傾向にあるという結果が出ています。
※令和2年度厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査
カスハラ対策の歴史
法律上でカスタマーハラスメントについて言及されるようになったのは、2020年労働施策総合推進法の改正により、パワーハラスメント防止策が事業主に義務付けられたことに始まります。
これを踏まえ「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」が策定され、その中で事業主が顧客等からカスタマーハラスメントを受けた事に対し、「相談に応じ、適切に対応する体制の整備や被害者への配慮のための取り組みを行うことが望ましい」と記載されました。
また、その被害を防止するための取り組みを行うことが有効である旨も定められ、より一層のカスハラ対策の強化が求められています。
また、2021年7月に行われた、「カスタマーハラスメント防止対策の推進にかかわる関係省庁連携会議」において、企業における効果的なカスハラ防止対策の在り方の整理が行われました。
それを踏まえ、マニュアル制定と意識啓発の必要性が高いとされたため、2022年2月、厚生労働省は、カスタマーハラスメント防止対策の一環として「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成しました。
・カスタマーハラスメント対策企業マニュアル
しかし、依然として、国としてのカスハラ防止策は、現状厚生労働大臣指針において、「望ましい取り組み」と言及されているのみで、法律上の規制はありません。
カスハラの法整備に関しての現状として、2024年2月に東京都がカスタマーハラスメント防止に関する条例制定に向けて検討を行っており、今後制定された場合、全国初のカスタマーハラスメント防止に関する条例となります。
また、厚生労働省でも企業にカスハラ対策を義務付ける法整備について議論が行われており、国としてもカスハラに関する法整備に向けて積極的に動いております。
具体的には、政府が6月にとりまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2024」において「カスタマーハラスメントを含む職場におけるハラスメント」について、法的措置も視野に入れ、対策を強化する」旨の記載があります。
そのうえで、厚生労働省では対応マニュアル策定や従業員から相談を受ける社内体制の整備などが浮上しており、労働施策総合推進法改正案を2025年の通常国会にも提出する見通しです。
このように企業の組織・体制面、従業員のメンタルヘルスケア、両方向での支援はカスタマーハラスメント対策において急務となっております。特に先述した労災事例のように、企業のカスハラ対策に対する体制づくりは、従業員のメンタルヘルスの問題を事前に防ぐうえで、重要な要素となっております。
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【カスタマーハラスメントについて学ぶシリーズコラム】
カスハラはなぜ起きる?~カスタマーハラスメントについて学ぶ①~
カスハラとその対策の歴史~カスタマーハラスメントについて学ぶ②~
企業のカスハラ対策~カスタマーハラスメントについて学ぶ③~
カスハラの予防策~カスタマーハラスメントについて学ぶ④~