コラム

カスハラの予防策~カスタマーハラスメントについて学ぶ④~

前回はカスハラが起こることを前提として、企業のカスハラ対策について現状を踏まえて具体的な対策について学びました。

では、そもそもカスハラを起こさないためにどのような対策ができるでしょうか。


カスハラ増加の心理的・社会的背景として挙げられる

①消費者の地位向上と権利意識の高まり、②過剰サービスによる過剰期待、③SNSの普及など急激なメディア環境の変化、④社会全体のストレスのうち、

特に従業員側の過剰サービスによる消費者の過剰期待とコロナ禍を皮切りにした社会全体のストレスの増大がカスハラをより増長させているといわれています。

カスハラを起こさない組織・社会づくりのために、カスハラ被害の当事者となりうる企業主体としてできる対応を中心に、法整備や消費者へのアプローチなど、外部視点での対応もプラスして考えてみましょう。

 

今日からできるカスハラ予防

1.企業主体で行う予防策

企業が主体となってできるカスハラ予防策として「お客様は神様」思考をやめて顧客との対等な関係性づくりを心掛けることや、普段から従業員が相談しやすい体制・職場風土づくりが挙げられます。


①顧客との対等な関係の構築

「お客様第一主義」をやめて、カスハラを許さない姿勢をもって顧客と接することが大切です。

まず、正当なクレームと悪質なクレーム(カスハラ)を区別し、悪質なクレームは排除するように徹底します。そのためにはクレームとカスハラの違いを明確にし、対応基準を明確につくるとよいでしょう。

 

また、対応者自身がカスハラに応じない心構えや対応力を持つことも大切です。ロールプレイングを用いた研修や実際のカスハラ事例の共有の他、相手の怒りを大きくしない対応法や怒りの感情の取り扱い方(アンガーマネジメント)を理解し、無理な要求を繰り返す顧客に適切に対応するスキルを身につけるのも効果的です。


さらに、企業のトップが「カスハラに対する基本方針」など企業としてカスハラに毅然に対応する旨や従業員の人権を守るメッセージを発信することも大切です。それにより、職場における安心感や働きやすさにつながり、従業員も安心して業務にあたることができます。

 

②従業員が相談しやすい職場の雰囲気づくり(従業員のストレス管理)

カスハラは加害者だけでなく被害者への被害が深刻です。カスハラによる従業員への被害で挙げられるのが、仕事へのモチベーションの低下、うつ状態や適応障害などメンタルヘルスへの悪影響、そして退職があげられます。

そのため、カスハラに限らず普段からメンタルヘルスケアの体制を整え、「相談すること」が人事評価上に不利益にならないよう徹底し、その旨を従業員に周知する対策が必要です。

こういった対策を行うことで、従業員が何かあったときに相談しやすい窓口があるという安心感があり、仕事のモチベーションアップや辞職防止につなげることができます。

 

具体的な対策としてはメンタルヘルスケアの専門家を招いて定期的なカウンセリングを行ったり、社員が匿名で気軽に利用できるオンラインカウンセリングの導入をしたりなど外部の専門機関を活用することも有用です。

また、メンター制度1対1の面談の導入、人事評価制度の改善などを通し、同僚・上司と部下間で普段から相談のしやすい職場風土をつくっていくことも大切です。それによりトラブルが生じた際の情報共有がスムーズにでき、早期にカスハラ対策をとることができます。

 

2.外からできる予防策

その他、企業の外である、国や地方自治体による法整備や、消費者に向けた発信により、カスハラを許さない社会風土づくりや消費者の意識改革などを行うことも重要となります。

 

①法整備

国としてカスハラを法律で整備することは企業のカスハラへの取り組みを強化するだけでなく、対外的に明示することで、顧客側のカスハラ行為の抑止力になります。

国として法律上のカスハラへの規制は現時点ではありませんが、2024年2月より東京都がカスタマーハラスメント防止に関する条例制定に向けて協議を行っていること、2022年2月に厚生労働省がカスハラ対策企業マニュアルを策定したのち、現在2025年を目標にカスハラ対策義務付けの法整備を議論しているなど、国・地方自治体規模で法整備が積極的に行われています。

なお東京都の条例整備の動きを踏まえ、北海道や三重県でも現在カスハラ防止条例の制定が検討されています。このように各地方自治体による、カスハラ防止条例策定の流れが生まれているため、国として統一的な法律を制定し、カスハラが法的に規制される未来も近いでしょう。

 

②消費者の意識改革

カスハラを行う消費者側も、自身がカスハラを行っていると気づかず「サービスはこうあるべき」といった意識や「お客様は神様」といった曲解のもとカスハラを行っていることが多くあります。

そのような消費者に対しては店舗や駅構内などにポスターやプレートを掲示する方法があります。

どのような行為がカスハラとなりうるのか、カスハラを行っている自覚のない人に気づきを与え、カスハラ自体を減らすことにつなげられます。

 

           ※ポスター例:厚生労働省 カスタマーハラスメント対策企業マニュアル より


また、近年ではSNSを使ったカスハラも目立っており、SNS上で企業名や社員名をあげて誹謗中傷を行う、要求をきいてもらうために脅しに使うケースもあります。

SNSを使ったハラスメントを防ぐためには、できるだけ現場でトラブルを防ぐことが大切ですが、刑事・民事の両面より法律にのっとった対応を行うことを明言化することで、顧客がSNSを用いてカスハラを行う抑止力となります。

 

 

このようにカスハラ予防策として、企業のカスハラ自体の対策に限らず、従業員一人一人がカスハラを理解し普段から顧客対応への意識を変えていくこと、普段から気軽に相談ができる職場風土をつくることが大切です。

それにより従業員のメンタルヘルス問題や離職防止にもつなげることができます。特に相談による人事評価への影響など気にする従業員にとって、社外の相談窓口を使うのもよいでしょう。

 

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【カスタマーハラスメントについて学ぶシリーズコラム】

カスハラはなぜ起きる?~カスタマーハラスメントについて学ぶ①~

カスハラとその対策の歴史~カスタマーハラスメントについて学ぶ②~

企業のカスハラ対策~カスタマーハラスメントについて学ぶ③~

カスハラの予防策~カスタマーハラスメントについて学ぶ④~

カスハラから従業員を守る~アンガーマネジメントの活用~

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