コラム

社労士が解説する休職の判断ポイントと傷病手当金

前回のコラムでは、休職制度設計の概要と制度設計において留意するポイントについて学びました。

今回のコラムでは、休職の判断はどのようにして行われ、どういった点に配慮していくとよいか、そして、休職中の給与や手当の支給はどのように対応していくとよいのか、詳しく学んでいきましょう。

休職の判断の流れ

休職について判断するまでの全体的な流れとして、以下の通りとなります。

①従業員本人の情報収集

従業員本人が主治医より療養が必要な旨の報告を受けたら、提出された主治医の診断書を確認し、従業員についての情報収集を行いましょう。特にメンタルヘルス不調が原因であれば、ストレスチェックの情報や、労働状況(長時間労働や休日出勤などにより身体的・精神的負荷が大きくなっていないか)、日々の業務中の様子で「遅刻や欠勤が増えた」「仕事のミスが増えた」などの気になる変化がないかも確認します。

②産業医面談を行い、休職を命じる

主治医による診断書を参考にしつつ産業医面談を行い、最終的には産業医の意見を踏まえて会社が判断し、従業員に休職を命じる流れになります。

主治医は病気の治癒をする医師であるため、従業員が問題なく日常生活を送ることができるかの観点で判断を行いますが、産業医は企業内の状況を把握した上で、従業員が勤務できるかどうかの医学的判断を行うため、主治医と産業医の判断が異なる場合は、原則としては産業医の意見を尊重することとなります。

休職命令の際は、従業員本人に休職制度の説明(休職期間や給与など)を行います。なお、休職命令の発令を明確にするためには、休職命令書を作成して、本人に交付することが適切です。

給与と手当

万が一従業員が休職した場合、休職している従業員に対して企業が給与や賞与を支払う義務はありません。労働基準法第24条に「ノーワーク・ノーペイ」の原則が定められている通り、給与は労働の対価としているためです。

そのため、休職中は原則として給与や賞与は支払われないケースが多いですが、会社によっては規定により一部支給される場合もあります。また、賞与は給与と同様に発生しないケースが一般的ですが、査定期間中に勤務実績がある場合は、業務に対する評価に応じ賞与が支給されることがあります。

また、休職中は、給与の発生はないものの、会社との雇用関係が継続しているため、社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)や所得税の支払義務が生じるため、就業規則にのっとり手続きを行う必要があります。

なお、休職中に会社からの給与支給がない場合、状況によって傷病手当金を受け取ることが可能です。例えば、業務外の病気やケガの治療のため仕事につくことができない場合、生活保障としての支給を受けられます。近年増加しているメンタルヘルス不調に伴う休職では、傷病手当金の支給を受けるケースが一般的です。

傷病手当金について

傷病手当金とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガによる療養のための休職時に支給される手当金です。健康保険法に基づく全国健康保険協会(協会けんぽ)・健康保険組合に加入していれば、以下の申請条件にて傷病手当金を受給することができます。

<申請条件>

・業務外の病気やケガの療養中であり、働けない状態にあること

・連続する3日間を含み、4日以上労働できない状態にあること

・休んでいる期間中に会社から給与の支払いがないこと

<支給額>

傷病手当金の支給額は原則給与の約2/3なります。支給額は毎年7月に健康保険組合が決定する標準報酬月額をもとに、算出されます。

 傷病手当金の支給日額 = 支給開始日以前12ヵ月間の標準報酬月額の平均額÷30×2/3

 

<支給期間>

同一のケガや病気に関する支給開始日から通算して1年6か月に達する日までが対象となります。

支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間があっても、病気が再発した場合に繰り返して支給を受けることが可能となります。



今回は休職を判断するときにどのような流れと観点を基に判断を行うのか、そして休職期間中の賃金保障と傷病手当金について、学んできました。

次回は休職した社員が職場復帰するまでに行う企業側の対応と留意点について、5つのステップを追って解説していきます。

 

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