コラム

休職者への適切な対応とは③~職場復帰支援に関して配慮すべきこと~

これまで、休職開始から職場復帰までの5ステップについて解説しましたが、休職者の職場復帰支援にあたって、特に留意・配慮すべきことがいくつかあります。以下7点について見ていきましょう。

1.プライバシーの保護

職場復帰支援において扱われる休職者の健康情報等のほとんどが、休職者のプライバシーに関わるものであるため、事業者は適切に取り扱い、休職者のプライバシーの保護を図らなければなりません。

具体的には、休職者の健康情報等を主治医や家族から収集する際は目的と必要性を明らかにして、本人の承諾を得るとともに、これらの情報は休職者本人から提出を受けることが望ましいです。

また、提供を受けた休職者の健康情報等については、産業医等あらかじめ取り扱う人を明確にし、業務上必要であると判断される場合においてのみ提供される体制が望ましいです。ただし、同時に事業者は情報漏洩の防止対策を行う必要があります。休職者の健康情報等を取り扱う者に対して、その責務と必要性を認識させ、健康情報等の保護措置について必要な教育および研修を行う必要があります。

2.主治医との連携の仕方

主治医との連携に際しては、事前に当該休職者への説明と同意を得る必要があります。事業場内産業保健スタッフ等や管理監督者が職場復帰支援に関する事業場の規則や、休職者本人に求められる業務状況などについて十分な説明を行います。
また、休職者の職場復帰を支援する立場として必要な情報(職場復帰において配慮すべき内容)の交換を行うようにします。また、主治医に情報提供を依頼する場合や面談を行う場合、その費用負担についても事前に取り決めを行います。

3.職場復帰可否の判断基準

休職者の回復状態職場の受け入れ制度、体制を考慮した上で、個々のケースに応じて判断します。

<判断基準例>

・休職者が職場復帰への十分な意欲を示している

・勤務日への勤務時間での就労が継続してできる

・業務に必要な作業をこなせる

・作業による疲労が翌日までに十分回復している

・適切な睡眠リズムが整っている

・業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している 等

4.職場復帰までに検討したい制度

社内制度で、正式な職場復帰の前に、以下のような制度を設ける場合、より早期の職場復帰に結び付けることが期待できます。特に長期休業している休職者にとって、就業への不安の緩和や、実態に応じた復帰準備につながるため、より高い職場復帰率につなげることができます。

ただし、制度の導入に当たっては、この間の処遇や災害発生時の対応、人事労務管理上での位置づけなど、あらかじめ労使間で十分に検討し、一定のルールを定める必要があります。

特に、作業について使用者が指示を与えたり、作業内容が業務に当たる場合は労働基準法等が適用される場合があることや、賃金等について合理的な処遇を行う必要がある点に留意すべきです。

<制度例>

①模擬出勤:職場復帰前に通常の勤務時間と同じ時間帯で、デイケアなどで軽作業やグループミーティングを行う、図書館で過ごすなど、通常の通勤時間に他の場所で過ごす。

②通勤訓練:自宅から職場付近まで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後帰宅する。

③試し出勤:職場復帰の判断を目的として、本来の職場に試験的に一定期間継続して出勤する。

5.職場復帰後における就業上の配慮など

職場復帰については原則元の職場への復帰(休職が始まったときの職場への復帰:現職復帰)とすることが多いです。新しい配置転換や異動が必要な事例でも、新しい環境への適応にはある程度の時間と心理的負担を要するため、まずは元の職場で業務を軽減しながら経過観察し、その上で配置転換や異動を考慮した方がよいとされます。ただし、異動をきっかけとして発症した場合、適応できていた以前の職場などへの復帰を考慮した方がよいとされています。

また、うつ病などは回復過程においても状態に波があるため、短時間勤務や業務量の軽減など、職場復帰後の労働負荷を軽減し、段階的に元へ戻すなどの就業上の配慮が必要となります。

6.職場復帰する休職者への心理的支援

疾病による休職は、多くの休職者にとって自信を失わせる出来事であるため、休職開始から復職後に至るまで、適宜周囲からの適切な心理的支援が重要です。管理監督者は休職者の不安や焦りに耳を傾け、何らかの問題が発生した場合は早めに相談するよう休職者に伝え、事業場内産業保健スタッフ等と相談しながら支援を行いましょう。

なお、復職に当たっての休職者の不安やもやもやは時として事業場内スタッフには言いづらい場合もあります。そのような状況では、外部機関の心理的支援サービスの活用も有効です。

7.事業場外資源の活用

職場復帰支援における専門的な助言や指導を必要とする場合、それぞれの役割に応じた事業場外資源を活用するとよいです。公的な事業場外資源による職場復帰支援サービスとして、地域障害者職業センターが行う職場復帰支援(リワーク支援)事業があり、リワーク支援終了後のフォローアップジョブコーチによる支援事業などがあります。

その他、民間の医療機関やEAP(従業員支援プログラム)等が有料で復職支援プログラム等の名称で復職支援を行う場合もあります。

これらの機関が提供するサービスについては、内容や目標が多様なので、利用前に事業場で必要としているを十分に満たしているかについてあらかじめ検討を行うことが望ましいです。

以上の点に留意して、休職者の職場復帰に対し関係スタッフが連携をとりながら事前準備を行うことで、休職者が安心して職場復帰を行うことができ、従業員の離職や再休職を防ぐことにつながります。特に、病気による休職で働くことへの自身を失い、復職への不安や焦りを抱えている休職者や家族に対して心理的支援を行うことも大切です。

 

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