近年、メンタルヘルス不調で休職する労働者が増えつつあります。厚生労働省が2022年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」結果によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業 した労働者がいた事業所の割合は10.6%で、前回の2021年調査の8.8%からやや上昇し、メンタルヘルス 不調により退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%で、こちらも前回調査の4.1%から上昇しました。
では、そもそも「休職」とはどのような状態をさすのでしょうか。また、休職期間や賃金の保障はどうなるので しょうか。休職制度の設計のポイントを学びながら、詳しく見ていきましょう。
休職とは「労働者の都合で会社を一定期間休むこと」をさします。具体的には、会社が労働者都合の私傷 病等を配慮し、労働者の労働の義務を免除し、労働契約の終了を一定期間猶予する制度のことを言いま す。休職については、労働法規では定められていないため、休職制度設定は義務ではなく、期間や休職中の条件についても会社の判断にゆだねられます。
ただし、休職制度を定める場合、会社側は就業規則の相対的明示事項として明記する必要があります。なお、2024年に労務行政研究所が上場企業と上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上または従業員500人以上)5,200社対象に実施した「私傷病欠勤・休職制度に関する実態調査」によると、回答のあった296社のうち、休職の設定率は99.7%に上り、ほぼ全ての会社が設定しています。
参考:労務行政研究所「労政時報第4077号」
休職の種類
休職の種類としては以下のようなものがあります。なお、特に種類に決まりがあるわけではなく、私傷病休暇を中心に会社が自由に定めることが可能です。
① 私傷病休職:労働災害以外の病気やけがを理由とする休職。
※病気やケガの原因が職場環境によるものの場合、休職ではなく労災扱いになり、労災保険を利用することになります。
② 事故欠勤休職:傷病以外の自己都合による長期の休職。何らかの容疑で逮捕拘留された場合に発生する。
③ 自己都合休職:ボランティアや留学など従業員本人希望による休職。
④ 起訴休職:従業員が刑事事件で起訴されたときに適用される休職。
⑤ 組合専従休職:労働組合業務のために取得する休職。
⑥ 公職就任休職:企業の従業員が国会議員、地方議員、都道府県知事、市町村首長など公職につき、企業の業務と両立できないときに利用する休職。
休職期間の定め方
企業規模や業種によって異なる傾向があります。よって、同業他社事例を参考に、勤続年数、疾病の種類に応じて休職期間を定めるケースが一般的です。
休業・欠勤との違い
休職の他に、「休業」や「欠勤」などもありますが、以下のような違いがあります。
休業:一般的に法律で定められている会社都合による休業、または法律上の育児休業などを指します。 なお、休職制度自体は法律で定められていないため、休職制度を設けなくても違法とはなりません。
欠勤:所定労働日に従業員が自己都合で休むことを指します。突発的な事情で発生することが多いです。 対して、休職は労働契約を維持しながら一定期間労働義務を免除される制度で、規定に基づいて定められています。
今回は、休職制度設計の概要と制度設計におけるポイントについて解説しました。
次のコラムでは、実際に休職を判断するときにどのような流れと観点を基準に判断を行うのか、また、休職期間中の賃金の保障について解説していきます。
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