コラム

「小規模事業者持続化補助金」とは何か? 対象経費や活用事例のポイントを中小企業診断士がわかりやすく解説

以前ものづくり補助金では働き方改革や賃上げ、生産性の向上などの環境変化に対応しするための資金調達の手段として中小企業生産性革命事業の柱の一つとして位置づけられている制度と解説しました。 
ものづくり補助金と同様に中小企業生産性革命事業の柱の一つとして位置づけられている小規模事業者持続化補助金(以下、「持続化補助金」と呼びます)は、特に地域の雇用や産業を支える小規模事業者や個人事業主が自社の事業をより発展させ、持続的な経営に繋げるための支援策としての制度になります。
今回はこの持続化補助金について中小企業診断士が分かりやすく解説します。

持続化補助金とは

持続化補助金は、販路開拓や新サービス、新商品開発、業務効率化ができる補助金です。
新たな顧客層の獲得や業務改善・効率化を目指したいと考えているものの事業規模が発展途上であることや、創業して間もない等の状況から十分な資金を確保できておらず積極的な施策を打つことが難しい事業者に対する支援制度となっています。
対象事業者も以下の通り、個人または小規模の企業を対象とした制度となります。

<補助対象者>

小規模事業者持続化補助金、中小企業、中小企業診断士、助成金、補助金、補正予算、 <引用:小規模事業者持続化補助金 公募要領>

※常時使用する従業員数とは、会社役員、同居の親族従業員、休職中の従業員、日雇いの従業員などを除いた従業員数です。

持続化補助金をオススメする理由

日本企業の99%以上は中小企業であり、そのうち約85%を占める小規模企業は地域経済の重要な担い手であることやイノベーションの源泉となる存在のため、日本経済にとって欠かせません。
そのような小規模事業者を支えるための重要な取り組みであるのが持続化補助金ですが、特に注目される背景を3つのポイントから見ていきましょう。

① 販路開拓と生産性向上の促進
補助金は、小規模事業者が新しい販路を開拓したり、生産性を向上させたりする取り組みを支援します。これには、新市場への参入、新規顧客層の開拓、商品の改良や開発などが含まれ、事業の持続的な成長を促進します。

② 幅広い活用可能性
店舗改装費、広告費、専門家謝金など、販路開拓や生産性向上に関連する様々な経費が補助の対象となります。例えば、従来店舗販売のみだった飲食店がテイクアウトやデリバリーを始める場合も、販路開拓の一環として補助対象となる可能性があります。

③ 経営計画策定の機会
小規模事業者や個人事業主は経営計画を作成する機会が少ないため、補助金申請を通じて自社の経営計画を見直し、補助事業に取り組むだけでなく今まで気づかなかった自社の強みやビジョンを考えることに繋がります。これは、事業の継続や将来的な売上拡大に向けた重要な取り組みとなります。

令和6年度補正予算・令和7年度当初予算においては、「経営計画の策定に重点化し、枠の整理等、制度を簡素化する」予定であることから、さらに取り組みを加速させたいと考えられます。

どのような経費が対象になるのか

幅広い活用可能性があることは持続化補助金の特徴として挙げましたが、過去に実施された経費の例を見てみましょう。
イメージできるものから意外なものまで持続化補助金は様々な分野で活用されています。

小規模事業者持続化補助金、中小企業、中小企業診断士、助成金、補助金、補正予算、

<公募要領や活用事例等を基に作成>

持続化補助金の活用事例

持続化補助金は様々な経費に活用できることが分かりましたが、実際にどのように活用しているのか
販路開拓や新規開拓、生産性向上などの観点から見てみましょう。

① 販路開拓・新商品開発(庭園設営、ホームページ作成、新メニュー開発)
埼玉県の寿司店では、複数の対象経費を組み合わせ、店舗およびメニューの総合的な付加価値を向上させることで、新たな顧客層に訴求し、売上を増加させました。
今回、この店舗では補助金を活用して、店舗周辺に高級感のあるプチ庭園を作り、食事と共に視覚的にも楽しめる空間を創り、
庭園は店内の座敷からも見えるように配置し、集客力を高めるとともに、客単価を上げるために高付加価値メニューを開発しました。
さらに、ホームページの開設やメニュー表のリニューアル、ポイントカードの導入などにより広報力を強化し、新規顧客の獲得とリピート率向上に成功しました。
その結果、昨年比で個室予約が増加し、新メニュー開発により収益力が向上を達成。
補助金を契機に、経営計画の重要性を再認識し、地域の支援を受けて自社ブランドの確立に成功した事例です。

② 新サービスによる新規顧客開拓(新機械設備導入)
北海道のカフェでは、補助金を活用しバースデーケーキやクリスマスケーキにお客様の好きな写真や絵を、可食シートを使って印刷できるフードプリンターを購入。
新サービスを導入することで他店との差別化を図り、新規顧客を獲得することで業績向上を図りました。
「子供の写真を載せられる点」をPRしたところ、クリスマスシーズンにケーキの注文数が増加し売上増加を実現。
さらに、地元の街並みやご当地キャラクターを印刷したオリジナルクッキーを製造・販売することで地域経済にも貢献しています。

③ 生産性向上・業務効率化(省人化・効率化機械設備導入)
山形県の建築会社では、災害に対する関心の高まりから、耐震診断や住宅性能評価などにかかる業務が増加し、
それらのニーズにこたえるため生産性向上・業務効率化が求められていました。
そこで、省人化・効率化を達成できる新たな機械装置を導入し、作業時間を短縮することで
より多くの顧客対応を迅速に行うことができるようになりました。
生産性が向上したことで売上増にもつながり、従業員の作業環境改善のための投資もできるようになったことで
体制を改善し、よりよい顧客対応につなげる好循環を生み出すことに成功しました。

よくある落とし穴

持続化補助金は多くの事業様にとって魅力的な支援制度ですが、申請から実績報告まで複雑なプロセスを含んでいるため、様々な落とし穴が存在します。
せっかくの機会を最大限に活かすためには、よくある失敗例を事前に把握し、適切に対処することが重要です。
以下に、持続化補助金の申請や利用においてよく見られる落とし穴をいくつか紹介します。
これらの事例を参考に、自社の申請や事業計画をより慎重に検討することで、補助金の効果的な活用に繋げていきましょう。

<よくある落とし穴>

〇 交付決定日前に機械や業者の発注をしてしまい、補助対象外になってしまった
 (※展示会は交付決定日前でも申し込み可能)

〇 補助期間内に不備の修正が完了せず、補助金が減額されてしまった

〇 申請時の計画に記載していない内容の経費を請求してしまい、補助対象外となってしまった。

〇 ホームページ作成やチラシ配布が補助期間内に完了せず、補助金が減額されてしまった。

〇 補助計画を作りこんでおらず、予想外の出費が重なってしまった。

〇 補助計画の作成を専門家に丸投げしてしまい、計画内容を把握していなかったため実施内容にズレが生じてしまった。

従業員数0人から活用できる補助金で新たな挑戦を

小規模事業者持続化補助金は、事業の継続や成長を支援する強力なツールです。新たな設備投資や販路開拓、店舗改装など、さまざまな事業活動に対して経費の一部を補助してくれるため、新しいことに取り組みたいけど資金的に難しいと考える事業者様にとって効果的な投資が可能となります。申請にあたっては、しっかりとした計画と準備が求められますが、その分、実行に移す際のリスクを軽減し、事業の持続可能な発展を支える大きな助けとなります。小規模企業の力強い味方となるこの補助金を活用し、競争力を高めていきましょう。
社会保険労務士法人プラットワークスでは、多数の企業様に補助金や助成金の支援を行っていることや、自ら補助金や助成金の採択・通過した実績を踏まえ、皆さまの支援をいたします。
また、2025128日(火)に設備投資や事業拡大に向けた補助金を活用するための無料セミナーを実施しますので、ぜひご参加ください。

 

 

 

 

<サービス:各種補助金>
助成金・補助金・給付金申請支援


関連リンク:補助金・助成金申請は誰に頼めばいいの?
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