個人の幸せなキャリア実現のために会社にできること~組織で働く意義と偶然をチャンスに変える心理学~

終身雇用が崩壊し、少子高齢化で人材不足、労働市場は流動化が加速、求職者にとって魅力的な職場であることがより一層求められる時代です。そのような中で、「会社員=縛られる働き方」として過度に批判し、短期離職やフリーランスという働き方を選択する人も増えています。働き方が多様化し、副業解禁となったことも後押したことでフリーランス人口は増加し、2024年には約1,303万人にのぼりました(ランサーズ株式会社2024年「フリーランス実態調査」より)。

フリーランスを守る法整備も進み、より働きやすい環境整備が進む一方で、安易に組織から離れる働き方を選択することで、その後のキャリア形成が難しくなったりしてしまう事例も生じています
実際に、近年では組織から離れてフリーランスの道を選んだものの、会社員に戻るなどと、組織に属して働くキャリアを再選択する労働者も増えています。
また、現在は働き方改革も進み、組織で働く環境であっても働く時間や場所、多様な働き方を選択することが可能となりつつあり、従来の「会社員=縛られる働き方」のイメージは変わりつつあります。
今回のコラムでは組織で働くことの意義を心理学の視点も交えながら解説し、労働者に選ばれる職場づくりに必要なポイントについて解説していきます。

組織離れが起きている背景

では、なぜ組織で働くことを避け、フリーランスという働き方を選ぶ人が増えているのでしょうか。考えられる原因としては以下の要因があげられます。

①働き方の多様化
従来の日本では終身雇用が当たり前とされ、年功序列を前提に高い報酬と安定した生活を求めて多くの人が組織に属して働くことを求めました。しかし、近年では雇用環境が変化し、大企業でもリストラや早期退職を募るケースが増えました。それにより、一つの企業に属せず、自分のスキルを磨きたいと考える労働者が増えました。

②ワークライフバランスの重視
会社に雇用されることで勤務時間が制限される、残業等でプライベートの時間が制限されることに不満を感じ、ルールに縛られずにプライベートの時間も大切にしたいという人が増えたこともあげられます。

③スキルアップや自己実現のため
自分のスキルや経験をダイレクトに社会貢献につながる仕事をするため組織から離れる人もいます。組織で働いていると、自分の仕事が会社の利益にダイレクトに影響しないことが多く、貢献度が実感しにくいこともあります。そのため、自分の可能性を試すためフリーランスへ働き方を変える人もいます。

組織で働く意義とは

このように働く上での「自由」や「個のスキル」が叫ばれる現代において、あえて組織で働くことの意義とは何なのでしょう。そこには単なる働く場所や生活や安定のための手段ではなく、個人で働くことでは得られない大きな意義が存在します。

①リソース力と社会的信用力
予算や設備、顧客基盤などの個人ではアクセスすることが難しい膨大なリソースを活用することができます。組織に属していることで信用力が働くため、規模の大きなプロジェクトにかかわることが可能です。

②専門性
組織においては各部門の業務を分業で担うことが可能となります。個人であれば様々な分野の業務を一人で横断的に行う必要がありますが、組織では自分の得意な領域に集中して熱量を注ぐことができます。

③多様なメンバーとの協働による自己成長
組織では様々なバックグラウンドと異なる施行プロセスをもつメンバーとともに働きます。それにより、一人では得られないキャリアにおける多様な視点を得ることができるため、アイディアの発掘やイノベーションが起こります。

④チームで仕事をすることによる連帯感
チームで共通の目的に向かって業務を行うことは深い充足感を与えます。
たとえプロジェクトが失敗したとしても、リカバリーしあうことができるため、その連帯感は長期的なキャリア形成においてもメンタルケアとしての役割を果たします。

プランドハップンスタンス理論とは

このような不確実で変動しやすい世の中かつ働き方が多様化している現代において、注目されているのがプランドハップンスタンス理論です。

プランドハップンスタンス理論」は、計画された偶発性理論とも呼ばれる、アメリカの心理学者ジョン・D・クランボルツによって提唱されたキャリア理論です。キャリアの8割は偶然の出来事により決まるという前提にたち、その偶然を引き起こし、キャリアに生かしていく考え方です。
この理論では偶然の出来事を引き寄せるために核となる以下の5つの行動指針が重要とされています。

5つの行動指針>
1)好奇心(Curiosity):新しい情報や経験に積極的に関心をもつ姿勢
2)持続性(Persistence)困難や失敗があってもあきらめず取り組み続ける姿勢
3)柔軟性(Flexibility):状況が変わっても考え方や行動を調整できる姿勢
4)楽観性(Optimism):どんな出来事も前向きにとらえる姿勢
5)冒険心(Risk Taking):リスクを恐れず新しいことに挑戦する姿勢

プランドハップンスタンス理論、クルンボルツ 
このように、変化の激しい現代においては、本人が当初計画していたキャリアプランと異なる方向に動くことが多くあります。このように「偶然」が降ってくるのを待つのではなく、変化することを前提とし自ら行動し「質の良い偶然の出来事」を増やしていくことで満足いくキャリア形成につなげていけるとしています。

自律したキャリア形成のために企業にできること

現代の激動する労働市場においては将来の自身の働き方を予測することは難しいです。このような時代の中では変化の波を乗りこなし、偶発性を生かして誰もが自律的にキャリアを選択できることが重要です。つまり、「フリーランス」、「会社員」のどちらの働き方がよいかではなく、個人がそれぞれのキャリアの希望に応じて、納得する選択ができるという感覚を持てていることが大切と考えています
そのうえで、「組織で働くこと」の意義は「安定を実現するための場」ではなく、「一人では不可能な速度と規模で自分の希望を実現すること」が可能となることです。

そのためには、企業として、個人が自身のキャリアの希望に応じていきいきと自分らしく働くことができるような機会を設けられるよう、制度設計や職場環境の整備を行うことが重要です。
上述したプランドハップンスタンス理論の概念を踏まえると、より自律的なキャリア形成のためには、組織がキャリア上の様々な偶然の出会いが起きるような環境をつくることが求められます。具体的には以下の対応が例としてあげられます。

・社内異動制度や社内副業制度
異なる部署の業務を経験することで、新たな視点を得られ、多様なキャリアパスを提供することになり、従業員のモチベーションの向上や、新たなスキル獲得につなげられます。

・部門横断のプロジェクト参加機会の提供
特別なプロジェクトの参加により、異なる部門の人々とともに働く機会を得ることで、従業員が気づかなかった能力に気づき、思いもよらない成果をあげるといった発見があります。

・部門を超えたメンバー同士の交流機会の提供
個人のキャリア形成には新たな人との出会いも大きくかかわります。普段交流する従業員同士ではなく、他部署の従業員とも積極的に交流する場を提供することが大切です。このような予期せぬ出会いを設定することで、従業員の今後のキャリア形成に大きな影響をおよぼすことがあります。

・心理的安全性の高い職場環境づくり
プランドハップンスタンス理論にあるように、突然訪れた偶然の出来事をチャンスととらえる柔軟でオープンマインドな視点を普段から養うことも重要です。そのためには日ごろより従業員が意見を言いやすい心理的安全性の高い職場環境を整備しておくことが大切です。(心理的安全性については過去コラム参照)

・役割の拡大と深化
人事評価制度においても、従業員の価値貢献や成長段階を適切に捉えることが重要です。その方法として、「役割の拡大と深化」が重要です。複数の役割を担いキャリアの幅をもたせること(拡大)と同じ業務でも安定したクオリティでこなせるようになること(深化)は、長期目線で従業員にとってのキャリア上の価値をつくります。労働力の流動性が高くなっている現代において、役割の拡大と深化の機会を得た従業員は職場を変えたとしても安定して組織に貢献することができます。
このような複数の役割を担う機会と深化するチャンスを会社が提供することで、従業員は自身のキャリアにおける新たな可能性に気づき、成長実感を得ることができます。このようにして、組織力を高めながらも個人が成長実感を得られるキャリアを築いていくことができます。(役割貢献制度については過去コラム参照)

以上のことから、個人のキャリア希望に応じた挑戦ができる機会や環境を提供できる企業は、従業員の成長実感やパフォーマンスの向上につながるため、それにより新たなイノベーションの創出や企業の業績向上につなげることができます。
このような企業における制度設計や職場環境整備においては労務に精通した専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。

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