生きがい-Ikigai-とは?~幸福度を高める働き方~

「国際幸福デー」の320日、英オックスフォード大ウェルビーイング研究センターなどは「World Happiness Report 2026(世界幸福度報告書)」を公表しました。その結果、日本は国別の幸福度ランキングで147か国中61位となり、主要7か国では最下位という結果となりました。また、日本財団の「18歳意識調査」(2024)では国際的にも日本の若者は自己肯定感が低い傾向にある結果となったことから、今後の日本において主観的な幸福感を高めていくことは重要課題であることが伺えます。

さらに、近年は従業員の人生全体の幸福を追求する「ウェルビーイング経営」への関心の高まりから、従業員の「働きやすさ」だけでなく「働きがい」を実現することを目的とした職場づくりに注目が集まっています。また、AIの台頭により、「人間が行う仕事の存在意義」について考える機会がより一層増えてきています。
なお、「働く人の幸福」を考える上での要素のひとつとして「生きがい」があげられます。そして、「生きがい」は世界的にも「Ikigai」という名称でその考え方が注目されています。ただし、「Ikigai」は日本語の「生きがい」を語源としているものの、文化的な背景も影響しやや意味が異なって使用されています。今回のコラムでは「生きがい」・「Ikigai」の概要とその違いを解説しつつ、今後の日本の労働環境において、「生きがい」・「Ikigai」の視点を生かした企業対応についてお伝えしていきます。

「生きがい」とは?

「生きがい」とは、辞書的には「人生を鼓舞し、生きる張り合いや喜び、人生に意味を感じる理由」を指す概念です。日本から古くから使われている「生きがい」は非常に主観的で精神的なものをさしています。平安時代に「生き」(生きる)と「甲斐」(価値)の合成語として生まれたとされています。平安時代には「甲斐」が貴重な貝殻通貨を連想させる説もあり、人生の「価値あるもの」を表す意味が加わりました。
具体的には、家族やペットとの時間など「日常の小さな幸せの積み重ね」、「いま・ここ」にある現在の充実感、「個人的な納得感のあるもの」を指しており、必ずしも社会的な成功や報酬などの外的な視点での充実は必要とされません
このように、古来より調和・共同体を重視した日本の歴史的背景により、「日々の小さな幸せの喜び」を「生きがい」と定義しています。
しかし、近年はSNSの発達等により、他者との比較が容易にでき、膨大な量の情報が入ってくる環境において、そのような主観的な「生きがい」を感じられる環境が減っているとされています。働くことのモチベーションとして、「生きがい」が用いられることもありますが、多くは高齢者の働く意義としてあげられています。 

「Ikigai」とは?

「Ikigai」も本来は日本の「生きがい」を語源として派生した概念です。アメリカの研究者・作家であるダン・ベットナーにより行われた長寿地域の研究の一環にて、沖縄で聞いた「生きがい(Ikigai)」という言葉をもとに長寿の共通因子をみつけたことから始まります。海外で使用されている「Ikigai」は以下4つの要素から構成されているとしており、それらがすべて重なった時に「Ikigai」となるとしています

【Ikigaiの4要素】

1 .what you love(好きなこと)

2 .what you are good at(得意なこと)

3 .what the world needs(世界が必要とすること)

4 .what you can be paid for(稼げること)

 

このように「Ikigai」は、西洋の「自己実現」を重視し、「論理的」、「目的志向」である文化の視点から、「何のために生きるか」という目的を重視する傾向にあります。日本の伝統的な生きがいとは異なり、「稼ぐ」という視点や自己啓発的で動機付けの道具として使用されていることが多くあります。

特徴

日本の「生きがい」

世界の「Ikigai」

主な焦点

日常のプロセス、心の持ちよう

社会的役割、キャリアの最適解

お金の有無

関係ない(趣味や家族との時間も)

重要(「稼げること」が含まれる)

スケール

小さな喜び~大きな目標まで様々

人生を貫く中心的な使命

ニュアンス

じわじわと感じる「充足感」

追求して見つけ出す「正解」

Ikigaiの危うさと日本の生きがいへの回帰

Ikigai」が4要素で構成される概念として世界的に定着したことで、キャリア形成の指針となった反面、労働市場においてはいくつかの「弊害」を生んでいるという指摘があります。
例えば、過度に「ikigai」にこだわると社会的意義や報酬などの外発的な基準を重視しがちになり、人間の存在価値と労働を過剰に結びつける自己啓発であると捉えられてしまうことや。必ず好きなことを仕事にしなければいけない等完璧な目的や壮大な社会的意義を求めることで、自己犠牲の美徳化や不満を我慢してしまうといったことがかえって空虚感やバーンアウトを生み出すおそれがあります。このように「過度なIkigaiへの執着」により「今ここにある生活の幸福」=「本来の生きがい」に気づけない危険性があります。
そのため、これからの労働市場においては、目的や意味などの正解を求め「Ikigai」のみに固執するのではなく、日本古来の主観的で内面的な「生きがい」の視点を取り入れていくことが幸福なキャリア実現につながると考えています
例えば、好きなことは必ず仕事にしなければならないのではなく、趣味やボランティアなどで実現すればよい、稼げることとやりがいを必ず一つの仕事で満たそうとするのではなく、仕事とプライベートで役割を分散させる、必要とされる対象を「社会」ではなく「身近な一人」でよいといった視点での考え方です。
また、近年はAI時代の到来により、人間の行う仕事がAIに代替されるとしています。これにより、人間の「存在する意味」へのゆらぎが生じており、世界的にも人々が働く上での「生きがい」についてより考える機会が増えていくと考えています。
このような視点での考え方をすることで、Ikigaiによる弊害のリスクを減らすことができ、人生の幸福度を高めることにつなげられます。また、「生きがい」では主観的・個人的な内面の満足感を表すため、Ikigaiのような「社会貢献」といった外的にわかる貢献である必要はなく、家族等の身近な他者などを喜ばせるなど、身近な貢献でも自分の行動に意味を感じられ、幸福度を高めていけるとしています。

「生きがい」・「Ikigai」の視点で企業に求められること

上記のことから、従業員一人一人の幸せなキャリア実現が重要となるウェルビーイング経営が注目されている近年の労働市場において、「生きがい」、「Ikigai」どちらの視点も日本の企業にとって活用していくことがより一層求められます。これらの視点をもとに、プラットワークスでは主に以下の対応が有効であると考えています。

①多様な生きがいの選択肢を提示できる組織づくり
…多様な働き方をする従業員が増えている現代においては、従業員のキャリアの多様性を認める職場風土づくりが重要です。例えば、副業を認める制度設計、ボランティア活動、部門を超えたプロジェクト参加の機会を提供するなど、主要業務のみに生きがいを強要するのではなく、本人の希望に応じて組織内外で生きがいを実現する選択肢を提示できるような組織づくり、組織風土の形成がよいでしょう。
例)副業制度、FA制度、ボランティア活動、社内プロジェクト参加の機会提供等

②意味を見出しやすく納得感のある評価制度設計
Ikigaiを重視するあまり、報酬と貢献のバランスを誤った評価制度の設計を行うと働きがいを感じにくくなってしまうことがあります。従業員が自分の作業が具体的にどのように役に立っているか、現在の自分の貢献度がどの程度であるか明確にわかる制度設計が重要です。そこで、成果に対して与えられた評価に対して客観的に具体的なフィードバックを行うこと、評価制度の設計自体を従業員の価値貢献や成長段階を適切に捉えられるようにすることが大切です。この評価制度設計の視点として「役割の拡大と深化」が重要です。複数の役割を担いキャリアの幅をもたせること(拡大)と同じ業務でも安定したクオリティでこなせるようになること(深化)で、従業員は自身のキャリアにおける可能性に気づき、生きがいを感じることができます。(役割貢献制度については過去コラム参照)

このように高まるウェルビーイング経営の関心やAI時代の台頭からも、これからの労働市場において企業がいかに労働者自身の幸せなキャリア実現のための環境を提供できるかという視点がより重要視されていくと予想されます。そして、その環境を整えていくことのできる企業が企業の価値向上につながっていくといえます。なぜなら、幸せなキャリアを実現できている従業員は一人一人が生産性、創造性の高い仕事を行うことができるため、そこから生み出す価値はより高いものとなり、最終的に企業利益につながるからです。そして、従業員自身が生きがいは与えられるのではなく、自らの手で見つけていくものとして、主体的に幸せなキャリア設計をできるように支援していく視点も重要です

プラットワークスは、「やりがい」や「自己成長」といった働くことの精神的価値が人生の豊かさに大きく影響すると考えており、その働くことによる楽しさを、疾病等の個別事情を理由としてあきらめることなくすべての人が感じられるような組織づくりを仕事としております。このような考えのもと、事業主の事業特性や組織風土に合った運用しやすい制度構築の支援を行っておりますので、ぜひご活用ください。

また、弊法人では、「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlaTTalksを運営しております。従業員にとって、外部の相談窓口として活用いただくことができます。
PlaTTalksではカウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

関連サービス

企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalks

「社会保険労務士」と「臨床心理士(公認心理師)」の協同で支援を行う、日本唯一の企業向けオンラインカウンセリングサービスPlattalksを運営しております。カウンセラーによる従業員のメンタルヘルスケアを行うだけでなく、相談者の希望に応じて社会保険労務士との連携、相談対応も行っており、働きやすい体制構築に活用することができます。

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制度構築

弊法人は、就業規則や評価制度の整備、業務改善支援など制度構築の支援を行っております。貴社の事業特性を組織風土を踏まえた運用しやすい制度をご提案することにより、貴社の社員の力を引き出し、事業のさらなる発展に寄与します。

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