「なぜ私の給与はこの額なのか」に答える ― 役割貢献制度で実現する、自律型組織の報酬設計・移行・実装ポイント

「評価は悪くないはずなのに、給与はほとんど変わらない」
「何を頑張れば、どれくらい給与が上がるのかが分からない」

このような声は企業規模を問わずよく耳にします。人事制度自体は整えているものの、社員から見ると「評価」と「給与」のつながりが見えにくく、結果として納得感を持ちにくい状態になっているケースは少なくありません。
どれだけ管理職が評価面談を丁寧に行っても、部下が目標に向かって頑張って取り組んでも「次に何をすればいいのか」が腹落ちしないことがあります。
こうした状況は、評価者や被評価者の姿勢の問題というよりも、制度の構造そのものが分かりにくいことに原因がある場合が多く見られます。今回は貢献度マトリクスを土台とする役割貢献制度について、実装に向けた具体的な考え方を解説していきます。

役割貢献制度とは

まずは役割貢献制度についておさらいをしていきましょう。
役割貢献制度は評価を「上司の印象」や「相対比較」ではなく、担っている役割とその遂行の再現性で捉え直す考え方です。ポイントは成果そのものの大小だけでなく、「同じ水準の仕事を安定して再現できるか」「難易度の高い役割を継続的に担えているか」に軸足を置く点にあります。

この制度では、役割を「深さ」と「広さ」で整理します。たとえば、横方向には新たな業務領域の追加(業務の拡大)、縦方向には難易度や判断の高度化(業務の深化)を置き、どの領域をどの水準で担えるかを明確にします。結果として、社員側は「次に何ができるようになればよいか」が見え、会社側は「なぜこの処遇なのか」を説明しやすくなります。

また、役割貢献制度では、従来の「評価」に加えて「承認」という考え方が重要になります。達成基準を満たした役割を会社が認め、処遇に反映するという整理です。ここが曖昧なままだと、従来と同じく主観に戻ってしまうため、役割定義と達成基準(再現性の条件)を先に固めることが制度の土台になります。

役割貢献制度、貢献度マトリクス、新卒採用、中途採用、調整給、人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ、1on1

役割貢献制度の内容については過去のコラムも参考にしてください。
トータルリワード時代の新しい人事制度 ~役割の「拡大 × 深化」を実現する役割貢献制度~

貢献度マトリクスで考える設計の基本構造

役割貢献制度を実装する際の重要な核となるのが、貢献度マトリクスによる設計です。下記図は、その考え方をシンプルに可視化したイメージになります。

マトリクスの縦軸は「業務の深化」を表しています。Lv1から上方向に向かって、判断の難易度や責任の重さ、再現性の要求水準が高まっていく構造です。単に経験年数が長いという意味ではなく、「そのレベルの仕事を安定して再現できるかどうか」が承認の判断ポイントになります。一時的にできた、たまたま成果が出た、といった状態は外部環境や能力以外の要因に左右されることがあります。そのため、「何をもって承認をするか」をしっかり定義したうえで、その定義を満たしているか判断する必要があります。
一方、横軸は「業務の拡大」を示しています。業務A、B、C…といった形で、担当できる業務領域が広がるほど、横にマスが増えていきます。ここで重要なのは、「全てのマスを埋める必要はない」という点です。『この領域なら誰にも負けない』という垂直方向の深化も、『複数の現場を繋げる』という水平方向の拡大も、等しくマトリクス上で『価値』として承認されます。また、役割等級制度では、空いているマスがあることを潜在的な貢献可能性と捉え、その分成長の伸び代があることを意味します。この多様性の受容こそが、組織のレジリエンス(しなやかな強さ)を生むのです。

このマトリクスの特徴として、下記図の例では行ごとに報酬額を設定していますが、各マスごとに報酬額を紐づけし、その合計額が受け取れる給与という設計が可能です。この設計方法の大きなメリットとして、1つ1つのマスがどの程度の貢献度=価値をもつのかを事前に精査のうえ設計し可視化することで、経営側からするとどの業務がどのくらいの価値があるのか、担ってほしい役割は何かを社員に伝えるメッセージになりますし、社員からすると会社が向かうべき方向性を理解しやすくなるとともに、自分のキャリアについて考えやすくなるという、双方にとってメリットがあることが挙げられます。

役割貢献制度、貢献度マトリクス、新卒採用、中途採用、調整給、人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ、1on1

多くの社員は特定の領域に強みを持ち、マスの配置には偏りが出ます。これは問題ではなく、むしろ組織としての人材構成を可視化する材料になります。どの業務が不足しているのか、どの領域に余剰に人員がいるのかなどを経営側が把握しやすくなります。
このように、貢献度マトリクスは単なる評価表ではなく、「役割」「再現性」「金額」を一体で設計するための土台になります。

採用時は「判断期間」を組み込むことで柔軟に対応できる

役割貢献制度を設計する際、重要な論点の1つとして新卒・中途採用者の扱いが挙げられます。役割と再現性を基準にする以上、「採用時点ではできると判断したが、実際には再現できなかった」というケースは避けられません。この問題に対し、制度として無理なく対応できるのが判断期間を組み込んだ運用です。

添付のマトリクス図では、採用時点で一定の業務遂行が可能と判断した場合、一旦そのマスを承認する設計を想定しています。ただし、これは永久的な確定ではありません。一定の判断期間(例えば3か月、6か月、1年など)を経て、実際に業務を安定して再現できているかを確認し、再現性が認められない場合にはそのマスの承認を外すことも可能とします。
中途採用の場合は、特に経験者であれば過去の職務経験をもとに比較的短い判断期間でもよいでしょう。前職と業務内容が近く、短い判断期間の中でも再現性が確認できれば正式承認へ、難しければマスの設計を調整するという整理が可能です。一方で、新卒採用の場合はポテンシャル採用であるため、判断期間をやや長めに設定し、段階的にマスの再現性を正式承認していくことが現実的です。

役割貢献制度、貢献度マトリクス、新卒採用、中途採用、調整給、人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ、1on1

重要なのは、「できなかったから下げる」という発想ではなく、「再現性が確認できた役割を承認する」という考え方です。この整理により、期待値として先に支払う期間と、役割として確定させる期間を切り分けることができます。結果として、採用後のミスマッチや過剰な期待値調整を制度上で吸収しやすくなります。
このように判断期間を制度に組み込むことで、新卒・中途いずれの場合でも、現場運用と制度設計のズレを最小限に抑えることができます。役割貢献制度は硬直的な制度ではなく、前提条件を明示した上で柔軟に運用できる点に実装上の強みがあります。

移行期の調整給と「役職=役割」への整理

役割貢献制度に限らず、既存の制度から新しい制度に移行する際には、多かれ少なかれ既存給与とのズレが生じることを避けるのは難しいと思います。

分かりやすくするために少し極端な話をすると、例えば現状の給与が40万円の人が、役割貢献制度のマトリクスで積み上げると20万円分しか説明できないというケースが考えられます。この20万円の差額を調整給で埋める方法はありますが、単に時限的な意味合いだと社員のモチベーションも下がりますし、基本は「なるべく使わない」設計が望ましいため、採用時の考え方と同様に移行初期のみ一定の調整を許容しつつ、「この給与をもらっているならこの役割を期待したいよね」という役割の定義と格付けをまずは優先して設定するという進め方になります。

このように、高給者は一旦「その給与に見合う役割を担っている前提」で格付けし、判断期間で再現性を確認したうえで、再現性がないと判断した場合は承認を外すことで役割に基づき見直す方が説明しやすいですし、納得感も高まります。あわせて、役職は階級ではなく役割として仕事の定義に寄せ、指揮命令系統は当面別建てで維持することで、給与の納得感と運用の現実性を両立しやすくなります。

役割貢献制度、貢献度マトリクス、新卒採用、中途採用、調整給、人事制度、評価制度、等級制度、管理職、労働基準法、トータルリワード、役割、職能資格制度、役割等級制度、職務等級制度、基本給、手当、やりがい、ワークライフバランス、賞与、退職金、貢献、評価、アセスメント、管理職、戦略、リーダーシップ、モチベーション、エンゲージメント、ハラスメント、パワハラ、逆パワハラ、1on1

「貢献度」が見えると納得感が高まる

繰り返しになりますが、評価と給与のズレは面談を増やせば解決する話ではなく、そもそも「どう決まっているのか」が見えにくい制度構造が原因になっていることが多いです。そこで役割貢献制度を貢献度マトリクスで具体化し、「役割・再現性・金額」をセットで設計するイメージを今回は具体的に整理しました。
各マスに金額を置くことで、給与が自分がどの程度のスキルを持ち、再現性のある形で実務に活かしているかを「貢献度」として説明でき、「次に何を取ればいいか」が分かりやすくなります。さらに新卒・中途採用は判断期間を組み込むことで、採用時の見込みと実態のズレにも柔軟に対応できますし、人事制度を既に導入している会社様も移行を想定した対応が可能になります。仕組みを見える化して、納得感のある処遇につなげていきましょう。

 

組織に合った人事制度を実際に機能させるためには、制度設計だけでなく、その運用を支える体制づくりが不可欠です。期待される役割や評価基準、処遇の考え方を明確にし、それらを日常のマネジメントに落とし込む仕組みを整えることで、制度は初めて企業の成長を支える実効性のある仕組みになります。
プラットワークスでは、事業戦略や組織課題に応じた人事制度や株式報酬制度の設計に加え、運用が定着するためのプロセス整備や評価者研修など、実務に密着した支援を提供しています。
制度の導入や見直しをご検討の際は、ぜひお声がけください。

制度構築 - プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所

また、すぐに契約というほどではないが「専門家に相談したい」といった、スポット的なアドバイザリーも弊法人では受けております。企業様のご相談のほか、個人の方からの相談についても、元労働基準監督官である弊法人の代表が相談内容を聞き、ご状況を踏まえつつ個別のアドバイスを行います。

スポット相談プラットワークス|社会保険労務士法人プラットワークス|東京都 千代田区 大阪市|社労士法人 社労士事務所

関連サービス

人事アドバイザリー

日常的な労務管理に関するご相談から、例外的な労務問題にいたるまで、幅広い労務相談に対応しております。判断に迷った時はぜひ弊法人にご相談ください。

関連サービス

制度構築

弊法人は、就業規則や評価制度の整備、業務改善支援など制度構築の支援を行っております。貴社の事業特性を組織風土を踏まえた運用しやすい制度をご提案することにより、貴社の社員の力を引き出し、事業のさらなる発展に寄与します。

働く人が「時間を忘れる組織」をどうつくるか~チクセントミハイのフロー理論から考える~ 
働く人が「時間を忘れる組織」をどうつくるか~チクセントミハイのフロー理論から考える~ 
【2027年1月施行】フリーランスの「死傷病報告」義務化。「知らなかった」では済まされない発注企業の新たな管理責任
【2027年1月施行】フリーランスの「死傷病報告」義務化。「知らなかった」では済まされない発注企業の新たな管理責任

働く自由をすべての人に

子どもの頃、お手伝いをしながら、理由もなくワクワクしたあの気持ち。
そんな「働くことの楽しさ」を感じられる組織をつくるために私たちは常に問いかけます。
「本当に必要なルールとは何か?」
「心は自由で、のびのびと働けるだろうか?」
私たちは自分の「夢」を信じ、社会で挑戦する人々をサポートし続けます。
すべては、世界の可能性を広げるために。