コラム

【様式例あり】5分で読める賃金のデジタル払い対応のポイント

令和5年4月1日より、労働基準法施行規則が改正され、企業が賃金をデジタルマネーで支払う、いわゆる「賃金のデジタル払い」が解禁されます。 今回は、経営者や人事担当者の「ニュースで見たが何から始めれば良いかわからない…」といった悩みについて、実務に精通した社会保険労務士がお答えします。

この記事を読むだけで、デジタル払いを導入できるように、「賃金のデジタル払い」のメリットや注意点、具体的な対応方法などを分かりやすく解説していきます。

また、制度の導入に必要な労使協定及び従業員の同意書の様式例のWordファイルも掲載しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

賃金のデジタル払いとは?

賃金を「〇〇Pay」といったデジタルマネーで支払うことが可能になる制度です。 ただし、デジタル払いが認められるのは、厚生労働大臣が指定した「資金移動業者」の口座に限られます。資金移動業者が破綻した場合でも、保証機関から弁済されるので、安心な制度と言えます。

また、デジタルマネーの受け取り口座の上限額は100万円までとなっています。

企業のメリット

デジタル払いにより、企業は賃金の振込業務から解放されることになり、振込手数料を削減することができます。また、少額払いや日払いなど柔軟な給与支払いが可能となります。

従業員のメリット

従業員は、現金を引き出す手間を省くことができるなどのメリットがあります。

実施の際の注意点

デジタル払いを導入するには、労使協定の締結、労働者の個別の同意という二段階のステップを踏む必要があります。したがって、同意のない労働者に対して、デジタル払いを強制することは認められません。 また、現金化できないポイントや仮想通貨での賃金支払いは認められません。

さらに、不正アクセスの防止や個人情報の保護などに向けて、必要な対策を取る必要があります。

よくある質問

以下では、よくある質問について社会保険労務士がご回答いたします。

Q いつからデジタル払いの制度を導入できるの?

A 企業が実際に導入できるのは令和5年の後半頃です。

令和5年4月1日から、資金移動業者が厚生労働大臣に指定の申請をすることができるようになります。その後、厚生労働省で審査され、指定されると、事業主は各事業上で労使協定を締結した上で、労働者の同意を得て実施できるようになります。 労使協定の締結の際には、賃金を受け取る指定資金移動業者も定める必要があるため、資金移動業者の指定までに数カ月要することを考えると、企業が実際に制度を導入できるのは、令和5年の後半頃になるかと思われます。

Q 賃金の一部を銀行口座へ、残りをデジタルマネーで支払っても良いの?

A 可能です。

賃金の一部をデジタルマネーで、残りを他の方法で支払うことも可能です。

Q まだデジタル払いの準備ができていないため、現時点では見送りたいと考えているが、労働者からデジタル払いを求められた場合、これに応じなければならないのですか。

A 事業主はデジタル払いに応じる労働基準法上の義務はありません。

労働基準法24条は、賃金を通貨で支払うことを原則としています(通貨払いの原則)。そのため、銀行振込などの方法は、この例外に当たります。デジタル払いも同様に通貨払いの原則の例外に当たるため、労働者からの求めに応じて事業主がデジタル払いに応じる義務はありません。

Q 労使協定の形式、内容は?労使協定を締結していないと無効になる?

A 労使協定を締結していなくても直ちに無効とはなりません。また、形式は特に定められていません。

労使協定を締結せずにデジタル払いを導入した場合、制度自体が直ちに無効になるわけではありません。ただし、労働基準監督署の指導の対象となる可能性もあるので、導入の際には労使協定を締結するようにしましょう。

また、労使協定の形式については、特に定められていません。

労使協定で定める内容については、以下の四つの事項を記載する必要があります。

  1. 口座振込み等の対象となる労働者の範囲
  2. 口座振込み等の対象となる賃金の範囲及びその金額
  3. 取扱金融機関、取扱証券会社及び取扱指定資金移動業者の範囲
  4. 口座振込み等の実施開始時期

プラットワークスでは、デジタル払い導入に係る労使協定の様式例を掲載しておりますので、ぜひご活用ください。

様式例

賃金デジタル払い協定書

賃金のデジタル払いの同意書

 

Q 口座上限の100万円を超えた場合はどうなるの?

A 自動的に労働者の口座に出金されます。

口座の上限額である100万円を超えた場合、あらかじめ労働者が指定した銀行口座等に自動で出金されます。出金の際の手数料は労働者負担となる場合もあるので、注意が必要です。ただし、賃金の一回の支払いが100万円を超えるような場合には、全額、一時的に受け入れられます。受け入れられた賃金は、当日中に資金移動業者によって移動させられます。

 

 

プラットワークスでは、給与体系や賃金制度の構築などを得意としています。デジタル払いについても対応いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

                 
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