もくじ
【2026年8月追記】フレックスタイム制度との違いと最新記事案内
※本記事は2024年4月施行の裁量労働制改正に向けて書かれた記事です。
労働時間を集計する「フレックスタイム制」と異なり、裁量労働制は「実労働時間と成果が必ずしも比例しない職種」において、あらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
だからこそ法律上、適用業務や手続(本人同意・健康確保など)が厳格に定められています。
2024年4月の法改正施行から一定期間が経過し、多くの企業で新制度下での運用が定着・見直しの時期を迎えています。
特に現場では「同意撤回手続きの実務対応」や「具体的指示の禁止と成果管理の境界線」について労働基準監督署からの指導や労使間の疑問が生じやすいポイントとなっています。
法条文の構造から見た専門型・企画型の根本的な違いや、運用の深掘りについては以下の最新記事をご覧ください。
→専門業務型・企画業務型裁量労働制の違いを労働基準法の条文構造から読み解く
【2024年4月改正】裁量労働制の見直しポイント解説
労働基準法施行規則および指針等が改正されたことから、令和6年4月1日より、裁量労働制の見直しが行われます。
裁量労働制の導入、継続には新たな手続きが必要となります。

※厚生労働省HPリーフレットより
裁量労働制は、労働時間と成果が必ずしも比例しない職種において適用されます。
労働者が自らの裁量で働く時間を決められるため、活用ができれば生産性の向上につながります。
ただし、裁量労働制を適用できる業務は厚生労働省令で定められており、大きく〈専門業務型〉と〈企画業務型〉の2つに分けられます。それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.専門業務型裁量労働制の改正点(M&Aアドバイザー追加・本人同意の必須化)
専門業務型裁量労働制とは
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務として、厚生労働省令および厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で指定し、実際にその業務に就かせた場合に、あらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
改正内容
①対象業務の追加(全19業務から20業務へ)
2024年4月1日以降、新たに1業務が追加され、対象業務は全20業務となりました。
追加業務: 銀行または証券会社における、顧客の合併・買収に関する調査・分析・考案・助言業務(いわゆるM&Aアドバイザー業務)
② 労使協定で定めるべき事項の追加(本人同意・記録保存の義務化)
専門業務型裁量労働制の導入・更新にあたり締結する労使協定において、新たに以下の事項を定めることが必須となりました。
・労働者本人の同意の取得(制度適用にあたり個別の同意を得ること)
・不利益取扱いの禁止(同意しなかったことを理由とする解雇や不利益な取扱いを禁止すること)
・同意の撤回手続き(一度行った同意を撤回するための手続きを定めること)
・同意および撤回に関する記録の保存(各労働者の同意・撤回の状況を記録し、保存すること)
2.企画業務型裁量労働制の改正点(同意撤回・労使委員会の運営強化)
企画業務型裁量労働制とは
①事業の運営に関する事項についての
②企画、立案、調査及び分析の業務であって、
③業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、
④業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務等について
労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
なお、上記4つの要件すべてに該当する業務を行う事業場に限り、適用することができます。
主な改正内容
企画業務型裁量労働制の導入・適用時に新たに以下の対応が必要となります。
・同意撤回の手続きの策定と記録保存(同意および撤回の記録を保存すること)
・労使委員会への「賃金・評価制度」の説明義務化(対象労働者に適用される評価・賃金制度をあらかじめ労使委員会へ開示・説明すること)
・制度の実施状況の把握と運用改善(制度が適正に運用されているかを労使委員会で把握すること)
3.健康確保措置・勤務間インターバルの導入など留意事項
以上の事項のほか、今般の改正においてさまざまな留意事項を追加しています。例として、以下のものがあります。
上記の改正点に加え、制度の適正運用と対象労働者の健康を守るため、「健康・福祉確保措置」の選択肢が追加・見直しされています。
労使協定や労使委員会決議において、以下の措置などを具体的に定め、確実に講じる必要があります。
① 事業場の対象労働者全員を対象とする措置(例)
・勤務間インターバルの確保(終業から翌日の始業までに一定の休日・休息時間を設ける)
・深夜労働の回数制限(1か月あたりの深夜労働の回数に上限を設定する)
・労働時間の上限措置(一定時間以上の労働を禁止する上限を設定する)
② 個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置(例)
・医師による面接指導(一定の労働時間を超えた対象者に対し、医師の面接指導を実施する)
・代償休日・特別休日の付与(長時間労働が認められた場合に休日を付与する)
裁量労働制であっても、企業には客観的な方法による労働時間の把握義務および安全配慮義務が免除されるわけではありません。
形式的な要件にとどまらず、実際の稼働状況に応じた実効性のある健康確保措置が求められます。
4.裁量労働制における「割増賃金(残業代)」の考え方
裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず「労使で定めた時間(みなし労働時間)働いた」とみなす制度です。
しかし、「どれだけ働いても残業代を支払わなくてよい制度」ではありません。
割増賃金の発生ルールは以下の通りです。
① みなし労働時間が「所定労働時間(例:7.5時間)」の場合
・法定労働時間(1日8時間)の範囲内であるため、基本的の時間外割増賃金は発生しません。
② みなし労働時間を「1日8時間超(例:9時間)」に設定する場合
・法定労働時間(8時間)を超える「1時間分」について、実際の稼働時間に関わらず時間外労働としての割増賃金(残業手当)の支払いが必須となります。
③【重要】深夜労働・休日労働の取扱い
・裁量労働制であっても、「深夜労働(22時〜翌5時)」や「法定休日労働」の適用は除外されません。
・深夜時間帯に勤務した場合や休日に出勤した場合は、実際の勤務時間に応じた割増賃金を別途支払う必要があるため、企業は適切な労働時間の把握が不可欠です。
まとめ:裁量労働制の適正運用と社労士へのご相談
裁量労働制の導入にあたり、労使協定の制定や労使委員会の設置が必要となります。
プラットワークスでは、こうした手続きのサポートを行っております。
裁量労働制に類似する労働時間制度も複数ありますので、貴社の事業運営に最適な制度を提案いたします。
導入を検討されている際、お困りの際は、お気軽にご相談ください。




