シリーズ2024年問題 元労働基準監督官がわかりやすく解説していきます
掲載:2023年3月2日
今般の働き方改革の一環として、労働基準法が改正され、
時間外労働の上限が法律に規定(2019年4月施行)されましたが、
以下の事業・業務については、上限規制の適用が5年間猶予されてきました。
来る2024年4月1日以降の取り扱いが変わります。
建設事業 |
2024年4月1日から、上限規制を適用します。
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自動車運転の業務 |
2024年4月1日から、上限規制を適用します。
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医師 |
2024年4月1日から、上限規制を適用します。
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図表の参考:働き方改革関連法に関する ハンドブック(厚生労働省)
なぜ(建設事業、自動車運転者の業務・医師は)規制が猶予されていたのか
2019年から5年間の準備期間が設定された理由は3つあります
理由①
長時間労働の常態化
3業種とも人手不足により、長時間労働が常態・習慣化。
各業界の課題も多くありました。
理由②
多くの関係者への配慮
わたしたちの生活基盤を支える産業への影響範囲の大きさに配慮されました。
例えば、建設事業の場合、重層下請構造の下、約46.8万社の元請・下請企業間 で取引が発生。
生活に欠かせない住居やインフラの整備などがあるため、影響が出ることが懸念されました。
自動車運転者の業務においても、生活に欠かせないな輸送や移動の手段として、
日本経済を陰で支える重要な役割を果たしています。
医師の場合、実質的な制限がどのような影響を与えるのかが明確になっていないため、
コロナ感染症対応のような 突発的な状況下で労働規制が適用されると、
生命を守ることが難しくなる危険性もあります。
理由③
労働力確保・維持
社会生活に必要不可欠な産業における労働力維持のため5年の猶予期間を設け、
労働力不足の中での労働環境、条件の見直しなどを行い、急激な変化に対応できるよう段階的な実施となりました。
36協定の上限規制とは
法律で残業時間の上限を定め、これ を超える残業はできなくなります
☞【例外】ここがpoint
特別条項付き36協定に上限が設定され
残業時間に上限が発生します
【原則】時間外労働が月45時間、年360時間以内
【例外】特別条項付き36協定がある場合でも以下が上限
● 時間外労働が年720時間以内
● 時間外・休日労働が複数月平均80時間以内
● 時間外・休日労働が1か月100時間未満
Q.上の表では【例外】として特別条項付きの36協定がある場合は、
時間外労働はの上限は720時間以内と記載がありますが、
自動車運転者の業務は年960時間、医師は年最大1860時間まで許されるのですか?
A.その通りです。自動車運転者の業務と医師について特別条項を締結する場合、
【例外】の例外として、 自動車運転者の業務は年960時間以内、
医師は年最大1860時間(休日労働含む)未満までの時間外労働が許されます。
なお建設事業に関しては、(2024年4月の改正後は)【例外】の例外は認められておらず、
一般の他業種と同様に時間外労働はの上限は720時間以内となります。
2024年4月1日以降の上限規制の取り扱いを守らない場合に罰則はある?
労働基準法第32条(労働時間)違反が見られた場合、労働基準監督署による是正勧告が行なわれます
ただし、悪質な場合は6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
そのような事例は報道されて、企業イメージを大きく壊すケースもありますので注意しましょう。
Q.違反した場合、どのようにして社名が公表されますか?
A.①労働基準関係法令違反の疑いで送検した事案、
②労働都道府県労働局長が企業の経営トップに対し
指導した事案について、企業・事業場の名称、
事案概要などが厚生労働省のホームページ上に公表されます。
時間外労働の上限規制への対応でご不安点がございましたら、ぜひ一度ご相談ください。
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