助成額最大800万円!事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(東京都)について中小企業診断士が分かりやすく解説

物価高が続き、エネルギー価格や原材料費の上昇、人手不足に伴う賃上げ圧力などで、「売上はそこまで伸びないのにコストだけ増える」という状況は珍しくない時代になってきました。このようなときには、全く異なる分野へ新しい事業を模索することも1つの方法ではありますが、既存事業を強くして利益が残る体質にしていくことを考えることも非常に重要です。
東京都ではそのような中小企業を支えるために「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(賃上げ重点コース)」という企業の体質改善を目的とするような助成金制度を設けています。設備投資も対象になりますが、単に古い機械を買い替えるだけではなく、「なぜ今それが必要で、どう強くなるのか」を説明できることがポイントになります。今回はこの助成金制度の内容を見ていきましょう。

~中小企業・小規模企業向け~事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(賃上げ重点コース)

事業環境変化に対応した経営基盤強化事業の概要

この助成制度は、ポストコロナでの需要変化や原材料・人件費の高騰といった「環境の変化」に対応しながら、既存事業を「深化」または「発展」させる取組を支援する制度となっています。イメージとしては、「いまの事業を続けるための守り」ではなく、「いまの事業を強くするための攻め」に寄った助成金です。
深化と発展については、公募要領で下記のように示されていますので、自社で取り組む方向性とマッチしているか確認してみてください。

既存事業の「深化」:経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業自体の質を高めるための取組
           ● 高性能な機器、設備の導入等による競争力強化の取組
           ● 既存の商品やサービス等の品質向上の取組
           ● 高効率機器、省エネ機器の導入等による生産性の向上の取組
既存事業の「発展」:経営基盤の強化に向け、既に営んでいる事業を基に、新たな事業展開を図る取組
           ● 新たな商品、サービスの開発
           ● 商品、サービスの新たな提供方法の導入
           ● その他、既存事業で得た知見等に基づく新たな取組

助成対象経費は一般的な補助金や助成金と同じように幅広く、設備投資系でいえば「機械装置・工具器具」「設備等導入」「システム等導入」が対象となっており、原材料費、外注・委託、産業財産権、認証取得、販売促進なども対象に入ってくるため、設備だけでなく事業をまわしていくために必要な体制を整えるのに適した制度と言えます。
ただ一方で、老朽化した設備の単純更新などの維持目的の投資は対象になりにくいので、「投資で何が変わるのか」「競争力や生産性がどう上がるのか」を必ずセットで示す必要がありますので注意しておきましょう。

金額面は、助成限度額が最大800万円で、助成率は原則2/3以内です。さらに、賃上げ計画を作って達成すると助成率が中小企業で3/4以内小規模事業者で4/5以内まで上がる仕組みになっています。助成率が高く、投資規模がそれなりに大きいものを考えるときでも活用が可能ですので、積極的に活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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ものづくり補助金との違い

設備投資が絡む助成金・補助金という意味では、国の「ものづくり補助金」と比較されがちです。ただ、両者は似ているようで狙いがかなり異なりますので、ぜひここは押さえておきましょう。
ものづくり補助金は「新しい製品・サービスを生み出す」「今までにない提供の仕方にチャレンジする」といった革新性が強く求められる制度です。設備投資も「それで新しい価値を作れるか」が評価や審査の中心になります。
一方で、経営基盤強化事業は、「いまの事業をどう強くするか」が出発点です。もちろん改善の中身は必要ですが、ものづくり補助金ほど新規性の強い開発ストーリーを要求される場面は相対的に少なく、現場改善や基盤強化の投資が組み立てやすい傾向があります。

言い換えると、

  • 経営基盤強化事業:攻めの中でも「既存強化・収益体質づくり寄り」
  • ものづくり補助金:攻めの中でも「新規性、革新・開発寄り」

という感じで、特に既存強化か新規革新かという違いを押さえておくと整理しやすいです。

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スケジュールと申請時の注意点

現在スケジュールも公開されているので押さえておきましょう。申請受付期間は1ヶ月未満のため、今からできる準備は進めておくことをオススメします。
申請はjGrantsによる電子申請のみGビズIDプライムの事前取得が必須となりますので、助成金を申請予定でまだ取得していない事業者様は早めに手続きを進めましょう。

・申請受付期間:令和8年2月24日〜3月13日
・面接審査期間:5月上旬〜下旬予定
・交付決定  :6月下旬頃予定
・助成対象期間:交付決定後から最大1年間

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ここで、実務的に大事な注意点を2つだけ挙げておきます。

1つ目は、交付決定前に発注・契約すると経費が対象外になりやすい点です。焦って先に動くと予定していた対象経費が助成対象にならないケースがあるので必ず手順を守ることが大切です。
2つ目は、原則として精算払い(後払い)という点です。つまり、いったん自社で支払って後から助成金が入る形になります。投資額が大きいと資金繰りへの影響が出るので、金融機関等から融資を受けている場合は、関係先と調整も含めて早めに段取りをしておくのが安全です。

賃上げ達成で助成率が上がる一方で、達成できない場合は特例が適用されない可能性がある点も計画を立てる段階で織り込んでおくと安心ではありますが、確実に達成できるように事前にしっかりと計画を練りこんでおくことが重要です。

自社課題と投資内容のつながりを確認する

事業環境変化に対応した経営基盤強化事業のポイントは、設備投資をベースとして既存事業の稼ぐ力を上げて経営基盤を強くすることです。単なる更新投資ではなく「投資後にどう変わるか」をしっかり周りに説明できる会社ほど相性が良い制度だと思います。
アンゾフの成長マトリクスを参考にすると、市場浸透戦略をベースにしつつ、既存事業の延長線上での新製品開発や新市場開拓を視野にいれた成長戦略を検討する、といった方向性を考えることもできます。

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ものづくり補助金のように新規性の高い開発ストーリーで勝負するのが得意な会社もあれば、足元の収益構造を強くする投資のほうが効果が出る会社もあります。補助率・上限額だけで飛びつくのではなく、利益率や生産性、人手不足対応、単価改善などの自社の課題と投資内容がつながっているかを確認したうえで、活用を検討していくのがおすすめです。

 

補助金・助成金は制度の種類も要件も幅広く、同じ会社でも「今の課題」によって最適な選び方や進め方は変わります。大切なのは、申請して終わりにするのではなく、賃上げや人材育成、設備投資といった取組を、自社の経営方針や現場の実態に合う形で回していくことです。目的(何を改善したいのか)、対象(誰・どの業務に効かせるのか)、計画(いつまでに何を実行するのか)を整理し、実行と効果確認までつなげられると、制度活用は「一時的な資金」ではなく「次の成長への投資」になります。
プラットワークスでは、助成金・補助金の活用に向けた情報整理から、要件に沿った計画づくり、実行後を見据えた運用面の整備まで、実務に即した支援を行っています。活用を検討される際は、お気軽にご相談ください。

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